51「第三話 獣使い」私たちの知らぬところで津久井純平は考える。
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プロットが決まらず手探りで書き始めました。
――時は少しだけ遡る。
千木良きい、三ケ木ゆう、高見澤ヨウコ、寸沢嵐ひばりの四名が大月香奈恵を探すために研修センターを後にした頃である。
空には月がのぼり明るい夜だった。
■
「――なんだって? 寸沢嵐先生たちが出ていったってっ!?」
級友からその話を聞いて驚いたのは男子獣医科クラスの津久井純平だった。
純平は寸沢嵐先生から大月香奈恵が行方不明だと聞いていた。
そのことから彼女らは香奈恵を探しに出たのだと検討をつけた。
方角も森の方だと聞いている。
「……なんとかしたいけど……」
兄の勇平の幽霊の件以来、純平も生忌物に対して思う所があった。
簡単に言えば兄の復讐だ。
だが勇平の相棒は馬。戦う力は皆無だ。
そのことから忸怩たる気持ちをずっと持ち続けていたのだった。
純平は厩舎に向かった。
厩舎には数頭の馬がいる。そしてそこには純平の相棒である愛馬のハルナもいる。
ハルナは牝馬なのだが力が強く足も速い。
これをなんとか活かして彼女たちと共に戦うことはできなくても、せめてアシストすることはできないだろうかと考えていた。
「馬はとにかく足が速い、そして力が強い。……それをなにかに活かせて役に立てないかな?」
純平は寸沢嵐先生たちが向かった森の道を思い返していた。
そこへは昼間、ハルナとともに歩いた道で、平らな石畳の道だったことを憶えていた。
……そして厩舎の中を見回した。
「……これだっ!」
純平は厩舎の隅に置かれていたあるモノに目を留めるのであった。
■
「あ、あれっ、そうなのかなっ!」
突然にきいが前方を指さして叫んだ。
見ると暗がりの中から鳥居と石の祠が見えてきたのだった。
「あれが目指す場所なのかしら?」
ゆうがそう言う。
ふらふらと不確かな足取りで歩む大月香奈恵が脇目も振らずに目指しているのは、どうやらその祠のようだった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。