49「第三話 獣使い」私はヨーロッパオオヤマネコの名前を知る。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
千木良きい、三ケ木ゆう、高見澤ヨウコ、そして寸沢嵐ひばりの四人は、それぞれの相棒を伴って研修センターを後にした。
準備は一応整っている。
動きやすい服。飲料水と非常食、簡易医薬品、そして懐中電灯代わりとしてスマホ、予備のバッテリーなどである。
大月香奈恵が向かっていると言う書き置きがあった祠までの地図は、スマホで全員が撮影済みでそれを見ながらの移動だ。
研修センターから森はすぐだ。
そもそも森に囲まれた土地にあるので周りはすべて深い森林だった。
道は割りと明るかった。
今夜は月が出ていた。そして祠へと続く道は登山道と呼べる石畳のような道で、頭上のすべてを樹木の木々が覆っているわけではなくて、月光が照らしているからだった。
「寸沢嵐先生。そう言えば先生の相棒はなんと言う名前なのでしょうか?」
先頭を歩く寸沢嵐先生に三ケ木ゆうが質問した。
そう言えば誰も名前を知らなかったからだ。
すると先生は立ち止まり振り返った。
その顔はいたずらっぽい笑顔だった。
「キイだ」
「ほえっ? わ、私のことですかっ?」
驚いたのはもちろん千木良きいだ。
だが先生は顔の前で片手を振る。
「違う違う。千木良のことじゃない。このヨーロッパオオヤマネコの名前もキイと言うんだ」
「偶然ね。こんなことってあるんだ」
高見澤ヨウコが感心したかのように呟く。
「お揃いだねっ。よろしくね、キイっ」
きいはキイに近づき、ヨーロッパオオヤマネコの喉を擦った。
するとヤマネコのキイは気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らすのであった。
■
それからもしばらく歩いた。
途中に水を飲んで一息つく軽い休憩を挟んだ。
「なかなか追いつかんな……」
スマホの地図を見ながら寸沢嵐先生が言う。
もうだいぶ距離を歩いたので、祠までの距離はあとわずかなのだが、まだ大月香奈恵の後ろ姿が見えないのだ。
「……知らない間に見落としたり追い越しちゃったりしちゃったとかはっ?」
「さすがにそれはないだろう」
寸沢嵐先生は苦笑する。
いくら月明かりとスマホのライト頼りとは言え、歩いている人間を見落とすなどあり得ない。
そんなときだった。
「あ、あれ! 人じゃないかしら?」
闇に目を凝らしていたゆうが前方のカーブの先を指差す。
するとそこには白い服を着た女性がふらふらと歩いて行くのが見えたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。