45「第三話 獣使い」私たちは視界を確保する。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「ああっ、ヤマトだよっ! ヨウコちゃんが来てくれてるんだっ!」
千木良きいがそうと埃で悪い視界の中で何人かの人影が見えた。その中にヨウコらしき背が高く長い髪の女性のシルエットが確認できたのだ。
そのときだった。
バキバキッと言う太い木材が折れる音が響いた。
見るとそれは同時多発的に起きた事態で、暴れウシたちが柵の棒を突き破ってしまった破壊音だったのだ。
「大変っ。ウシたちが通路に出てしまうわ!」
そう叫んだ三ケ木ゆうはシナノの背から飛び降りた。
そしてきいもムサシの背から降りる。
だがすぐにシナノ、ムサシを向かわせることはしない。
まだ状況がわからない。
このモウモウと立ち込める埃の中で、どこにどれだけ人がいて、ウシたちがいるのか不明だからだ。
「ヨウコちゃんっ! ムサシとシナノを連れてきたよっ!」
きいは手をメガホンにして大声で叫んだ。
「……っ! シナノって……っ!?」
駆け足できいとゆうの元にヨウコがやって来る。
「……確かにシナノだわ。……でも、これって……?」
ヨウコは信じられないものを見た顔になる。
それも仕方ない。
ヨウコは二年前の生忌物との戦いで、シナノが死んだのを見ていたのだ。
「香奈恵さんの説明だと二代目らしいわ」
「先代の子なんだってっ!」
ゆうときいの説明にヨウコは納得の表情を見せる。
「と、言うことは三ケ木さんが、このシナノを今は従えているってことね?」
「ええ。相棒になってもらったばかりだけど、いくつかの命令はちゃんと聞いてくれているから、なんとかなりそうだわ」
「だとしてたら、心強いわね」
「でもっ。埃でなんにも見えないよ。ウシさんを捕まえるにしても、見えないとどうしようもないよっ」
きいが現状でいちばんの難題を口にする。
それは正解だ。
ウシをなだめ誘導しようとして集まった生徒たちの位置も数もわからず、暴れるウシたちの位置も数もわからないからだ。
するとヨウコが高くて広い天井を見上げる。
「それならなんとかなるわ。……待ってて」
そう告げたヨウコは指笛をピーッと鳴らした。
すると天井近くをゆっくりと旋回していたヤマトがその鋭い爪で明り取り用の天窓に取り付いたのだ。
そして爪先と嘴を器用に使って回転させて鍵を開けるクレセント錠を回したのだ。
更に足を使ってガラリをガラス戸を開ける。
すると外からの風が室内に入って来た。
窓の数はひとつではない。おそらく二十近くはある。
そしてヨウコは次々とヤマトに指示を出し、天井付近の天窓のすべてを開けることに成功した。
「すごい、風がどんどん入ってくるよっ」
きいが叫ぶのも無理はない。
開けられた多数の窓から外の風がどんどん牛舎内へと吹き込んできて、モウモウと立ち込めていた埃が吹き飛び始めたのだった。
「これなら見えるわ」
ゆうが手応えを感じた声を出す。
今、牛舎内の視界は確保された。
暴れて柵の外に出ているウシと避難し始めている生徒たちの姿がすっかり視認できる状態となったのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




