43「第三話 獣使い」私たちはシナノを連れ出す。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
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「試してみるわ」
そう宣言したゆうは手に撥を持って太鼓を叩くために身構えたのであった。
――テケテン、テケテン、テケテン――
軽快なリズムが太鼓から発せられた。
「いないのかな……?」
きいは太鼓のリズムに耳を傾けながら檻の奥の扉に注目しているのだが、扉が開く気配を感じられない。
「慌てないの。もっと音を大きくするわよ。鉄の扉の向こうにいるのなら、よく聴こえていないのかもしれないわ」
――テケテン、テケテン、テケテン――
ゆうは撥で叩く音を強くした。
すると変化があった。
重い鉄製の扉がギギギとゆっくり開いたのだ。
「ああ、シナノっ」
シナノだった。
シナノは他の動物たちのように騒ぐこともなく、奥の部屋でじっとしていたのだ。
そして扉が四分の一ほど開かれて顔を半分だけ、きいとゆうに見せたのであった。
だがそこで動かない。
雰囲気から察するに、それ以上の行動を躊躇している様子なのだ。
「……まるで天岩戸ね」
「あまの……いわと……? なにそれっ?」
「天岩戸って言うのは天照大神が……。ごめん、きい。後で説明するわ」
今は緊急事態なのだ。だからゆうに余裕はない。
天鈿女命の踊りさながらにゆうは真剣に太鼓を叩く。
するとシナノはやがて扉をすべて開けてその巨体を見せたのであった。
今は四足で歩行しているのだが、それでもムサシと同じくらい大きい。
そのシナノはノッシノッシと歩みを進め鉄格子の前、つまりきいとゆうの眼前に来たのだった。
「ムサシとは大丈夫みたいだねっ?」
きいはシナノとムサシを見比べた。
鉄格子を挟んで巨体のシナノとムサシは対峙しているのだが、互いに警戒する様子はない。
しかもムサシが鼻先を鉄格子に付けるとその鼻先をシナノは右拳で軽く触れたのであった。
「なんか意気投合って感じね」
太鼓を叩きながらゆうはそう言う。
そして太鼓は今は軽いリズムに変わっていた。シナノが近くまで来たので大きく叩く必要がなくなったからだ。
「いい、シナノ? 私は今から命令するわ。鍵を壊して檻の外へ出て!」
「ええっ。鍵、壊しちゃうのっ? 後から怒られるよっ?」
「合鍵のありかがわからないのだから仕方ないわ。それにすでにシナノを使役しようとしている時点で叱られる対象よ。鍵を壊すくらいそれこそ今更よ」
ゆうは判断に迷いがない。
シナノに鍵を壊させて合流し、牛舎へと向かうにはそれが最短な手法なのだ。
第一、鍵を持っている大月香奈恵は行方不明なのだから借りることはできない。
――ダアーンッ――
ゆうは太鼓を撥で強く叩いた。
「さあ、シナノ。鍵を壊してっ!!」
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私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




