42「第三話 獣使い」私たちはシナノに会いに行く。
【毎日昼の12時に更新します】
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「私、一旦部屋に戻るわ」
突然のゆうの提案に、きいはびっくりする。
「え、どうしてっ? 急ぎの放送だったんだよっ。すぐに行かないのっ?」
「だからこそよ。……きっと以前の学校のときのようにウシたちが暴れたりしたら人の手じゃどうしようもないわ。
ムサシなら大丈夫だけど、戦力はもっとあった方がいいもの。
――だから、ちょっとだけ待ってて」
そう宣言するとゆうは一目散に部屋へと走っていった。
残されたきいは、理由がわからないのできょとんとしている。
「……ムサシ。仕方ないから待っていようね?」
きいがそう話しかけると、ムサシはそれがわかったようで伏せの姿勢で床に身体を落としていた。
■
「お待たせ」
息を切らせてゆうが戻ったのは五分後くらいだった。
それなりの距離があるはずなので、ほとんど全力疾走して戻ってきた様子だ。
「あ、太鼓だねっ?」
きいはゆうが腰に装着している太鼓を見てそう言った。
それはガルーダの太鼓だった。
「万が一のことがあるでしょ? だから強力なこの太鼓を用意したかったのよ」
「万が一? ……おサルさんいったっけっ?」
きいは研修センターに収容されている動物たちを思い返し、ゆうに尋ねていた。
それはここにはニホンザルはいなかったと思ったからだ。
「いるわよ。この奥に……」
そう言ったゆうは立入禁止指定されているこの通路の奥を指さした。
「ああっ! シナノだねっ?」
「そう。……もっとも私に従ってくれるかわからないけどね」
きいとゆう、そしてムサシは立入禁止の立て札の横をすり抜けて奥へと進んだ。
「でも、ムサシとシナノを会わせて大丈夫かなっ? ワンコとおサルさんって仲悪いって話だよねっ?」
「そうね。いわゆる犬猿の仲ってヤツね。
……でも、香奈恵さんの話ではムサシは先代のシナノといっしょに生忌物と戦ったって言ってたわ」
「あ、そうだよねっ。だったら大丈夫かもっ」
「可能性の話なんだけどね。……でもやってみる価値はあるわ」
そうこう話ながら通路を二人と一頭が進んでいくと、やがてシナノがいた獣舎へと到着したのであった。
「――いないね?」
昼間最初に来たときのようにシナノは檻の中に姿がなかった。
だが檻の奥へと通じる扉があるので、また奥の部屋にいる可能性がある。
「鍵、かかってるわね。困ったわ」
檻の扉を見ていたゆうが困惑顔になっている。
見ると開閉式の扉には大型の南京錠があって施錠されていたのだ。
「どうしようっ?」
きいも困り顔でゆうに尋ねる。
「試してみるわ」
そう宣言したゆうは手に撥を持って太鼓を叩くために身構えたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




