38「第三話 獣使い」私の親友はシナノに認められる。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「あなたたちもどう?」
香奈恵は檻の扉を開けて、中へと二人を手招いた。
もちろん、きいもゆうも喜んで檻の中へと入る。
「シナノは、行儀が良いのよ」
そう言った香奈恵はバスケットの中身の餌をテーブルの上に配置してある皿にキレイに並べ始めたのであった。
まるで人間用の食事同様である。
ウォーン……。
シナノと呼ばれた巨大オランウータンは椅子に小さく座ったまま、小さく鳴いた。
「いいわよ。食べて」
香奈恵がそう言うと、待っていたとばかりにシナノは食事を始めた。
だが通常のオランウータンが手づかみで食べるのと異なって、皿の傍らに置かれたフォークを手にしたのだった。
「ホントにお行儀がいいねっ?」
きいが心底感心しきった様子で絶賛する。
すると、ゆうも感激を隠さず驚きの声を上げる。
「すごいわね。
オランウータンがちゃんとフォークを使って食べるなんて初めてみたわ」
そんなふたりの驚愕の視線を受けながら、シナノはフォークに刺した果物を次々と口に運ぶ。
「頭がいいんだねっ」
「ええ。とても高い知性を感じるわ。
類人猿と言ってもここまで人と近い作法ができるなんて驚きね」
きいもゆうも笑顔でシナノの食事を見守っている。
そのときだった。
「ゆで卵はいつも手渡しで与えているんだけど、二人の内どちらか手で与えてみる?」
食事をするシナノとそれを見ているきいとゆうを見ていた香奈恵がそう提案してきたのであった。
「ゆうがしなよっ。おサルさんなんだからっ」
きいはそう言って役得をゆうに譲った。
これは的確な提案だった。
施設入り口にいたブル・マスティフのように相手がイヌの場合はきいは率先して立候補したであろうが、シナノはサルなのだ。
これはサルを相棒とし、猿回しに憧れているゆうに任せるのが最適だろうと思ったのだ。
「いいのかしら?」
「もちろんだよっ」
きいとゆうの間で相談が終わったことで、香奈恵は殻をむいてあるゆで卵を三ケ木ゆうに手渡した。
すでに果実や野菜を食べ終わったシナノをそれをじっと見つめていた。
「シナノね? じゃあゆで卵を召し上がれ」
そう言ったゆうは手のひらの上にゆで卵を乗せたまま、ゆっくりとシナノに近づいた。
すると椅子に座ったままのシナノは視線をまっすぐにゆうに向けた。
しばらくの間、ゆうとシナノが無言で向き合った。
だがやがてシナノはその長い腕をすっと伸ばし、ゆうの手のひらの上に乗せてあるゆで卵をゆっくりと掴み、そして口に運んだのであった。
「……驚いたわ。三ケ木さん、あなたよっぽどサルに好かれる体質なのね?」
香奈恵が突然にそう告げたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




