37「第三話 獣使い」私たちはシナノに出会う。
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すると扉の向こうから金色の大きな生物が二足歩行で入ってくるのが見えた。
大きい。
身の丈三メートル近くある。
「大きいねっ」
「……そ、そうね」
千木良きいは単純に大きさに喜んでいるようだが、三ケ木ゆうは檻越しとは言えあまりもの巨体に恐れをなした様子だ。
当然だ。人より巨大な二足歩行生物なんて見たことがあるはずがない。
「おサルさんだねっ。なんだろっ」
「……オ、オランウータンね。
驚いたわ。こんなに大きなオランウータンがいるなんて知らなかったわ……」
ゆうは心底驚いた。
だが同時に思い出してもいた。
曽祖父の又一からガルーダの太鼓を譲られたときに聞いた話で、金色のオランウータンにジャングルの中で助けられたと言う話であった。
そのとき疲労と空腹で意識朦朧としていた又一は金色のオランウータンを人間と間違えたと言っていたが、背筋を伸ばして歩行している眼の前のオランウータンを見ていたら、それも当然だろうなと理解していた。
そのオランウータンだが、きいとゆうに気づいているようだが、特に反応はせずに椅子に座り眼の前のテーブルに乗せられた皿をじっと見つめていた。
そのときだった。
「あら? あなたたちは……。前に会ったわね?」
白衣を着た女性が通路奥の扉から出てきた。
「大月さん?」
ゆうがそう尋ねるとニコリと笑顔を女性は見せた。
それは大月香奈恵だった。
湘南農業高校の先輩で、以前は農業高校で教師もしていた女性だ。
そしてきいとゆうが廃部となった生忌物倶楽部の部室で見かけた女性でもあり、担任の寸沢嵐先生の先輩にも当たる人物だ。
「確か千木良さんと三ケ木さんだったわね?
どうしたのかしら?」
「ごめんなさいっ。変な鳴き声が気になってここまで来ちゃいましたっ」
きいは直角九十度まで腰を折って謝った。
「すみません。入っては行けない場所かとも思ったのですが気になってしまったもので……」
ゆうも頭を下げる。
「あら、別にいいわよ。あなたたちは部外者って訳じゃないし。
ちょうどいいからシナノの食事を見ていく?」
そう言った香奈恵は手にしていたバスケットを見せる。
すると中にはバナナやリンゴなどの果実やレタスなどの野菜、殻をむいたゆで卵などが入っていた。
「シナノ?」
ゆうが疑問を口にする。
すると香奈恵が檻の中の金色を指さした。
「この子のことよ。……シナノって名前は二代目なんだけどね」
するとシナノと呼ばれたオランウータンは片手を上げてウォーンと鳴いた。
それは鶏舎やウサギ舎を掃除していたときに聞こえてきた鳴き声と同じだった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




