35「第三話 獣使い」私たちは獣医の現実を理解する。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
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翌日のことである。
研修センターの朝は早い。
動物相手のことなので日が昇るとすぐに作業が始まるのである。
そんな中、湘南農業高校生徒各員にはそれぞれ役割が割り当てられていた。
それは部屋単位で決められていて、千木良きいと三ケ木ゆうは小型の家畜舎の掃除と餌やりが担当となっていた。
具体的に言うとニワトリとウサギの世話である。
ニワトリは卵や食肉からして家畜と断言できるが、ウサギはペットではないかとの考えもあるが、ウサギ料理と言うもののしっかり存在しているので品種改良種などを含め繁殖と改良がこの農業施設では行われているのである。
世の中かわいいからだけでは通じない現実があるのであった。
かと言っても千木良きいと三ケ木ゆうは別にニワトリやウサギを捕獲して捌いて調理する訳ではなく、小学校の飼育施設同様に清掃と餌やり、そして動物の管理を行う訳である。
「このウサギ、身体大きいね。イヌみたいっ」
きいがそう言ったウサギは確かに大きかった。
見た目は普通のウサギ同様だが、身体は柴犬くらいある。おそらく十キロちかく体重もあるだろう。
「こっちは胴が長いわね。ダックスフントみたい」
ゆうがそういうウサギは確かにダックスフントやコーギーみたいに胴が長く足が短かった。
どちらもきいやゆうには知らされていないが、食肉用に改良された新品種だった。
しかし、きいはともかくゆうはそれをなんとなく察していた。
人間は生きるために動物性タンパク質は必要である。
その選択肢のひとつとしてウサギも含まれることはあり得るのだ。
世には昆虫食を推奨する動きもあるが、動物肉の方が好まれるのも事実だ。
獣医と言うのは一般的にはイヌやネコなどのペットのお医者さんと言うイメージが今でこそ強いが、元々は食料としての家畜の医者というのが本業だ。
ウシやブタ、ニワトリ、ヒツジなどを安定して食卓に提供するために存在するのが本来の役目なのだ。
時代によっては軍隊が使う軍馬の管理なども重要な役目であった。
それは今でも同様で獣医と言う業界の仕事の半分はペットのためじゃなく、家畜の安定供給のための従事者というのが正しいのだ。
人間は食べなくては生きていけない。
これは綺麗事じゃない。現実なのだ。
でもそれはそれ。
役目を全うしていただくために、元気で過ごしてもらうようにする。
それも獣医のタマゴとしては重要な仕事であるのだ。
「この子たちが、できるだけ清潔で安心できるようにキレイに住めるようがんばりましょう」
ゆうはそうきいに提案した。
「そうだねっ。ぃろんな理由はあるけど生きている間はできるだけ幸せにしてあげられるようにするのは大事だよねっ」
ゆうはそのきいの発言に驚いた。
世間知らずだと思っていたきいが現実を知っている上で、その発言をしたのを理解したからであった。
そのときだった。
――ウォーン。
聞き慣れぬ動物の鳴き声が聞こえた。
見ると鶏舎とウサギ舎の奥にガラス扉があり、そこの扉が少し開いていてそこから鳴き声が聞こえてきたのがわかったのだ。
「なんだろうっ? なにがいるんだろうねっ?」
清掃の手を止めて、きいがそうゆうに尋ねてきた。
「大型の動物のようね。声の感じからしてライオンとかの肉食獣って訳じゃなさそうね?」
「ちょっと見てみようよっ」
きいは清掃道具を脇に置くとゆうを手招きしたのであった。
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私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




