31「第三話 獣使い」私は広い部屋に感動する。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
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やがて外の騒ぎが伝わったのか、研修センターの中から数人の白衣の人物たちが姿を表した。
その中のひとりの女性は見覚えのある人物だった。
「到着したのね。……それにしても番犬のブル・マスティフたちがすっかり懐いているなんて驚きね」
きいに甘えているイヌたちを見て不思議そうに女性はそう言う。
女性は大月香奈恵だった。
香奈恵は千木良きいと三ケ木ゆうが学校内の敷地で偶然見つけた生忌物倶楽部の跡地で出会った学校の先輩に当たる女性だ。
ちなみに担任の寸沢嵐ひばり先生の先輩でもあり、元農業高校の教師でもあった二十代後半の美しい人でもあった。
「先輩、お世話になります」
「いいのよ。仕事といえば仕事なんだし、それよりも再会を楽しみにしてたんだから」
寸沢嵐先生が頭を下げると、香奈恵は笑顔で答えた。
そしてその会話が合図になったかのように、生徒たちがバスから次々と降り立ち、輸送トラックからも大型の動物たちが降ろされる。
ムサシや津久井純平の愛馬などである。
そのときだった。
キュィーン。
そんな情けない声が響いた。
見るとブル・マスティフたちが尻尾を股に挟み、身を震わせているのが見えた。
「あ、ムサシっ。こっちおいでっ」
きいがムサシを呼ぶ。
するとムサシがのっしのっしと歩み寄ってきた。
哀れだったのはブル・マスティフたちで互いに身を寄せ合って震えているのだ。
もちろんムサシとの間に圧倒的な力の差があることをわかっているからだ。
だが、ムサシは別にブル・マスティフたちを脅すこともなく鼻を寄せてフンフンと匂いを嗅いでいるだけだった。
やがてそのこともあり、イヌたちはムサシを恐れなくなり周りをグルグルと周りはじめ、一緒に遊び始めたのである。
「おーい。今から全員、大会議室へ集合だ。
広いから相棒もいっしょにな」
寸沢嵐先生が大声でそう叫んだのであった。
一行は一階ロビー脇にある大会議室に集まった。
そこは学校の体育館ほどもある部屋なので、確かにムサシなどの大型動物が入っても余裕がある造りだった。
「――部屋割りは学校の寮と同じメンバーが同室になること。
そして部屋は広いので相棒も入れるぞ」
これからの細かな説明を終えた後、先生がそう告げた。
「わあ、ホントに広いんだね。良かったねムサシ」
部屋に到着したきいは同室のゆうに向かってそう告げた。
「本当ね。学校の寮よりも広くて快適だわ」
学校の寮の一部屋は約十畳程度だったが、ここは倍の二十畳くらいはありそうで、
部屋の両脇にベッドが配置されているのにも関わらず、間にムサシが寝転んでも十分に隙間ができるくらいの広さが確保されていたのであった。
「学校もこれくらい広くしてくれればいいのにっ」
きいはごきげんでベッドの上で大はしゃぎしている。
「学校の寮が狭い訳じゃないのよ。ムサシが規格外で大きいから部屋が狭く感じるだけよ」
ゆうが的確な分析をする。
「そういえばそうだね。みんなジャンボくらいの大きさだったら問題ないもんねっ」
きいはゆうの相棒であるワオキツネザルのジャンボを見てそう返事をするのであった。
そのときだった。
館内放送が入ったのだ。
『――湘南農業高校の生徒たちに連絡です。入浴準備が整いました。各自入浴を行ってください』
「わあ、お風呂だよっ。ゆう、行こうよっ」
きいは備え付けの浴衣を手にして、そう三ケ木ゆうに言うのであった。
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私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




