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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
27/55

27「第三話 獣使い」私は研修センターへと向かう途中でムサシの異変を知る。

【毎日昼の12時に更新します】



この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。



 


 それから日が過ぎて、きいたちが研修センターに向かう日となった。

 この日は朝から農業高校に貸し切りのバスやトラックが到着していた。

 時刻は始業前だが、行き先が遠いので早い時間の出発になるからだった。




 そして動物輸送用のトラックが三台ほどいる。

 それはもちろんムサシのような大型の動物を運ぶための専用業者のものだった。



「わあ、あのトラックなんだねっ。

 荷台にゾウさんの絵が描いてある。かわいいねっ」




 荷台には幼稚園バスに描かれるような、かわいらしいイラストのゾウがあった。

 その荷台だが屋根と壁がしっかりある大きな檻が乗っている。




 檻の窓に開閉式の窓ガラスもあることからエアコンもあるようだ。

 これなら動物も同乗する人間も快適だろう。




「お前ら。事前に説明した通りバスの座席は基本、部屋別だ。

 同室の者と隣に座るようにしろ。

 そして大型の相棒がいるヤツはトラックだ。相棒といっしょに現地まで乗せてもらえ」



 獣医科女子クラスの面々の前には担任の寸沢嵐(すわらし)先生が立ち、そう告げた。

 その言葉に従って女生徒たちは次々とバスへと乗り込む。




 そして千木良きいだが、相棒のムサシが巨体なのでゾウのイラストがあるトラックに向かい、制帽姿の運転手に挨拶をしていた。




「お願いしますっ」




 直角九十度まで腰を折ってのお願いに、初老の運転手は思わず苦笑する。




「こちらこそ、よろしく」




 穏やかなやり取りが終わって荷台が開き、せり出てきた階段を使ってムサシが巨大な檻の中に入る。

 そしてきいもムサシに連れ添って同乗した。




「あ、待って。

 私も乗るのよ?」




 パタパタと足音をさせて三ケ木ゆうが急いでやって来た。




「あ、ごめんっ。

 そうだったよねっ?」




 きいは荷台から手を差し伸ばして、ゆうを引き上げた。




 ゆうがきいと同じくトラックに乗る。

 それには理由があった。




 ゆうは学級委員なのだから、本来はバスに乗るべきなのだが、

 きいが心配なので先生に許可を得てトラックに乗っている。




「まあ、千木良のことだから誰かが見張っていないと、

 なにかやらかすかもしれん。

 わかった。三ケ木、頼むぞ」




 先生のこういう言葉もあり、ゆうはきいと同じくトラック組となったのであった。

 だが結果的に言うとこれは正しい選択だった。




 きいはその後、サービスエリアで財布もスマホも持たずに買い物に行こうとしたり、ムサシがいるのに施錠を忘れて出かけようとしたりしたからだ。

 もちろんそれらは三ケ木ゆうがしっかり見張っていたので未然に防げたのであった。




 ■




 旅は順調に進み、途中食事やトイレの休憩を挟み午後三時過ぎには山深い上り坂をバス、トラック合わせて五台の車列は進んでいた。

 到着したのは東北地方。I県であった。




 一応は国道とのことだったが、大型車がギリギリ曲がれるような急カーブが続くような道で、対向車はほとんど姿を見ない。




 そして急な坂をゆっくりとバス、トラックが登っているときだった。




 ――ダァーンッ!




 耳慣れない発砲音がして、きいとゆうは楽しんでいた会話を中止した。




「……なんだろっ? おっきな音だったよねっ?」




「破裂音ね。鉄砲かしら?」




 ゆうの答えが予想外だったきいは驚きの声で尋ねていた。




「鉄砲っ? なんでどうしてっ?」




「鉄砲ってよりも猟銃ね。たぶん狩猟地区なのよ」




「獲物を獲っている猟師さんがいるってことだねっ?」




「そうね。これだけ山深い場所だもの。

 きっと獲物がたくさんいるんだわ」




 すると再びダァーンッ! と射撃音が聞こえてきた。




 そのときだった。

 車内に異変が起こったのだ。




 それまで顎まで床につけてくつろいで眠っていたムサシがいきなり起き上がったのだ。

 そしてクゥーンと鼻声を出したかと思うと急にそわそわとしだし檻の中をグルグルと回り始めたのだ。



 そしてよく見ると小刻みに身体を震わせている。

 ……怯えているのだ。




「ムサシっ! どうしたのっ? 大丈夫だよっ」




 きいは檻の中へと入り、ムサシの巨大な頭を抱きしめる。




「ねえ、ゆう。

 どうしたんだろっ? ムサシが震えているよっ」




「変ね。

 ムサシが猟銃の音程度で怯えるのかしら……?」




 ムサシの戦いでの勇ましさを見ているゆうには信じられない現象だった。

 だが、それは事実できいの小さい身体に鼻先を押し付けて甘え声を出しながら、

 小刻みに震えているのは事実であった。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「いらぬ神に祟りなし」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」連載中


 も、よろしくお願いいたします。

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