26「第三話 獣使い」私の親友はガルーダの太鼓を手に入れる。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
グオォォォーーーッ……。
ジェヴォーダンの獣が苦悶の叫び声を上げた。
見るとオランウータンたちが、その大きな手で小型の哺乳類を次々と掴み上げ握りつぶしているからだ。
それは獣の身体を構成している小動物だった。
■
「……ひいおじいさま。ひょっとしてその小動物とはネズミでしょうか?」
ゆうは思い出していた。
先日の公園噴水前での戦いでは、
ジェヴォーダンの獣たちはドブネズミやクマネズミが群れで獣の身体を構成していた。
そのことから、又一の話も同様だと考えたのだ。
「ああ。どうやら野ネズミの群れだった。
大型のニューギニアオニネズミや小型のナンヨウネズミたちだった」
ニューギニアオニネズミは体長四十センチに届く大型のネズミで、
ナンヨウネズミは体長十五センチほどのクマネズミよりやや大きなネズミ。
ともに又一が戦った島には見られるネズミたちだった。
やはりインドネシアでも生忌物は小型動物が合体して大型の獣を構成していたのは間違いない。
■
そして老人に使役されているオランウータンたちである。
彼らはその並外れた腕力でネズミを平らげるように片っ端から握りつぶし続けた。
ウヴォヴォヴォヴォーーーン……。
獣が断末魔の悲鳴を上げた。
とうとうジェヴォーダンの獣はその姿を維持できなくなったのだ。
そして霧が晴れるように、その黒い巨体は姿を空気に消した。
風が吹き、老人と屋敷から飛び出した又一の間を通り抜けた。
すると獣臭と血の匂いが鼻についた。
「……なんだったんだ?」
又一は怪物もその結末もすべてが謎だった。
「この怪物。ときどき出ます。でも森の人たちの敵ではない」
老人はそう答えた。
そして又一は老人から生忌物の存在を教わったのであった。
そして時が過ぎた。
老人の知り合いの伝手から連絡が行き渡り、日本が敗戦したことを知ったのであった。
又一は日本に帰国できることになった。
だが戦友の川端は現地に残ると宣言した。
それは老人の娘との間にすでに夫婦の約束ができていて、
その娘が身ごもっていると伝えられたからだった。
■
「……川端は帰化して現地の人となった。
そして独立戦争にも参加したらしいのだが、その後連絡は取れない」
又一が重々しく告げた。
ゆうは返す言葉が見つからず、沈黙していた。
「それで老人が私の帰国に際してこの太鼓をくれたのだ」
「そうだったのですね? でも大事な物ではなかったのですか?」
ゆうは又一から太鼓を渡された。
太鼓は直径十五センチ程でベルトに固定できるように金具が付いている。
そして側面には神の鳥であるガルーダの象嵌が施されている。
「大事な物ではあったのだが、老人は他にも持っていたらしい。
だから気前よくくれた訳だ」
「そうだったのですね?」
ゆうはガルーダの彫刻を指でなぞる。
すると不思議な感覚があった。
なにか力が湧いてくるような感じがするのだ。
「それで動物使いを目指し、生忌物とも遭遇したお前にこの太鼓を渡そう。
きっと役に立つはずだ」
「よろしいのですか?」
元々、この太鼓を頂けないかと頼むつもりで又一を訪ねたゆうだったのだが、
この太鼓の入手の経緯を聞いてしまったことで尻込みしていたのだ。
「ああ。お前にこそ相応しい」
又一は元気な笑顔を見せた。
そしてゆうはガルーダの太鼓を手に入れたのであった。
余談であるが、余命幾ばくもないとされていた又一だが、その後、主治医も驚くほどの回復を見せた。
太鼓を託したことで思い残すことはないと安堵したことが、かえって逆にストレスがなくなって体力が回復したのではないかと言われていた。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」連載中
も、よろしくお願いいたします。




