25「第三話 獣使い」私の親友は過去の戦いに耳を傾ける。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「お前も見たのだろう?
襲ってきたのは、ジェヴォーダンの獣と呼ばれる大きな痩せたイヌだ」
又一は重々しそうにそう告げた。
ゆうは大きく息を呑んだ。
「ジェヴォーダンの獣。
……生忌物はすべてジェヴォーダンの獣なのでしょうか?
「いや、そんなわけではない。
ただそのときとこの間のお前たちのときが、同じ姿だけだっただけだ。
生忌物は鳥の場合も爬虫類の場合も、そして虫の場合もある」
ゆうは想像していた。
ジェヴォーダンの獣は馬や牛ほどの大きさもある巨大なイヌだ。
身体こそ細身だが、あのムサシよりも肩の高さなら上回るほど大きい。
生忌物は鳥の場合も爬虫類の場合も昆虫節足動物の場合もあるのなら、
やはりジェヴォーダンの獣並に巨大なのだろう。
その強さは計り知れない。
「……ごめんなさい。中断してしまいました。
ひいおじいさん、お話を続けてください」
我に返ったゆうは、自分が考え事をしている間にずっと待ってくれていた曽祖父に謝罪した。
曽祖父は優しげな笑みを浮かべている。
「気にするな。
そしてだ。獣の数は一頭。だが巨大だった。
あれは……。そうだな。ゾウくらいあった……。間違いない」
「そんなに……!」
又一は話し始める。
唸り声を上げて突進してきたジェヴォーダンの獣に、
いきなり米軍兵のひとりが襲われた。
軽く前足で薙ぎ払われたのだが、血潮を上げて数メートル吹っ飛ばされて、
地面に転がった。
口から血の泡を吹いている。肺なり内蔵なりをやられたようだった。
そして銃撃戦となった。
獣に対して米軍兵たちは自動小銃M1ガーランドで一斉に射撃を開始した。
だがジェヴォーダンの獣は輪郭が黒い霧が生じて曖昧になり、弾着しても黒霧を削るだけになっていた。
そしてひとり、またひとりと米兵は犠牲になり、
やがて隊長が負傷者の回収を命じて撤退してしまったのだ。
米軍に追われている又一たちにはその部分は幸運だったが、
獣は今度は老人を獲物に定めたようで、
身体の向きを変えて老人、そして又一たちが潜む屋敷を見据えるのであった。
「いかん。このままでは御老体が……」
まだ杖を手放せない戦友の川端が九九式小銃を手にする。
「待て。行くなら俺が行く。
貴様はその女性を助けろ」
又一は自分の小銃を手にして窓から外へと飛び出した。
「私、大丈夫です。あなたたち、動かないで!」
老人の鋭い声が響いた。
見ると老人は腰に下げていた小さな太鼓を腹の前に動かした。
そして腰ベルトに装着していた太鼓の撥を取り出すとリズミカルに打ち鳴らし始めたのだ。
――テケテン、テケテン、テケテン――
すると遠巻きに避難していた金色のオランウータンたちが老人を見るのがわかった。
そして両手を上げて雄叫びを上げると、
二十頭ほどの群れが一糸乱れぬ横並びで一斉にジェヴォーダンの獣に向かって突進して来たのだ。
――速いっ!
それまで愚鈍な動作に見えるオランウータンたちだったが、
四足で一心不乱に獣に接近して来たかと思うと、
残り距離十メートル程で二足歩行となり両腕を頭上に翳した。
――グボォーっ!
やがて一斉に跳躍したオランウータンたちはジェヴォーダンの獣の背に群がった。
それを獣は嫌がり身を震わせるが一頭も離れない。
その強力な両手の握力でがっちりしがみついているからであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」連載中
も、よろしくお願いいたします。




