24「第三話 獣使い」私の親友は生忌物の昔話を知る。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「……最初に来たのはアメリカ軍だった。
少人数の部隊だったのだが、オランウータンを我々日本兵と間違えたようだ。
……私たちが最初に出会ったときに人と間違えたようにな」
ゆうの問いに曽祖父はそう答えた。
そして目を閉じて、遠い記憶の中へと思いを馳せていたのだった。
■
「ご老人は寂しくないんですか?」
これは数日前のある日、又一が尋ねた言葉である。
その頃は川端も杖をつけば歩けるようになっていて、
孫娘の女性がつきそって庭を行き来するのが見える。
「いっぱいの森の人と暮らしている。寂しくない。
……孫もいる」
老人は笑顔でそう答えた。
オランウータンは現地では親しみを込めて、
森の人、森の兄貴、と言ったような呼ばれ方をしている。
これは以前に老人から聞いたことで知っていた。
老人はオランウータンの研究家だった。
元々は大都市ジャカルタの研究施設で仕事をしていたのだが、
戦火を逃れ孫娘とこのジャングルの奥地へと避難していたのである。
そしてオランウータンに囲まれて暮らしていたのであった。
そしてある朝に、目が覚めた又一が最初に聞いたのは自動小銃の銃声だった。
身を伏せながら窓から外を見ると、
何体かの金色オランウータンたちが血潮を上げて倒れるのが見えた。
「こうしちゃいられんっ……」
又一は小銃を構えて外へと走り出そうとした。
その前を老人が手を広げて止めた。
「待って、です。戦争、困る」
研究家の老人が片言の日本語でそう告げてきた。
「そんなこと言っても、あなたの大事なオランウータンたちが撃たれているんだぞ!」
「私、行く。……あなた、日本兵。行けば戦争になる」
「む、むう……」
又一は唸らざるを得なかった。
確かに老人の言う通り、ここは現地の人間が出ていくのが得策だろう。
忸怩たる思いを持ちながらも、又一は老人が出ていくのを止められなかった。
■
それからしばらく又一は無言だった。
ゆうはそんな曽祖父に付き合うように口を開かなかった。
「……やって来たのは少人数の部隊だった。
おそらく残存日本兵の捜索に来た部隊で十人もいないように見えた」
「オランウータン研究家のおじいさんはどうなったんですか?」
……最悪の結末は聞きたくない。
そんな思いをいだきながら、ゆうは曽祖父の又一に問いかけた。
「――幸いなことに彼は撃たれなかった。
両手を上げながら英語で説明しながら向かったのもあって、
撃たれることなく米軍の隊長となにやら話しているのが見えた。
……ただ私と川端のことはどう説明するのかが不安だった。
老人とその孫娘には迷惑をかけたくない。
私たちを米軍に引き渡すなら、老人たちには危害を加えない、
と言った内容で落ち着いてくれないかと天に祈る気持ちでいたのだ……」
老人は兵たちに、銃こそ突きつけられているものの、それ以上のことはされず、
また無事なオランウータンたちも、そこから十分に距離を取って避難していたので、
それ以上の惨劇はなかった。
「――だが、そこにヤツらが来たのだ?」
「アメリカ軍以外にもなにかが来たんですか?」
「ああ。
――生忌物だ」
「……」
ゆうは思わず息を呑んだ。
「……ひいおじいさん。
イキモノって、人を襲う魔物の生忌物です……か……?」
「ああ。
――つい先日、お前も襲われた生忌物だ。老人や米軍兵たちの背後。
つまりジャングルからヤツらの群れがいきなり襲ってきたのだ」
又一はゆうが友人たちと夜中の公園で生忌物たちと遭遇し、戦ったことを聞かされている様子だった。
なので生忌物の関して詳しい説明をせずに話し始めたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




