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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
21/55

21「第三話 獣使い」私は冬着を用意する。

【毎日昼の12時に更新します】


3月18日までお休みしますと宣言しておりましたが、

1日早く復帰できました。


この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。





 ジェヴォーダンの獣を倒した日から一ヶ月が過ぎていた。

 そして早朝の今、農業高校に近い、あの霊園に四人の人物たちがいた。




 それは千木良きい、三ケ木ゆう、津久井純平、そして高見澤ヨウコであった。

 四人は津久井家の墓前の前で花と線香と供物を捧げて手を合わせている。




「勇平さんっ。ムサシはね、フェンレ? ……ルだったんだよっ」




 相変わらずピントがズレているのは、きいだ。




「きい、フェンリルね」




 まだ確定ではないが、推定からそうだとしか言えない事柄を述べるのは、ゆうだ。




 フェンリルとはワヒーラ同様に伝説の域にあるオオカミ型の獣だ。

 地域によって異なるがワヒーラ同様に巨大なオオカミとして伝えられている。




 おとぎ話の中では山よりも大きいとされていることもあるが、山程の大きさであれば、

 なにをどれくらい食して生活しているのかと言う疑問が残る。

 広大な山脈を根城にしていても、

 あっと言う間にすべてを食べ尽くし飢えて死んでしまうのは確実だからだ。




 現実世界で地上最大の肉食獣はホッキョクグマだと言う。

 ホッキョクグマはシロクマの方が名前が通っているが、

 大きさを馬や牛なみと言うことであるならば、ムサシの大きさはだいたいそれだろう。




 そしてワヒーラとフェンリルの違いは明確ではないが、

 ワヒーラが戦闘能力が髙い巨大オオカミであるのに対して、

 フェンリルは魔術、魔法としか形容のしようがない能力を持つと言う。

 特に北国のフェンリルは、その過酷な風土に似合う強い寒風を巻き起こすと言われていた。




 これらの話は、ゆうが元々知っていた知識と実家にある文献、

 そして担任教師の寸沢嵐先生から教えられた知識である。




「勇平さん。まさかあなたとまた出会えたなんて……。

 見守っていてください」




 間違いなく恋人であったはずのヨウコは言葉少なめにだが、

 そう告げて手を合わせていた。




「兄さん。僕は戦えない馬しか扱えないけど僕なりに兄さんの意思を継ぎたいと思ってるよ」




 涙をためた表情で弟の純平はそう告げて一心に参拝していた。




 やがて名残惜しさは残る四人だが、

 今日も授業があることからその場を去り、高校へと帰ることになったのであった。




 ■




 そして学校である。

 純平は男子クラスなので別れたが、

 きいたち三人は同じ獣医科女子クラスなのでそのまま教室へと足を運ぶ。




 ちなみにこの三人の関係だが、決して良好とは言えない。

 きいとゆうは同室で親友なので仲はとても良いのだが、

 ヨウコは相変わらず二人に距離を置いていて必要最低限のことしか口にしないからだ。




 険悪ではないが親密でもない。

 それがきいとゆう、そしてヨウコの関係だった。




「さて、いよいよ入学後の最初の試練である林間研修を迎えることになった訳だ……」




 女子クラスの担任である寸沢嵐ひばり先生が、教室内を見回してそう告げた。




「研修センターはここからだいぶ遠い。

 貸し切りのバスで向かうのだが、朝早く出ても到着は夜になる長旅だ」




 そこで三ケ木ゆうが挙手をする。




「三ケ木、どうした?」




「だとしたら、みんなの相棒はどうするんでしょうか? 

 私のワオキツネザルならいっしょにバスに乗れますが、きいのムサシは無理だと思います」




「そうだよねっ? ムサシが乗ったら私が乗るスペースなくなっちゃうよっ」




 指摘されて気づいたきいは腕組みをして悩み始めてしまう。




「大きな相棒は別の車両になる。専用のトラックで運ぶんだ。

 そして希望者は相棒といっしょにトラックでも構わない」




「はいはいはい。じゃあ私、トラックに乗りますっ」




 きいは手を上げてピョンピョン跳ねて宣言する。




 ムサシ以外にも大型の動物は多い。

 例えば男子クラスの純平の馬などもそうだ。

 これらは専用の輸送車が学校にあるので、それで運ぶ手筈となっている。




 そしてその専用車には荷台に座席が用意されていて、

 そこに座っての移動が認められているのだ。




「研修センターは山奥だ。

 この季節ではまだまだ寒い。ひどいときには雪がちらつくこともある。

 各自、冬支度も忘れずにな」




「私、冬服持ってないよっ。どうしよっ。もう春服しか売ってないよっ……」




 きいは慌ててゆうを見る。




「大丈夫よ。

 キャンプ用品なんかを取り扱っているアウトドアグッズショップなら、

 年中冬服を売ってるわ。海外に出かける人もいるんだから」




「あ、そうかっ。そうだよねっ。ゆう、スゴイっ」




 感無量となったきいはゆうに飛びつく。




「……き、きい。暑苦しいわ……」




 きいの圧迫と体温で抱きつかれたゆうは目を白黒させるのであった。




 ■




 その日の授業は午前中のみであった。

 午後は研修に行くための準備である。




 きいとゆうはお昼ごはんもそこそこに街へ買い物に出かけた。

 それはもちろんきいが着る冬用の上着を調達するためだった。




 そしてその他の諸々の必要なものを買い揃えたときだった。

 きいは当然、寮へ帰るものだと思っていて、

 大きな荷物を持ってバス停に並んだのだが、ゆうが少し考え顔で立ち止まったのだ。




「ゆう、どうしたのっ? 帰らないのっ?」




「……うーん。

 ……ねえ、きい。帰りは一人で大丈夫かしら?」




「え? 問題ないよっ。バスで寮の前まで行くだけだしっ」




「そうよね? 

 ……だとしたら悪いけど一人で帰ってくれるかしら?」




「いいけど、どうしたのっ?」




「実家に行こうと思ってるの。

 ちょっと、ひいおじいさまに会いに行こうと思ってるのよ」




「わあ、スゴイねっ。ゆうはひいおじいちゃんがいるんだっ?」




「ええ。とても高齢だけどまだまだお元気なのよ」




「わかったっ。じゃあ先に帰ってるねっ。ゆうも気をつけてっ」




「ありがとう」




 そして、きいはひとりで大荷物を抱えてバスに乗った。

 やがてバスが走り出す。




 それを、ゆうが手を振って見送った。

 その顔には硬い笑顔が張り付いていた。




 ……今の私は()()()()()だ。

 高見澤さんや、きいと違って戦える相棒(バディ)がいない。

 もし、また生忌物と出くわしたら、

 私はまたしても守られるだけの存在となってしまう……。




 ゆうには手に入れたいものがあった。

 それを入手するには、曽祖父に会って許可を貰わないとならない。

 そのことを考えると、どうして表情が引き締まってくるのであった。



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「いらぬ神に祟りなし」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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