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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
19/55

19「第二話 出現」 私は勇平とヨウコの関係を知る。

【毎日昼の12時に更新します】



この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。




 


 きいの疑問はもっともだった。

 ネズミは弱い。

 昆虫なども食するが、基本は雑食寄りの小型草食動物だからだ。




 それに対してムサシは、ほぼオオカミ確定の巨大肉食獣。

 そしてヤマトは間違いなく大型猛禽類。

 つまりどちらもネズミの天敵なのだ。




 ふつうであれば逃げる。

 考えるまもなく、本能が反応し身体を突き動かして逃げる。

 だが、このネズミたちは憑き物に取り憑かれたように恐れを知らない。




 そして、きいが種明かしをしたことで、ジェヴォーダンの獣は戦法を変えた。

 ネズミのまま突進してきてムサシを囲み。そこで獣化して襲うのだ。




 そして有効な反撃をされたらネズミに戻って散る。

 こんな戦い方を繰り返している。




「ムサシっ。吠えてっ!」




 きいが行動を指示した。

 そしてムサシが遠吠えをする。




 ウォーーーン!




 するとネズミたちは我に返ったようで、一目散に逃げ始めたのだ。

 大きな咆哮に本能が反応したのであった。




「きい、行けるわ!」




 ゆうが手応えを感じたようで、きいに称賛を送る。




 しかしである。

 十分な距離を取ったドブネズミ、クマネズミたちはクルリと反転し、そこで身構える。

 牙を向いて目をランランを輝かせ威嚇しているのだ。




「……生忌物は支配されているんだ。

 ムサシの遠吠えで反射的に本能が刺激されても、

 すぐに支配下に戻ってしまうんだよ」




 勇平がそう告げた。

 つまりネズミたちは本能では逃げたいが、

 何者かがネズミたちを本能を捻じ伏せて凶暴化させているのだ。




「兄さん。

 その何者かの正体はわかってるのかな?」




 純平が兄の勇平に問いかけた。




「……鬼と呼ばれているわ。でも正体は不明。

 生物なのか、自然現象なのかも不明よ」




 それまで無言だったヨウコがヤマトを操りながらそう答えた。




「鬼っ? 鬼っているんだっ」




 ちょっとずれた感想を持ったのは、もちろん、きいだ。

 そう呼ばれているだけのものが、そのもの自体とは限らないのだが、

 そこまでの判断力は、まだ、きいにはないのだ。




 そこでムサシとヤマトは戦法を変更した。

 逃げる際のネズミをムサシは前足で潰し、ヤマトは爪で引き裂いて、

 ネズミたちを一匹一匹屠る戦い方に変えたのだ。




 惨殺されたネズミたちはさすがに命を絶たれているので、

 復帰して怪物化することはできない。

 おとなしい骸のままだった。




「ちょっと手詰まりね」




 ゆうが的確な指摘をする。

 確かにムサシとヤマトの攻撃で一匹一匹減らしているのだが、

 集合化したときのジェヴォーダンの獣の大きさは、さほど変わらない。




 もっと一網打尽に減らさなければ絶対的な優位は勝ち取れないのだ。

 だが機関銃や火炎放射器、もしくは爆弾のような武器を持たないムサシやヤマトには、

 そういう殺戮方法はない。




 そしてこのままではの問題もある。

 徐々にではあるが優勢に向かっているのは事実なのだが、ネズミは多数。

 そのことから、このままではムサシたちの体力が尽きてしまうのだ。




 そんなときだった。

 勇平の身体が透き通り始めているのがわかった。




「……もうそろそろ限界みたいだね。

 ……でも最後にヨウコにも会えたし、僕は幸せかな……」




 そして勇平は、きいに向き直る。




「……千木良さん、その犬笛は元々は僕のものだったんだよ。

 だから君が受け取ってくれるのが、とても嬉しい。

 ……後は君がムサシを使ってジェヴォーダンの獣を倒すんだ」




「ええっ! ちょっと勇平さんっ」




 きいが突然のことに驚く。

 そんなきいの真横を風のように駆け抜けた人物がいた。




 高見澤ヨウコだった。

 ヨウコは存在が消失しかけて薄れている勇平の身体に飛びつくと、

 しっかりと抱擁をする。




「ダメよ。……せっかくまた会えたのに……。

 ……こんなのって、ないわっ!」




「ヨウコ。

 僕は本来はここにはいない存在なんだ。

 それが戌使いの使命があったことで居残れただけなんだから……」




 そう言い終えた勇平の身体はどんどん透明になり、やがて消える寸前となった。




「イヤッ! まだいっぱい話したいことあるのにっ……」




 そう言ったヨウコは顔を勇平の顔と重ねた。

 キスだった。

 二人の身体が月光に照らされてシルエットとなる。




 このことで、なにも事情を知らなかったきいとゆうは、

 二人がどういう関係だったのかを知った。




「……」

「……」




 そして勇平は完全に透き通り、消えてしまった。

 そこにはヨウコがただひとり立ち尽くしているのみだった。




「ふわああああああああーーーーん。

 ふわああああああああーーーーん

 ……エグ……エグ……エグ……」




 ヨウコは号泣し、嗚咽を漏らしていた。

 いつもクールで笑みすら見せないヨウコが人目も憚らず泣いていたのだった。


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「いらぬ神に祟りなし」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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