15「第二話 出現」 私たちはその夜、生忌物と遭遇してしまう。
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そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
「――千木良さん、三ケ木さん、純平。
君たちは僕の後ろに移動してくれないかな?」
突然に強い口調となって勇平がそう告げた。
その表情と声色は先程までの紳士的な落ち着いたものとは、
明らかに異なっており、さすがの鈍いきいでも緊張感が伝わるのがわかるものだった。
「な、なんなんですかっ?」
きいは尋ねた。
嫌ななにかが起こり始めているのはわかる。
が、そのなにかがわからない。
だが、きいとゆう、純平は互いに顔を見合わせると、
勇平の言いつけ通りに勇平の後ろ側へと移動するのであった。
そしてこれから始まるのが荒事のためなのか、
戦闘には向かない小型犬、中型犬や大人しい気質の大型犬も、
きいたちの周りへと避難したのであった。
しかしその他の戦う気満々に見えたシェパードやドーベルマンと言った大型犬たちも、
しだいに他のイヌ同様、きいたちの周りへと移動して来たのである。
それは彼らが戦えないのではなくて、
彼らは近隣のペットたちなので怪我をさせる訳にはいかないからであった。
むろんこれは彼らが自発的に動いた結果ではなく、勇平の指笛による指示のものだ。
結果、ムサシ一頭だけが勇平の傍らに立ち、身構えていたのである。
「……生忌物が来る。それも群れでだ」
「「ええっ!!」」
きいとゆうの驚き声が重なった。
「イキモノ? なんだいそれ?」
純平は事情を知らないことから、戸惑いの表情を見せる。
きいとゆうは寸沢嵐先生と大月先輩から生忌物のことを聞かされていたが、
純平はただの一般生徒だ。
生忌物のことを知るはずがない。
「イキモノは生忌物だよっ!」
きいが純平に向かって叫ぶ。
だが純平にはぜんぜん通じていない。
当たり前だ。読み方がまるで同じなのだから、
事情を知らぬものには混乱を与えるだけだからだ。
「生忌物は化け物のことよっ。
悪意を持って人間を襲ってくるのよ!」
「なんだって……っ!!」
純平は、からかわれているとか冗談とかは思わなかった。
兄の勇平、そしてきいやゆうの態度を見れば一目瞭然だからだ。
「しかし、なんで……。
そんなイキモノがいるなんて聞いたことがない……」
「秘密にしていたからさ。
それは純平だけじゃない。世間一般すべてに対してなんだ」
勇平はそう告げた。
そして指を唇に当て、ピィーーーーと鳴らした。
するとムサシが反応した。
前足を伏せ姿勢を低くする。
臨戦態勢だった。
そのときだった。
噴水を囲む木々の一角から、バウッと咆哮がして一頭の獣が飛び出して来たのだ。
いや、違う。
最初の一頭の後ろから次々と同じ体格の獣が姿を現した。
その数、――合計五頭。
「……ワンコの怪物かなっ?」
きいが引きつった声を出す。
「そうみたいね。
それにしても大きいわ。ムサシより大きいかも……」
現れた獣はとても大きな四足動物だった。
姿かたちはイヌ型。
ただムサシよりも大きくて体毛は闇夜よりも暗い黒色で、
両目が金色に光っていた。
「グルルルルルッッッ……」
最初に姿を表した一頭がどうやらリーダー格のようで、
唸り声を上げると、それを合図に残りの四頭が散開した。
そして勇平、ムサシ、きいたちを包囲する陣形を取る。
「……ジェヴォーダンの……獣……」
来襲した五頭を見て、呻くように勇平が呟くのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「いらぬ神に祟りなし」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




