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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
13/55

13「第二話 出現」 私は津久井勇平の正体を知る。

【毎日昼の12時に更新します】



この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。



 


「昨日、お兄さんと会ったよっ」




 いきなり純平たちの前へと飛び出したきいは唐突にそう告げた。




 その眼前に飛び込んできた余りもの突然な登場は、

 純平だけでなく取り巻きしている四人の農業科畜産コースの女生徒たちも、

 驚きのあまり歩を止めてしまう程だった。




「……え?」




 純平は、

 きいがなにを言っているのかわからないので、

 目をパチクリさせている。




戌使い(いぬつかい)のお兄さんっ。

 戌使いのテクニックをいろいろ教えてくれたんだっ」




「……い、いや、そんな……はずは……。

 ひょ、ひょっとして……君は僕のことからかってる?」




「へ? 真面目だよっ」




「……千木良(ちぎら)きい。

 僕は怒るぞ。いったいどういうつもりだ。

 僕の傷心をからかってそんなに楽しいのかっ!! 失せろっ!!」




「そうよそうよ。あなたどういうつもり!」

「ひどい人ね!」

「人でなし!」




 三人の畜産コースの取り巻き少女たちが、

 鼻息も荒く、きいにキツイ言葉を次々と放つ。




「え、ええっ! どうしてそうなるのっ?」




 きいは訳がわからなくなり、

 助けをゆうに求めるが、ゆうにもなんのことか不明なので、

 首を横に振るだけだった。




「え、え、え……ええっ???」




 きいはいよいよ困惑した。

 こうなるときいは自力で再起動ができない。




「ねえ、質問いいかしら? 

 きいは嘘は言ってないの。そしてあなたを、からかうつもりも毛頭ないの。

 だから困惑しているのよ。説明いいかしら?」




 きいの惨状を見かねて、ゆうが助け舟を出した。

 すると純平も感情的でなく冷静に話しかけてくる三ケ木(みかげ)ゆうの言葉に、

 適切に対応することができた。




「そうか。

 よくわからないけど、千木良さんが僕をからかっていないのは理解した。

 大きな声を出して、すまなかった。謝罪する。


 ……僕の兄。津久井勇平は二年前に亡くなった。

 事故と聞いているが詳細はわからないんだ……」




「え、ええっーーーーーーっ!! ……だって、いたよっ?

 ()()()会う約束したよっ」




「「()()()?」」




 三ケ木ゆうと津久井純平の声がハモった。




 それから純平がきいに詰め寄るように説明を求めた。

 きいにしては別に純平に対して勇平のことを隠し立てする必要はないのだが、

 この食堂だと大勢の目があることから、

 ゆうの提案で、別の場所で話をすることにしたのであった。




 そして、昼食を食べ終えた後、

 中庭のイギリス庭園を目指すことになった。




 だがそこには、

 この時間には高見澤ヨウコがお昼を取っているはずだと、きいは思い出す。

 しかし近づいてみるとヨウコの姿はなかった。




 見上げると大空を弧を描いて旋回するヤマトの姿は見えたのだが、

 肝心のヨウコはどこにも見えなかったのだった。




 今ここにいるのはきいとゆう、そして純平の三人だけだった。

 取り巻き四人組は純平の方から断りを入れて席を外してもらったのだ。

 事情が事情だけに、あまり余人を交えたくないのがわかる。




 庭園にいくつかあるベンチの中で向かい合わせに設置されている木製のものに、

 三人は座った。

 きいとゆうが並んで座り、その正面のベンチには純平がひとりで座ったのであった。




 そこで純平が話を切り出す。




「僕の兄がいたってのは本当なのか? 

 いや、……疑う訳じゃないんだが、本来あり得ない話だし。

 つまり、それは……兄の幽霊ってことだよね?」




「足はあったよっ。それにちゃんとお話もできたし。

 ……本当に勇平さんは幽霊なのかなっ?」




「それは間違いない。葬式もしたし、位牌もある。

 それにここの近くの霊園のお墓に納骨もした。

 それがぜんぶ記憶違いって言うなら、僕は入院する」




 きいは嘘を言ってない。

 そして純平も嘘を言っていなかった。




「霊園? 

 あ、そこで初めて勇平さんと出会ったんだよっ」




 きいの発言に純平の顔は驚愕に染まった。

 そしてきいはムサシを追って真夜中の霊園に行った最初の話から、

 純平に話したのであった。




「……本来なら笑って否定するような話だけど、僕は千木良さんを信じる。

 世の中にはまだまだ科学で説明できない事が多い……」




「私もきいの話を信じるわ。

 だってきいは嘘を吐けないし、

 そもそもこんな込み入ったお話を、でっち上げられるような女の子じゃないもの」




「ありがとうっ。信じてくれてっ」




 きいは二人に感謝した。

 するとゆうと純平が、まるで申し合わせたかのように額に指を当てて考え込み始めた。

 きいはそれを見て何事かと思ったのだが、二人の真剣な表情を見て口をつぐんだ。




「千木良さん。僕も今夜、兄さんのところにいっしょに行ってもいいかい?」




「私も同じことを考えていたわ。私も勇平さんに会ってみたい。

 ねえ、きい、いいかしら?」




「ええっと、別にいいと思うよっ。

 他の人を連れてきちゃダメって言われてないしっ」




 きいは快諾した。

 そして三人は打ち合わせをする。




 時刻は深夜零時。

 通用門前の木々な立ち並んでいる場所を待ち合わせに選んだ。




 そこは街灯もないし、月明かりも入ってこないところなので、

 万が一、巡回の先生がパトロールに来ても姿を隠せるからだった。

 巨体のムサシを隠せる場所はそうそうない。




よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「いらぬ神に祟りなし」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。


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