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生忌物倶楽部  作者: 鬼居かます
12/55

12「第二話 出現」 私は道具として扱われる。

【毎日昼の12時に更新します】



この作品には以降のストックがありません。

そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。

すみませんが、よろしくお願いいたします。



 


 翌朝のことである。

 日付が変わりそうな頃に寮へと帰ってきたきいだったが、

 目が覚めたのは割りと早めだった。




「また夜遊びしたでしょ? 

 いつか先生にバレるわよ」




 きいよりも早く起きていた同室の三ケ木ゆうに、

 千木良きいは注意されるのであった。




 だが、きいはゆうの忠告に対してどこ吹く風だ。




「それよりもっ。

 聞いてよっ。ゆうっ」




 こんな調子である。

 それを見たゆうはため息をひとつ吐いた。




「なにかしら? 

 そんなに慌てて」




「昨晩ね、津久井くんのお兄ちゃんに会っちゃったんだよっ。

 勇平さんって言って、戌使い(いぬつかい)なんだよっ」




「……ちょっと待って。

 情報量が多すぎてわかんないわ」




「前に夜のお墓で会った人っ。

 その人と昨晩公園でまた会ったのっ」




「それが、えっと、

 勇平さんって人だったってことかしら?」




「そうっ。そうなのっ。

 さすがゆうは頭いいっ」




「まあ、……ありがとうって言っておくわ。

 ほめてくれたんだし……」




 ゆう、微妙な顔になる。

 きいの判断基準が今ひとつわからない。

 自分ではできないことをできる人は、

 スゴイとは思っているのはわかるのだが……。




「その勇平さんが、

 津久井純平くんのお兄さんなんだってさっ」




「すごい偶然ね。そのお兄さんはなにしてる人なのかしら?」




「うんっ。だから戌使いだったんだよっ」




 ……きいはやっぱり直情型なんだわ。

 会話の前後の文脈で意図を推し量るのは無理なのね……。

 ゆうはきいを再認識した。




「……高校生とか社会人とかなどの、

 肩書を訊いたつもりなんだけど……。

 まあ、いいわ。

 で、戌使いだったのね?」




「うんっ。戌使いなんだよっ。

 そんでいろいろ教えてもらったのっ」




「教えてもらった? 

 戌使いの技術のことかしら?」




「そうっ。

 お陰でムサシがいろいろできるようになったんだよっ」




 自分に話題が向いたことがわかったのか、

 ムサシがフンフンしている。




「……そうなの。

 ……だったら後で津久井くんにも、

 お礼言っておいた方がいいんじゃない?」




「あ、そうだよねっ。

 さすが、ゆうっ」




 そして学校が始まる。

 今日は動物使いの授業だった。

 各自、相棒を使っていろいろなことをしてみせる授業だ。




 動物使いの授業は基本、担任教師が行う。

 そのことから授業を受け持ったのは寸沢嵐(すわらし)ひばりだった。




「……では次、千木良。

 お前は相棒に道具を使わせて、

 そこの……、どのボールでもいいから、バスケットゴールに見事にゴールさせてみろ」




 複雑な指示だった。

 きいの目の前には様々な道具類がある。




 例えば野球のバット、テニスのラケット、

 昆虫採集の網、スコップや鍬などの農具などなど。

 そしてボールもバスケットボールからゴルフボールまで大きさも様々であった。




「イエッサー。

 じゃあムサシ、なにか道具を使ってあの高いゴールにボールを入れてっ」




 きいはそう言いながら念じて犬笛を吹く。

 するとムサシは一瞬躊躇して首を傾げた。

 だがやがてなにかにひらめくと、

 鼻先を使ってバスケットボールを、きいの目の前に押し出したのだ。




「……ムサシ? このボールを私が持つのっ?」




 するとムサシは首肯した。

 なのできいは疑問を顔に貼り付けたまま、バスケットボールを持ち上げる。



 それを見たムサシはきいの後ろ襟を咥えた。

 そしてそのままバスケットゴールの下まで疾走する。




「ちょ、ちょ、ちょっとっ、ムサシっ、なになにっ?」




 事態がわからないきいは戸惑いの声を上げる。

 やがてムサシはゴール真下に着いた。

 そして後ろ足で立ち上がり、咥えたきいをネットの前へと掲げたのであった。




「あ、ゴールできるね?」




 宙高い位置にいるきいはゴールネットを見下ろす位置にいたことで、

 ただ手を離すだけで見事にボールをゴールに入れることができる。




 そのことを理解したきいはボールを持つ両手を前に差し出すと、

 そのまま手を離した。

 するとボールは真下に落ちてゴールした。地面に落ちたボールは弾んた。




「……ククク。

 見事だ千木良。……ククク。アーハッハッハッハ」




 いちおうは褒めた寸沢嵐先生だが、

 含み笑いからやがて爆笑へと笑いが変化した。




「な、なんなんですかっ。先生っ、どうして私を笑うんですかっ!!」




 きいは憤慨した。

 だが笑っているのは先生だけじゃなくて、クラスメートたちにも笑いは伝染していった。

 もちろん三ケ木ゆうも笑っていた。




 だがさすがにきいの手前、爆笑する訳にもいかず、

 顔を真っ赤にして俯きながら両肩を震わせている。

 笑いを我慢しているのは一目瞭然である。




「ああっ、ゆうまで笑ってるっ。

 どうしてっ? なにがおかしいのっ?」




 ムサシによって地面に降ろされたきいは憤慨しながら戻ってきた。




「……き、きい。ごめんなさい。

 きいは見事に合格だわ。そしてムサシがとても頭が良いのもわかったの。

 ……ウフフ……ウフフ……」




「じゃ、じゃあなんで笑うのっ?」




「ククク……。

 それはな、ムサシがこの場でいちばん適した道具を見つけ出し、それを使ったからだ。

 ……ククク」




 まだ笑い足りない様子の寸沢嵐先生が説明をしてくれた。




「いちばん適した道具? なんですか、それっ?」




「……ククク。

 それはな、お前だ。千木良」




「ほえっ? 私っ……?」




 きいはキョトンとした。

 意味がわからないからだ。




「ああ、ここにあるバットやラケット、スコップや鍬なんかより、

 もっとボールを運ぶのに適した道具がお前なんだ。


 逆らわず、素直でよく働く道具だ。

 ムサシは本当に頭がいい。上手く道具を使いこなしたと言う訳だ。

 ……ブワッハッハッハッ……」




 ようやく意味を理解した、きいは、

 顔を真っ赤にした。




「酷いよっ! ムサシっ!!」



 きいは怒ってムサシを追いかける。

 ムサシもきいの怒りの原因がわかっているので、とにかく逃げの一手であった。




 やがて獣医科女子クラスの動物使いの実技が全員終了した。

 最後は三ケ木ゆうだった。

 ゆうは指定された通りにワオキツネザルのジャンボを操り、急須にお湯を注ぎ、

 お茶を茶碗に入れるという難易度の高い実技を難なくこなしたのであった。




 遠くで男子クラスが同じ授業を受けているのが見える。

 そこには白馬に乗った純平の姿もあった。

 純平に与えられた指示は馬術のようで、いくつもの柵を馬と共に飛び越えるという

 見事な技を見せていた。




「純平くん、スゴイわね」




 県大会で入賞できそうな腕前を見たゆうがきいに話しかけた。




「うん。でも勇平さんはもっとスゴイよっ」




 きいは昨夜の勇平の戌使いの技を思い出していた。

 勇平は何十匹ものイヌたちを口笛で操り、

 軍隊のような複雑な陣形を構築していたことを思い出したのであった。




 そして午前中の授業がすべて終わり、昼休みとなった。

 千木良きいはいつものように三ケ木ゆうを誘い農業食堂へとやって来ていた。




 きいは今日も百円のメニューを選ぼうと考えていた。

 そして商品見本の蝋細工を端から端までチェックする。




「……ピーマンとレタス盛り盛りピザトーストか、

 ぶつ切りキャベツ入りダブルバーガーのどっちがいいかなっ?」




 きいはゆうに質問する。




「……好きにしたら? 

 私はあなたが昨日食べた納豆ご飯生卵付きにするわ。……業腹だけど」




「ああーっ。また業腹って言ったあっ」




 賑やかなきいである。

 とにかくきいは元気いっぱいで声も仕草も大きいので目立つ。




 最初はそんなきいがちょっと恥ずかしくて、なんとかなだめようとしていたのが、

 ゆうだったのだが、もう慣れた。

 と、言うかその騒々しさこそが千木良きいだと達観したのであった。




 そのときだった。

 四人の取り巻き少女を連れた津久井純平が食堂に入って来るのに、

 きいとゆうは気がついたのであった。


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「いらぬ神に祟りなし」連載中

「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」連載中


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。


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