34.末路
ぬるり、と独特な動きでシカルバが間合いへ侵入してきた。彼の纏う魔力の性質がそうさせるのか、テンポが遅れて呼吸が読み取りづらい。
初手、蹴りをはなったシカルバ。正確に私の顔を狙ってきた。
(――受け止めて、脚を折る)
片足では戦うことはできないだろう。折ってしまえば戦闘不能に追い込める。
――パシッ!!
腕を交差させ、防御しながらシカルバの脚を掴む。そしてそのまま倒れ込むように体重をかけ脚を折ろうと...したが、その瞬間――
ゴッッ!!!
――魔力を集中させたシカルバの拳が私の顔面を捉えた。
「!!」
私にダメージは無いが、奴の脚を放してしまいまた振り出しにもどる。
(肉を切らせて...骨を断つ、か。蹴りは囮だった訳だ)
今の拳は魔力量的におそらく本命の一撃。けれど、私にはダメージを与えられなかった。
(...でもあるんでしょう?必殺技とも呼べる、《スキル》が)
おそらく、シカルバは最大火力であるその《スキル》で逆転の一撃を狙ってくるはず。
――そこを、返り討ちにしてやる。
積み上げてきたそのジョブスキルを上回る。正面から、まっすぐに。言い訳もできないくらい...完膚無きまでに。
シカルバは両脚に魔力を集中させた。そして
「――ファイトスキル、《月蹴滑空》ッ」
フッ、と姿が消えた――
――いや、消えたように見えた。
――バシッ!!と私はパリィの要領、手の甲で払い除ける。
上から浴びせかけるような蹴り。金色の魔力の残影でまるで三日月のように見える。が、威力はそれほどでも無く、おそらくは速さに重きを置いたスキルなのだろうと瞬時に悟る。
と、その時。上から更に拳が振り下ろされている事に気がつく。
(――滞空時間が、長い)
「――《鳴禍葬送》ッ!!」
落雷のような赤いエフェクト。これもまた弾き、攻撃を防ぐ。しかし、まだ彼の攻撃は続いていた。
スキル発動時のエフェクトがまだ消えていない。
さらなる連撃が迫りくる。
(左、蹴りが来る)
全てがそこに凝縮された赤い魔力。
「――《蹴紅閃》ッッ!!!」
ズドンンッッ!!
強烈な音が部屋に轟く。
そこまでに至る二つのスキルを、魔力、スピード、破壊力、全てにおいて遥かに上回る力を秘めた必殺の一撃。
対人戦、378回。これまで命をかけた戦いをこの世界で幾度も重ねてきた彼は、意識が途切れる瞬間、紛れもない怪物の力に触れた。
部屋に鳴った音は、シカルバのスキルが自身へ届く前に放った、アカリの拳。それが彼の腹部に沈み、背後の壁へ叩きつけられた音だった。
「――ごふっ、がは...ぶっ」
吐血し、気を失ったシカルバ。
「アカリ」
「? どうしたの、ミオちゃん」
「この人たちどうするの?」
「...さっきも言ったでしょ。殺すよ。ちゃんと、皆」
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