33.差
――シュカッ
私の言葉を聞いた、その瞬間。
距離を詰めたミノルは剣を振り抜いていた。が、私には止まって見えるほどに、遅い。
――ギシ
「...は、はあああ!?」
私はミノルの剣の持ち手を受け止め、攻撃を強制的に中断させた。
「遅いよ、それじゃあ」
ベキッ、メキメキッ
「ぐ、あっ、ぎゃあああっ!?」
私は止めた持ち手、ミノルの手をそのまま握り潰した。
「て、手がっ、手え!!!俺の、手がああ!!」
「手くらいで見苦しいなあ。お前、もっと酷いことしたでしょ?」
あまりの激痛にポロッと手放す剣。それをキャッチ。振り抜く。
ブシュ、と鮮血が舞った。
「ぎゃ、ああ、あああー!!!いでえ、いああがっ!!!」
手首を斬り上げ、飛ばした。
後ろからミオちゃんの声が聞こえる。
「――アカリ!!もうダメ!!その人死んじゃうよ」
「チガウ...ダメなのは、生かしておくのが、ダメだよ。コイツは、タケさんにあんな...いや。タケさんだけじゃない...この街の人達に」
許せない...許せないよ。だって、この街の人々は私の家族みたいなものだった。
街から出られなかった私は、彼らと生きてきた。ずっと。
だから知ってる。優しかった。みんな、いい人達だった...だから!そんな皆んなをこれ以上、危険に晒されたくない!!
「――そう、殺さなきゃ...消さなきゃいけないんだ」
「...アカリ」
自然と涙が頬を伝う。何故かはわからない。けれど哀しみと怒りがごちゃ混ぜとなって溢れ出る。
と、その時。背後から魔力の気配。ザトウの強烈な蹴りが私の額をかすめる。
「ははっ、アカリ...どうして非戦闘ジョブのお前がそれほど動けるのだ?」
私は彼の問いかけを無視し、潜り込むようにザトウの懐へ侵入。彼の反応は追いついてないようで、おそらくは私の残存をまだ見ているのだろう、視線は真っ直ぐ向こうを捉えていた。
私は両腕を交差させ、振り抜くようにザトウの肩を殴りつける。
――メギッッ!!!
「がっっ!!?」
ドガアッッ!!とぶっ飛ぶザトウ。向こうにあった机を粉砕し、気絶した。
「ははっ、やっぱり化け物だ」
「次はあんた」
「いいぜえ。お前となら命をかけて踊ってやるよ」
「...」
だらんと全身の力を抜き、脱力状態になったシカルバ。ゆらゆらと揺れ、両の手に魔力が蓄積されていく。赤いそれは見ようによっては花のように美しく見える。
――この人、ミノルよりレベルが低いけど...ミノルよりも遥かに強い。
動きからしてわかる。隙が無い。
でも、この人もミノルと一緒だ。住人を殺し、命を弄んだ。
だから負けるわけにはいかない。必ず敵を討つ。
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