30.醜悪
夜の街は、街灯はあるものの暗く人通りが少ない。でも、ずっとそうだった訳じゃなくて、リアルとゲームがまだ行き来できていた頃は、夜でも露店を開き多くの人がお祭り騒ぎの毎夜を送っていた。
見る影もない大通り。皆、生きるのに必死だ。人々は明日も生きるために働かねばと早くも眠りにつく。
「よお、アカリ」
指定された場所である、護衛所がある地区の手前。そこにミノルの部下が三人待ち構えていた。声をかけてきた男はにやにやと笑い、一人は煙草をくゆらせ、残る一人はガムを噛みながら木にもたれかかる。
「...どこに行けばいいの」
そう聞くと、煙草をくわえてた男が近づいてきた。そして私の目の前でとまり、手首を引く。
「!?」
「連れてく前に躾が必要だな、コイツ」
――ジュッ、と煙草を私の手の甲へ押し付けた。
「あッ!!?あ、あッ...!!」
瞬間、ミオちゃんが物凄い剣幕で怒り出した。
「アカリ!!?何してんだ、お前ッッ!!」
しかし霊体のアカリを彼らが視認できる筈もなく。私はミオちゃんへ大丈夫と、視線を送り首を横に振ってみせた。
タケさんを、返してもらわないと...。
「通話で言われただろ。敬語使えよ、馬鹿」
「...すみ、ません...」
「ははっ」「おい、あんま傷つけんじゃねえよ」
煙草の男は、オオナというプレイヤーでジョブは剣士。昔はとても優しく、よく鉱石の買い取りを頼まれたりした。後ろの二人ケンジとサイトーもそうだ。皆、変わってしまった。
あの頃は、みんな笑顔がたえなくって。夜になれば集まってエールを飲みながらダンジョンや冒険の話を聞いて盛り上がった...ああ、楽しかったな。
(なんでこんな風になっちゃったんだろう...)
その時、ふと顎をあげられた。
私の顔を舐め回すように見る目。この瞳には見覚えがある。嫌な記憶。
「やっぱりオマエ顔は良いんだよな。へへ」
「おい、まだダメだぞ。ミノルが食ってからだからな」
「そーそー」
ああ、やっぱり。そういう事ね。目論見は理解した。...今すぐ逃げ出したい。触られているのが死にたくなるほど嫌だ。虫酸が走る。
...でも...うん。タケさんを解放するために行かなきゃ。
ふとオオナの後ろを見る、見たこともない狂暴な目つきのミオちゃんがいた。雰囲気がヤバい。ガチギレしているのがわかる。
(ふ、ふふっ)
なんか、怒ってくれるのは嬉しいけど、睨みつけるのに全力な彼女がワンコみたいで...ちょっと面白い。内心笑ってしまう。...でも、ありがとう。ミオちゃんのおかげで沈みかけた気持ちを持ち直せた。
「ま、そんなワケだ。おまえはミノルにヤラれるわけだが、仕方ねえよな?金がねえんなら体で、って事になるよな」
ならねえよ。ホント吐き気がするなぁ、こういう奴は。
「まあ言いなりになっている限りは安心だよ」
「あ?そうか?ミノルは乱暴だからな...壊されなきゃ良いけどな」
「まあ、たしかにね。それを愉しんでるふしもあるからね...気をつけて〜アカリちゃん!あはは」
楽しげな三人。私はオオナに手を引かれ、ミノルの元へ連行された。
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