29.シニガミ
――暗闇の店内。微かな時計の進む音。
視界を照らす入る月明かり。
見れば覆いかぶさるようにミオちゃんが眠っている。スースーと寝息をたて、まるで赤ん坊のよう。なまらめんこい。
(っていうか、あれ?そういえばタケさん...どうしたんだろ。居ないみたいだけど...)
ミオちゃんを起こさないよう、視線をうごかし店内をみる。気配も感じない。
(私が寝てるから気を利かせてそのままにしてくれてるのかな...でも起きなきゃ。せっかくタケさんが傭兵を準備してくれたんだから)
「ミオちゃーん...」
「...ん...ぅ」
私の呼びかけに気がついたミオちゃん。こしこしと目をこする。猫みたい。かわいーっ。
「アカリ...あ、もう夜」
「うん。だからそろそろ街を出る準備しなきゃね」
「...わかったわ」
起きてソファへ腰掛ける。まあ、準備といっても特に何も準備することはないんすけどね。
「タケさん多分二階の自室にいるはずだから、呼んでくる」
「あ、あたしもついてく」
「ん」
タケさんの家は一階がお店で二階がお家。コンコンと扉をノックするが返事はない。
「...?」
ドアノブを回してみると、すんなり回った。ガチャリと扉を開け呼びかけるが、反応がない。と、いうか人の気配もない。
「居ないみたいね」と、ミオちゃんが。
「どうしたんだろ。何か用事ができてどっか出かけてるのかな?」
「その可能性はあるけど...もしかして、昼間に護衛所へ行ったきりだったり?」
「...こんな遅くまで...」
「メッセージは...通話してみたら?」
「あ、そっか」
私は登録してあったタケさんの名前を開く。通話マークを押し、コール音が鳴る。と、意外にも二コールですぐに繋がった。
「あ、もしもし、タケさん?」
『...』
「?...どうしたの?なんで黙ってるの」
『アカリちゃん』
その声色から重苦しい雰囲気が伝わってくる。もしかして、お金が足りなかったのかな?
「ん、なに?」
『...い、今すぐ、逃げるんじゃ!』
「え?」
と、その直後。
――ゴンッッ、と鈍い音がした。
『――ぐっ、ああっ、ああ!!』
タケさんの絶叫。
「...え、え、え?な、なに?」
そして、すぐにその叫びの理由を知ることになった。
『おー、アカリィ!お前、なんで俺からの着信拒否してんだよ??』
この声、ミノル!?
「な、なんで、っていうか、着信拒否なんて」
あ、もしかして。と、ダンジョンに居たことに思い当たる。確かダンジョン内では通信の類が行えない。そのタイミングで私にコンタクトをとったのか。
でも、私がダンジョンに居たなんて彼は信じない。
「ま、待って...ごめん、逃げる気はないの」
『おいおい、そりゃ無理だろ。このジイさんがお前の名前で護衛登録済ませるのを見たんだぜ?つーことは逃げるって事だろーが!』
護衛登録はその護衛をつける人間の名義でないとダメだ。それを逆手に取られた。私がもし逃げるとしたら、戦えないから必ず護衛をつけようとする...それを読まれて。
(...私が、そもそも護衛なんてお願いしなければ...タケさんに甘えなければ...)
「わかった...私、いまから行くから。ついたらタケさんを解放して...私はどうなっても良いから」
『おーおー、物分りがいいねえ。じゃ、護衛所近くまで来い。そこらへんにクランメンバーがいるからな。つーか、てめえ敬語つかえよ。おれはクランのマスターだぞコラ』
「...はい...すみません」
『それくらい考えて喋れよ、テーノーが。さっさと来い。このジジイが死なねえ内にな――プッ』
通話が切れた。
「...アカリ...」
「行く」
店の扉を開いた。
【とても重要なお願い】
ブックマーク登録と、もしよろしければ広告の下にある☆☆☆☆☆から評価していただけるととても嬉しいです。
これにより、ランキングを駆け上がる事が出来れば、より多くの方に作品を目にしていただく事が出来るので、よろしくお願いします!
勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫ですので、よろしくお願いします!