24.魔力
...やっぱりさ、私の人生だからかな。
こうなるのはわかってたんだよね。だって、ずっとそうだった。ここぞという時に失敗するし。緊張してヘタれるし。
だから今回も、そう。...ただ今回違うのは、もう後がないって事。命運尽きたっていうのかな。
だけど...そう。だからこそ...さ
「...あと、一回かな...」
「アカリ...あと一回?どういうこと?」
私の体から出ていたミオちゃんが聞いた。
「上手くいくかわからない...でも、もし成功すれば一撃だけ入れられそう。そんな手があるの...」
「...」
でも一撃だ。それがもし当てれたところで白き少女は倒せないだろう...だって、彼女には、まだ最後の形態変化が残されている。というか、その一撃が彼女のHPを削りきれるかどうかもわからない。
(でも、もう仕方ない。やらなきゃ死ぬ...。やって死ぬかやらずに死ぬか、どちらがいいかと問われれば、やって死ぬ方だ。後悔の少ない方...それを選び続けて今まで生きてきた。だから、さいごまで...)
「アカリ」
ミオちゃんが私の名前を呼ぶ。
「ごめんね。...見ているだけで、何も出来なくて」
「え?」
「あたしに体があれば...あなたと一緒に戦えたのに」
なに、言ってるの...ミオちゃん。
突然の事に私はびっくりする。急にどうしたんだろう。
「一緒に戦えたのにって...ずっと一緒に戦ってきたじゃん。私、魔力ないからミオちゃんがいなかったらここまで戦えてないよ」
「...でも」
「私ね、ミオちゃんがいてくれるから頑張れてるんだよ。だからそんな寂しいこと言わないで...」
もしかして、このダンジョンへ連れてきた責任を感じているのかな。ミオちゃんは辛そうに言う。そんな声を聞いたら私も辛くなる。
だから、止めて。私はそんな言葉が欲しいんじゃない。
やばい、怖くなってきた。このままお別れなんて...悲しくなってくる。
「アカリ...」
「なに」
ミオちゃんは何かを決したように、私に言った。
「がんばって」
――...!
その言葉は、まるで魔法のように。
――体が、軽くなった...気がする。
「アカリ。あたしはまだあなたと一緒にいたい。だから」
――力が、満ちる。
「勝って」
負けたくない。
「...ミオちゃん」
「なに」
「ありがとう」
私は笑う。それは虚勢の類ではなく、彼女に一筋の希望を見たからだ。
そうだ、私...だけじゃない。私達。二人で戦っているんだ。
(...多分、ある)
【審美眼】の鑑定でも、モンスターのステータスは視れない。でも、おおよその魔力量は視て取れる。
(...圧倒的な力の差。全てにおいて格上である、白き少女。でもある...あるんだ。たった一つだけ、彼女に勝っている物が...!)
「アイテムボックス」
ボンッ、と現れた箱。そこに手を入れた。何も入っていないはずのアイテムボックス。しかしミオちゃんは理解し頷いた。
「...わかったわ」
そう言い、同化した。
私は微笑み、頷く。
と、その時。白き少女の魔力が揺らいだ。全身を覆う魔力が背に集まり、やがてそれは剣を模倣する。八つ生成された剣は、まるで彼女に生えた翼のように背に広がっていた。
(...なるほど。私がアイテムボックスで剣を弾けないよう、手数で攻める...って感じね)
私はアイテムボックスから手を引き抜くと、ミオちゃんとの同化を解いた。
(私の読みが正しければ...彼女は)
私は商人スキル《忍び足》を使い、足音を消し、ゆっくりと前へ進む。白き少女の瞬発力は瞬きの一つも許さず、目を離せば一瞬で私の懐へ入ってくるだろう。だから、真っ直ぐ。
そして...
私は、彼女の間合いへと到達した。
(...やっぱり。この白き少女はプレイヤーの魔力をみていたんだ...)
白き少女の攻撃範囲。そこへ侵入したにも関わらず、攻撃が始まらない。ミオちゃんとの同化を解き、魔力ゼロとなった私を彼女は視認できないようだ。
でも、これは予測通り。さっきアイテムの山から私が現れ白き少女が結界を解いた時、彼女が魔力量を基準に判別し攻撃を加えている事に気がついた。
(...音にも反応してる可能性があったから、一応足音を消したけど...上手くいった。ていうか、魔力ゼロの体が役に立つ日が来るとは...)
――スッ、と《黒錆ノ刀》を構えた。狙うのは急所である首。
背後からミオちゃんが抱きしめるように手を伸ばした。そして――
ズズズ――
同化し魔力が巡った瞬間、脚につくった力の溜めを真っ直ぐ構えた《黒錆ノ刀》へと伝え、腕をひねるように突きだした。
「――ッ!!?」
神速の突き。白き少女が刺さる寸前、かろうじて反応したが既に遅く――
ドシュッッ!!
その首を、ミオちゃん直伝【神威】が貫き、頭が落ちる。
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