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23.終わりに向かって



――ギィン!!


もう何度撃ち合ったかわからない。手足の感覚はもうなく、それでもまだ動いてくれる体に感謝する。

私、がんばった...だから、ここに...攻撃のチャンスへ繋がった。


白き少女が次の剣撃を繰り出す瞬間、私は地へと這うようなくらいに姿勢を低くした。彼女の斬撃は私の髪をかするが、スレスレで当たらない。そして――


「おかえし!」


白き少女の脚へ《黒錆ノ刀》を横薙ぎにヒットさせる。彼女がそれによりぐらつき、体勢を崩した。


(魔力の流れ、攻撃の気配はない!今しかない!!)


ガクンと、体が落ちた。――え?


ふわっとする感覚。視界が白くなる。私は地面へ転がり、《黒錆ノ刀》を投げ出してしまう。握力が...力が、はいらない。


(...この感じ...前にも)


あれはゲームに集中しすぎて、まともにご飯を食べていなかった頃、ぶっ倒れた時の感覚...やばい。これ、スタミナが。


「アカリ!!」


――ッ!!


朦朧としていた意識がミオちゃんの声で引き戻される。だが、白き少女はこの隙を見逃さない。視線を彼女へ戻すと、両腕を交差させ体を捻っていた。そして、小さくこう呟く。


「――ソードスキル《流星破断》」


縦に振り下ろされる斬撃。全身の筋力を使い、体重を乗せ地へと叩きつける。


――ドゴッ...!!!


剣撃とは思えない重い音。彼女の一撃はまるで彗星のような魔力の煌めきを放ち地上へ落ちた。


――し


――死ん、で...ない!!



「...い、生きてる、私」


真横に落ちた斬撃。地面を深々と割り、突き刺さった剣に映る自分の顔。


(顔、ある!吹き飛んでないッ!!)


――首めがけ振り下ろされた一撃。だが、瞬時に彼女の狙った場所を見極め、その直線上にアイテムボックスを出現させていた。それにより軌道を逸れた彼女の一閃は、私の命を奪うことなく地を割った。


――ッ!!


バッと距離をとり構える。白き少女は目を見開きこちらを見て佇んでいた。


(よ、良かった...死ぬくらいならと思って、壊しちゃう覚悟でアイテムボックスを盾にしたけど...上手く行ってホントに良かった。ってか、アイテムボックス硬すぎないこれ?欠けてすらいないんだけど)


「アカリ、大丈夫!?なんともない!?」


ミオちゃんが焦り言う。


「ん、大丈夫。...けど、もうまともにやり合えないかも...スタミナが」


嵐のような連撃。時間にすれば十数分と短い応酬だったが、私の体力は尽きてしまった。ていうか、あの猛攻を凌ぎ切っただけでもすごくないか、私。




◆◇◆◇◆◇◆




〜某国の研究所〜




「...凄いな...」


研究所でモニターを見ていた男がボソリと呟く。それに気がついた隣の女性が彼に聞いた。


「君が褒めるだなんて珍しいね。いったいどのプレイヤーが凄いんだい?」


覗き込む彼女。


「これは...」


モニターの向こうを見つめた彼女は、そのまま言葉を失った。その様子に気になった他の研究員がぞろぞろと集まりだし、同様に画面に食いつく。

 

「あのさ...これ、《アイテムボックス》だよな...」


顔を引きつらせた男が言った。


「《アイテムボックス》の収納品解放によるアイテム放出での危機回避、火薬類を詰めた簡易爆弾に...盾の代わり、と...今までこんな使い方したやつ居たか?」


「い、いや、それもそうだが...コイツ、商人なんだぞ?バトルジョブじゃない彼女がなぜこれほどまでに強いんだ...いくらレベルをあげているからって、ダンジョンではレベルは制限されステータスも相応に落ちるのに...」


そして女性研究員が口を開く。


「...それに、まさかSS+とソロで互角に戦えてるなんて...」

「ん?そういやソロで倒せた最高ランクモンスターってどのくらいだった?」

「...ジン・オウカとアルバート・リベンスの...S−が最高記録ですね...」


部屋が静まり返った。


「...彼女、どうにか救えないだろうか...あれは惜しい人材だ」

「それは無理よ。もうあの世界には干渉できない...あの子が自力で生き残るしかないわ」


「勿体無えな...」

「せめて、AIプレイヤーが側にいてくれれば...保護できたのに」

「...それはどうだろうな。彼女はもう大体のAIプレイヤーの力を上回っていると思うが」


「そういえば、彼女はどこの誰なんだ?あれだけの腕だ。さぞ有名なゲーマーなんだろう?」


男の一人が隣のPCでリストを開く。


「...特に何も...大会出場歴もないし、チームにも所属してない...日本人の一般プレイヤーだな」


「ええっ!?嘘だろ!?一般プレイヤーがSS+と戦えてるのかよ!?」

「マジかよ!?」「...えぇ...」「すげえな。ただただ、すげえな...」


その衝撃に静まり返っていた部屋に、大きなざわめきが生まれる。


「...名前は?」


「三加之 明里。プレイヤーネーム、アカリ」


名を聞いた白髪の男は悲しそうにモニターを見つめる。


「アカリ。惜しいプレイヤーではあるが、運が無かったようだ。さようなら...名も無き戦姫よ。この電脳世界の海で、せめて安らかに眠るがいい」





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