17.また
「アカリ!」
ぼんやり見えるミオちゃんの顔。あ、私...生きてる。
「ミオちゃん...いっ」
体に痛みが走る。
「だ、大丈夫!?」
「うん、多分...流されてる時に川底の岩やらなんやらにあたったからかな。体中痛いけどね...はは」
ぎゅっと私の手を握るミオちゃん。
「良かった...目が覚めて」
ミオちゃんが泣きそうな表情だ。初めて見るその顔に胸がきゅうっと締めつけられ、心苦しくなる。
「ごめんね。でも、大丈夫だからさ」
「なぜあなたが謝るの...あたしのほうこそごめんなさい。なにも出来なかった...」
私は首を横に振る。
「そんなことないよ。ちゃんと声聞こえてたし...それに」
ぽんぽん、とミオちゃんの頭を撫でる。
「ミオちゃんの魔力無かったらこんなもんじゃ済まなかったでしょ。護ってくれて、ありがとう...ミオちゃん」
「でも、どうしよう...」
「? 何が?」
抱きついたまま私のお腹に顔を埋めたまま、言った。
「...ここが何処かわからない...」
「なんだ、そんなこと...二人で戻れる道を探そう?大丈夫だよ、きっと戻れるから!」
「アカリ...」
地上の湖が消えるまであと二週間ちょっとか。それまでに扉まで戻らないと...。
「まあ、最悪また三ヶ月ここで過ごしても良いしね。だから気楽にいこーよ」
「え?」
「ん?」
不思議そうな顔のミオちゃん。彼女は少しの間のあと「あ」と小さく呟いた。
「アカリ...その」
「なに?」
「言ってなかったんだけど...湖が引く周期は決まってはいないの。あれは様々な条件が重なって出来る異空間...だからその時期もずれたりするわ」
「ふんふん。どゆこと?」
「まあ、簡単にいうと、今回のタイミングを逃すと次に出られる機会は三年後くらいになるという話しよ...」
目をまんまるに見開き固まる私。ミオちゃんは私の顔を見て一瞬固まると、すぐに俯き微かに震えていた。笑ってやがる。
「...ど、どーしよう。三年か...」
「...」
流石に地上に出たい。宿に泊まってふかふかベッドで惰眠を貪りたい。人の調理した料理が食べたい。温かいシャワーが、浴びたいっ...!
あからさまにテンションが落ち、ブルーになっている私を気にかけたミオちゃんが口を開く。
「アカリ。ひとつ案があるのだけど...」
「な、なに!?」
「...もしも、今回の脱出タイミングに間に合わなかったら、その場合の話ね?」
「うんうん!」
「このダンジョンのボスを倒しましょう」
「は!?」
冗談か?と思ったが、ミオちゃんの表情はいたって真剣で、今の話が本気だと言うことに察しがついた。
「...え、えっと、ボスって...一人で倒せなくない?そもそもダンジョンに入るのでも一人じゃ行かないものでしょ...」
「そうね。けれど...ダンジョンによってはソロ踏破者がいるでしょう?」
「そ、それは...戦闘民族中の戦闘民族で、戦いだけに喜びをみいだしてるような、狂人プレイヤーでしょう...我、商人ぞ?」
ダンジョンをソロで踏破した人なんて、公表している人でも十人いない。この何百万とプレイヤーのいる世界で、だ。
「流石に無理じゃ...」
今の私のレベルは72。レベルだけを見ればやれそうなものだけど、でもそう簡単にはいかない。その理由はまずダンジョンのシステムにある。
ダンジョンと呼ばれる場所には、入ると同時にある制限がかけられる。それはレベルの平均化。
ダンジョンごとに決められた適正レベルがあり、それを上回るとそこまで下げられる。
ここのダンジョンの適正は55。私のレベルは55まで下げられ固定されていた。つまりダンジョンではどれだけレベルが高くても「圧倒的な力で無双!」なんて事はできない。
レベルによる補正がない以上、己の技術、つまりプレイヤースキルが試される。
他の仲間を頼れないソロなら尚更。攻防、全てを一人でこなす高い次元の技術力が要求されるのだ。
「そうね...今度ばかりは命を落としかねない。...戻りましょう」
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