表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

浦川 日歌里ノジュウニシ【side:U】

旗を掲げるだけの女 矛を抜くだけの男

作者: 歌川 詩季

 戦記ものっぽい。

 おれは 当事者じゃあない

 おれは ただの語り()

 (にご)ったこの()にうつった情景を

 ひび割れた唇で物語として(つむ)


 おれは ただの語り()



 そう遠くない昔

 まだ 爪(あと)が消えないほどの以前

 血と (しかばね)と 哀しみにまみれた

 醜悪(みにく)い争いがあった


 争いをもたらし

 血を降り注ぎ

 (しかばね)を積みあげ

 哀しみを蔓延(はびこ)らせる

 幾万の軍勢の先頭に

 蛮勇を(たた)える歌を 高らかにする雌雄(しゆう)を見た


 旗を(かか)げるだけの女で

 旗を(たた)むことを知らない女


 (ほこ)を抜くだけの男で

 (ほこ)(おさ)めることを知らない男


 雌雄(しゆう)

 血を降り注ぎ

 (しかばね)を積みあげ

 哀しみを蔓延(はびこ)らせた その跡に

 花咲く楽園を築くのだと

 幾万の軍勢を鼓舞した


 六つの大陸と

 六つの信仰と

 六つの瞳の色と

 六つの輝きの太陽を


 ぜんぶ 敵にまわして


 六つの大海(たいかい)

 六つの秘術と

 六つの愛のかたちと

 六つの満ち欠けの月を


 ぜんぶ ()き尽くして


 六つの大空と

 六つの契約と

 六つの鎖の円環()

 六つのめぐりの星を


 ぜんぶ 引き裂いた 


 血を降り注ぎ

 (しかばね)を積みあげ

 哀しみを蔓延(はびこ)らせた その跡は

 墓石(ぼせき)の森で 卒塔婆(そとば)雑木林(ぞうきばやし)

 そこにどんな花を咲かせれば

 楽園が築けるというのか


 そこにどんな花を咲かせて

 楽園を築くつもりだったのか


 旗を(かか)げるだけの女で

 旗を(たた)むことを知らない女


 (ほこ)を抜くだけの男で

 (ほこ)(おさ)めることを知らない男


 あのとき

 幾万の軍勢の先頭の雌雄(しゆう)

 蛮勇を(たた)えるために高らかにした歌を

 呪わしい(いわ)()

 旗と(ほこ)(ささ)げるように

 誇らしげに(とな)える民たちよ


 おまえたちにきかせるために

 この物語を(つむ)ぐことが

 おれの語り()としての使命なのだ



 おれは 当事者じゃあない

 おれは ただの語り()

 加害者にも 被害者にも

 ならずにすんだことに 胸をなでおろし

 傍観者でいることにも

 この身を置けない 傲慢な偽善者だ


 それでも

 この物語を(つむ)ぐことが

 おれの語り()としての使命なのだ

 (にご)ったこの()にうつった情景を

 ひび割れた唇で物語として(つむ)


 おれは ただの語り()

 このひと、かっこいい。

 こんなふうに、なりたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この詩、好きですね。 ダーク感漂いながら、何処か訥々と語っていて。 この語り部の方のお話読んでみたいなーとか思いました。
[一言] ファンタジーな世界観ですね。 語り部、とは違うのかも知れないですが、なんとなく吟遊詩人を思い出しました(ゲームなんですけど、ロ〇サガ好きだったんです……) 六つの~の言葉の所がとても格好良か…
[一言] 五月雨の感想に…… 雌雄って、もしかして 蚩尤だったり? 的外れだったらすみません。 反乱、すべてを壊すもの 六の数字あたりから、 もしかして?と思った次第でした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ