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08 レポート


 夕食後、楽しげに冒険でのあれこれを語るふたり。


 常設の採取や討伐などをしながら、エルサニア近郊の森やダンジョンを巡ってきたそうです。


 レポートを提出すればお試ししたアイテムはそのままもらえちゃうという、太っ腹な依頼だったのですね。




「見て見てサイリ、これすっごいんだよ」


 スーミャが、自慢げに持っているのは、


 えーと、板、ですね。


 片側はツルツルした板で、裏側には皮袋っぽいものが張り付けられてます。


 あえて言うなら、滑り止め付きのまな板?



「"清潔まな板マクラ"だよっ」


 スーミャ、にっこにこ。



「こっち側のまな板には『清浄』魔法の魔導具が付いてて、いつでもキレイキレイなんだよ」


 ほう、食中毒防止の観点からも、なかなかの優れモノアイテムですね。



「簡易式の『清浄』魔導具だからちょっとだけ匂いが残っちゃうけど、結構キレイになるよ」

「で、こっち側の皮袋は、空気を入れてパンパンにするとマクラになるの」

「反対側が硬いまな板だから、でこぼこのところで寝ても頭にゴツゴツしないんだよっ」


 なるほど、冒険中の快適さがちょっとだけアップする便利グッズなのですね。



「お山で採れた果物をまな板で切ったら、寝る時にフルーツの甘い香りがして、すっごく気持ち良かった!」


 もしもし、スーミャ。



「?」


 もしお魚やお肉をまな板で切ってたら、寝る時どうなってたと思う。



「……」


 ちゃんとレポートに書くんだよ、それ。




「こちらのアイテムは、一味違うぞ、サイリ殿」


 ほう、イリーシャさんが自信満々に持っているのは、


 何だかバランスがおかしいですよ、その武器。


 片手剣と短剣、どっちつかずの中途半端な長さ、だからかな。


 いや、そもそも柄の部分がデカすぎるよ、それ。



「"万能十徳包丁"、だ」


 ほう、万能とは大きく出ましたね。


 って、包丁?



「包丁は切れ味と耐久性のバランスが良い特殊鋼、包丁の背のギザギザはノコギリ、包丁の腹にあるザラザラした部分は金属も削れるヤスリ、木製の鞘はパカリと開くと簡易まな板にもなる」

「柄の終端の金属部分はハンマーとして使えるし、そこを外すと柄の中に様々な便利道具が入っているのだ」

「爪切り、火打ち石、ワイヤーノコ、笛、そして防水使用なので丸薬などを入れる薬入れとしても重宝するぞ」

「まさに、十徳!」


 なるほど、数えてみるとしっかり10通りの使い方が出来ますね。


 看板に偽り無し、かな。


 で、肝心の包丁としての使い心地はどんな感じでしたか。



「切れ味・耐久性、共に抜群、様々な魔物にしっかりとトドメを刺せたぞ」

「実に優秀な武器であった」


 えーと、武器じゃなくて包丁としての使い勝手を。



「武器としてなら文句無し!」


 ……デカ過ぎて包丁としては使いづらいかった、と。



「ぶつ切りなら任せろっ」


"万能十徳ナタ"として、レポートしてくださいね。




 それからも、なんだかズレてるグッズの数々に、ひとつひとつ丁寧にダメ出し。


 後半はおふたりとも半ば意地になって商品説明していましたが、


 ことごとく撃破しちゃいましたとも。


 えーと、もしかしておふたり、結構ズレてませんか。



「サイリ、ダメ出しばっかりで、なんかズルーい」


 そんなこと言わないでくださいな、スーミャ。


 冒険者活動において、所持品の良し悪しが生死を分けるカギとなることもあるのです。


 持ち運べる量には限りがあるからこそ、冒険の相棒となるアイテムは慎重に選ぶべき、なのですよ。



「サイリ殿の新たなる才能発見、と言ったところか」

「認めたくは無いのだが、な」


 そんなこと言わないでくださいよ、イリーシャさん。


 ほれ、いるじゃないですか。


 重箱の隅を突きまくるのが妙に上手いヤツとか、むやみやたらとダメ出ししてくるヤツとか。


 つまりは、そういうヤツなんですよ、僕は。



「……分かった。 このことはちゃんとギルドで説明してくるね」


 分かってもらえてうれしいです、スーミャ。


 ちゃんと説明して、いっぱいアイテムをもらってきてくださいね。



「冒険者ギルドでは無く、商業ギルドの依頼だったのだがな」


 確か、冒険者ギルドでの依頼達成報酬は冒険者としてのランクアップ用のポイントが多くもらえて、


 商業ギルドの方は依頼料の金額重視、でしたっけ。


 いっぱい稼いできてくださいね、イリーシャさん。



 それでは、プリナさんが干していてくれたふかふかお布団で、ゆっくり休んでください。


 おふたりとも、お疲れさまでした。



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