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13 同い歳


 突然現れたヒーローにワンパンで気絶させられたヨシュネイさん、即、捕縛完了。


 ベッドに縛られていた僕を救ってくれたのは、同い歳くらいの男の子。



「ハナシロ カミスって言います」

「イシン サイリさんですよね」

「モノカから緊急の救出依頼があったんですよ」


 ありがとう、カミスさん、ありがとう、モノカさん。


 まさに救いのヒーローヒロイン、神さま仏さまカミスさまモノカさま。


 あれ? カミスさんって、キルヴァニア王国を冒険旅行中だったはずでは?



「はい、ここはキルヴァニア王国ケストーネ砂丘ですよ」


 マジすかっ。



 ……



 クロ先生特製の即効睡眠薬で、縛られたヨシュネイさんを爆睡させたカミスさんから、


 事の経緯を伺いました。



 キルヴァニア王国を視察旅行中のカミスさん御一行。


 エルサニアのツァイシャ女王様から託された書状を持って王都のキルヴァニア城へ。


 そして、極秘の依頼を受けることに。



『盗まれた王家の秘宝の奪還』


 荒らされた宝物庫から盗まれた秘宝は3つ。



『王家を見据える紅の瞳』:代々キルヴァニア王家の女性たちを彩ってきた、大きな式典で欠かすことの出来ない宝玉のイアリング


『八破枝』:キルヴァニア王家始祖が滅した八ツ首の竜の牙から造られたといわれる伝説の宝槍


「天上のゆりかご」:キルヴァニア建国の遥か以前に滅んだ古代王国の遺産で、失われた飛行魔法が織られている魔法の絨毯



 手がかりを追ったカミスさん、すぐに犯人を特定。


 絨毯を所持していたのは、"キルヴァニアファミリー"幹部、魔導具師ヨラシュネイア。


 入手した情報から、ケストーネ砂丘にあるヨラシュネイアの隠れ家を目指していたところ、


 モノカさんから、何者かに僕が誘拐されたとの緊急連絡。


 僕の『コニタン』の位置情報が消失したのは、


 エルサニアとキルヴァニアをまたぐケストーネ砂丘のキルヴァニア側。


 そしてその場所こそ、まさにヨラシュネイアの隠れ家。


 緊急性が高いと判断したカミスさんが『転送』で先行して隠れ家に突入、絹を裂くような悲鳴をあげていた囚われの僕を救出成功。




 本当にありがとうございます、カミスさん。


 恥ずかしながら手も足も出ず、まさに一刻の猶予も無しの危機一髪だったのです。



「間に合って良かったです」

「でも、"若仙人"サイリさんはけんちゃんに匹敵するほどの凄い能力の持ち主だと、モノカから聞いていたのですが」


 えーと、能力が暴発しないよう、普段は眼鏡で封印しているのです。


 眼鏡を自力で外せない状況になると手も足も出ないってことが、今回の誘拐で心底理解出来ました。



「なるほど、でもそれが外部の人にバレてるのはおかしいですよね」


 いえ、実は"仙人"なりたての頃に危機管理ナニソレな感じでいろいろ派手にやらかしちゃいまして。


 僕が眼鏡でチカラを封印していることは、世間の皆さま周知の事実なんです。


 そのやらかしのせいで、拉致監禁からの強制種馬生活……



「本当に間に合って良かったですね」


 カミスさんには本当に感謝しております。


 見ての通り荒事はダメダメですけど、僕に出来ることなどありましたら遠慮なく。



「そうだ、モノカにコレ、渡してもらえますか」


 それって、宝石?



「キルヴァニア王家の3つの秘宝のひとつ『王家を見据える紅の瞳』です」


 あれ、イアリングじゃなかったっけ。


 って言うか、文字通り王家秘蔵の秘宝ですよね、それって。



「えーと、今回の絨毯の件の前に別の奪還作戦があったんですけど、乱戦中にイアリングの片方を壊されちゃいまして」

「キルヴァニア王国の女王様にお渡ししたら、友好の証しにって取れた方の宝石を渡されちゃいまして」

「僕が持ったままだと危ないので、モノカに預かってもらおうかなって」


 モノカさんへの贈り物なら、出来れば宝石のままじゃなくて、指輪か何かの形で渡した方が……



「やっぱりそう思います?」


 だってモノカさんとカミスさんですし。


 あ、でも、指輪じゃなくてネックレスとかの方が良いかな。


 武人の人たちって、指輪とかを装着して手の感覚が変わっちゃうのを嫌がるかも。



「流石はサイリさん、噂どおりの気配りさんですね」


 えーと、その噂はおかしいですよ。


 空気読めないヤツっていう噂ならいざ知らず。



「モノカ邸のみんなから聞いていたのは、優しくて穏やかな性格で気配り上手な紳士さんだけど、恥ずかしがりやさん過ぎるのがタマに傷、って」


 だって、あそこのお姉さんたちって、めっちゃ怖いんですよっ。


 隙あらば問答無用の全力ハグ、みたいな。



「良く分かります、僕も今でも苦手なんですよ、アレ」


 ですよねぇ。


 って、雑談してる場合じゃなかった。


 早いとこ事後処理しないと。



「もうすぐ僕の仲間が近衛騎士たちを連れてここに来ますので、それまで待ってましょうね」

「緊急事態だったので、僕だけ『転送』で先行してたんです」


 なるほど。


 でもすごいな、カミスさん。


 体格とか僕とほとんど変わらないのに、姿勢とか物腰ですぐに分かっちゃいますもん。


 めっちゃ鍛えてるんだなって。



「今でも荒事は大嫌いだけど、身体を鍛えるのがいつの間にかクセになっちゃったみたいで」

「モノカやライクァさんの影響、かな」


 うん、鍛錬大好き組のツートップですよね。


 カミスさんを入れてトップスリーになるのかな。



「僕なんてまだまだですよぅ」




 可愛らしい顔立ちにしなやかに鍛えた身体、


 芯が通った優しさと頭の回転の速さ、


 カミスさんは、僕と同い歳とは思えないほど、イケてる"若旦那"さんでした。



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