11 万策
……?
はて、どこだ、ここ。
気が付くと、殺風景な小部屋。
身動き取れない大の字状態……
って、ベッドに縛られちゃってるよっ、僕!
落ち着け、こんな時こそ冷静に、だよ。
自分の素人判断で行動せずに、ちゃんとした対処法を思い出せ。
冒険者教本、序章、緊急事態対応編、
『知らない場所で目覚めた時は、まずは最初に自分の身体情報を確認しましょう』
おしっ、記憶力が珍しくまともな仕事しましたよ。
と言うわけで、身体情報を確認。
視力良し、聴力良し、嗅覚は……たぶん良し、
身体に痛いところは……あるよ、大ありだよっ、
ベッドの四隅に向かってピンと伸ばされている手足の先、縛られている手首足首が、
めっちゃ痛え!
なんだよこれ、拉致監禁の素人かよ。
人質に苦痛を与えるのは、言うこと聞かないって分かってからの方が良いでしょ、普通。
最初からこんなんじゃ、従順なフリも出来ないっての、全く。
……いかん、冷静に、だね。
今の自分に出来ることを、冷静に思考、速やかに実行、ですよ。
えーと、固有スキルは使えません。
なぜなら、眼鏡をズラせないから。
迂闊にズレないように、自分の指先じゃないと絶対に眼鏡を外せないっていう強力な付与を付けちゃったんだな、眼鏡に。
つまり、どんなにヘッドバンギングしても外れないんですよ、この眼鏡。
……過去の自分を殴ってやりたいですね、グーで。
で、『収納』から何か役立つモノを取り出せないか、というと、
無理みたいです。
どうやらスキルや魔法を制限する結界がかかってるようですよ、この部屋、又は、この家。
けんちゃんが言うには、僕の固有スキルはこの世界でも最高ランクの能力らしくて、余程のことが無い限り結界なんかでは妨害出来ないはず。
つまり、簡単には眼鏡をズラせない制限を掛けちゃった僕が大バカ小僧なのです。
もちろん、身体能力のみでの脱出は自信を持って不可能だって断言出来ますよ。
筋金入りのひょろ男舐めんなっ。
ふう、冷静に、でしょ。
あとは、アリシエラさん特製のスーパー魔導具、
なんですけど、『コニタン』はうんともすんとも応答せず。
やっぱり結界のせい、ですよね。
つまりは、万策尽きた、のですよ。
もういいよ、どうにでもしちゃってください。
でも、出来れば、痛いのだけは勘弁……
「痛くしないから大丈夫」
それはどうも、
って、ヨシュネイさん!?




