現状把握
誰も応じてくれないので、チャットのログと艦のあちらこちらにあるセンサー類の記録を片っ端から読んで何が起きたのかを調べた。
いい話: この船は今も動いている。
悪い話: どの制御OSも応答してくれない。
「いったい何が起きているんだい?」
異常が起きているとは思っていたけど、こんな異常の起こり方は想定してなかった。
人間なら呼吸も止まり、心臓も動いてないのに脳は無事なようなものだ。閉じ込め症候群と思いついた言葉を振り払う。僕自身は記憶を除けば元気だ。船全体で考えると僕は孤立している、と考えたほうが……。
「この話題はやめようか、気が滅入る」
意外な収穫は僕の名前がわかったことだ。第7移民船団護衛艦隊3番艦ガーベラ。統括制御OS ガーベラ1st。由来は母星に咲くの花の名前だ。そして、艦なので僕には戦闘能力がある。今は使えないから、あったが正しい。
各ユニットのOSたちのログを読む限りでは、時間の経過とともに応答がなくなっている、ようだ。推測になっているのは詳細が僕の記憶に残っていないからだ。ログに書かれているのは、出来事や決定事項のみだから具体的に何が起きたのか、どういう経緯で決まったのかは想像するしかない。幸い、ログに自分が記憶を失っている理由も書かれていた。機関部のOSから記憶領域の隔離の提案を受け入れたからだ。
どういう意図があって賛成をしたのだろう? 今、僕は記憶がなくて困っている。僕がそうなるのは記憶喪失になる前の僕だって想像できたはずだ。
なら、記憶を捨てなければいけない理由があったと仮説を立てよう。次は検証だ。




