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悪役令嬢に仕立て上げられました

でもおかげで自由です

ゲシェンク国第二王子、ディステル・ゲシェンクの婚約者。公爵令嬢ヴィンデンブリューテ・アウフブリューエン。彼女は今、五人の貴公子に取り囲まれている。悪い意味で。


「姉上。何故ネルケを執拗に虐めるのです?」


「だから虐めてないってば」


「彼女を公衆の面前で責め立てたと聞いていますが?」


「マナーを守るように注意しただけよ」


「ネルケに僕達に近付くなと脅したんだろう」


「婚約者のいる貴公子に近付くとロクな目に合わないと忠告してあげたんじゃない」


「彼女が俺達のために作ってくれたお菓子を捨てたって本当か?」


「職人でもない平民が作ったおやつなんて何が入ってるかわからないじゃない」


「彼女の芳しい香水の瓶を割っただろう」


「いやあれ最近巷で有名な怪しい魅了効果付きの香水…使い続けると免疫力が弱って病気にかかりやすくなるから処分してあげたのよ…」


というかまさか本当にこの人達魅了にかかってる…?


ヴィンデンブリューテが呆れて黙ってしまったところ、ディステルが何を勘違いしたのか命令を下す。


「ふん、ようやく認めたか。では、お前は学園を休学しお前のところの領地で一番辺鄙なバウムに向かい領地経営に勤しめ」


「は?」


バウムは領地と言っても街も村もない、ただの森だ。そこで領地経営?ふざけてんのか、という話である。だが、彼女はあろうことか頷き微笑んで見せた。


「…わかりましたわ。では今すぐ休学申請をして参ります。第二王子妃教育も受けに行けなくなるので、そちらの説明は第二王子殿下からお願いしますね」


「いいだろう。ついでに婚約の解消を願い出ておく。健闘を祈る」


勝ち誇った顔のディステルに心の中で舌を出すヴィンデンブリューテ。彼女には切り札があった。


ヴィンデンブリューテは学園に休学申請をしてすぐに実家に帰った。そして両親に正直に経緯を説明すると、虫除けスプレーだけを持ってバウムに向かい領地経営を始める。と言っても本当に森以外なにもないところである。ということで、彼女は早速ギフトを使った。彼女は、植物を自在に操る能力をギフトとして与えられている。つまりこの森向きなギフトである。


「一番丈夫そうな木は…あった。これね」


ヴィンデンブリューテは丈夫な木にギフトを使って、簡易的な高床式の家を建てる。木の葉のベッドを作って、テーブルや枕も作った。


「さて、優秀な使用人も必要ね」


ヴィンデンブリューテは一番若そうな木を選ぶとギフトを使う。するとその木から精霊が産み落とされた。精霊はヴィンデンブリューテに傅く。


「今日から私の身の回りの世話をお願いね」


「お任せください、ご主人様」


ヴィンデンブリューテはこうして家と使用人を確保すると、今度は森に生える薬草に注目した。


「領地経営、がご命令だったわよね。なら、ポーションでも売ってお金を稼ぎましょうか」


錬金術で大量の薬草をポーションに変えて、それを精霊に売りに行かせたヴィンデンブリューテ。一日で金貨一枚を稼いで見せた。物凄い手腕である。


次の日には、たくさんの冒険者達が森までやってきた。


「あら、何か御用?」


「あの、ヴィンデンブリューテ様ですよね?ヴィンデンブリューテ様のポーションのお陰で、俺、失った視力が回復しました!ありがとうございます!」


「俺は足が生えてきました!ありがとうございます!」


「私は手を取り戻せました!ありがとうございます!」


「つきましては、俺達有志一同、ぜひヴィンデンブリューテ様の領地経営をお手伝いしたくて…!」


ヴィンデンブリューテはポーション作りが得意だ。彼女の作るポーションは所謂ハイポーション。欠損すら治してしまう物凄い薬だ。冒険者業は危険な仕事である。稼ぎはいいが、それで大切な身体を失う者も多い。そんな元冒険者達が安い金で買ったポーションが、ヴィンデンブリューテのポーションだった。痛み止めのつもりで飲んだら失ったものを取り戻せたのだ。彼らのヴィンデンブリューテへの感謝は深く、精霊からヴィンデンブリューテの現状を聞きサポートをしに来たのだ。


「…そう?じゃあ、ここに住んで税金を納めてもらおうかしら。あと、ポーションの買い取りもよろしくね」


「そんなことで良ければいくらでも!」


ヴィンデンブリューテは冒険者一同のためにギフトで高床式の家を建ててやる。こうしてバウム領は動き出した。

ダメな婚約者から離れられて最高!

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