4.シゴトの依頼
(うわっ、なんでこんなとこで再会しちゃうかな)
ここで顔見知りと会うのはいいことなのか、どうなのか。
とにかく、今彼の視線の先にいるのは、先ほど獄卒管理課に呼び出しを食らっていた、例のユーレッドとかいう危険人物な獄卒だった。
先ほどは好感触だったとはいえ、今はなるべく会いたくなかった。
(俺って、ひょっとしてついてない人なのかな)
タイロはそんなことを考えていたが、ふと、珍しいものを見つけて、思わず前のめりになった。
そのユーレッドとかいう男の右の袖が肩先から落ちているのは相変わらずだが、その肩に赤くて丸い達磨みたいなモノアイのロボットが、オウムかなにかみたいに乗っている。
見かけはちょっとかわいらしいのだが、獄卒用のアシスタント端末について勉強していたタイロも、それのことは知っていた。
(索敵用アシスタントだ! しかも、あれ、多分自立型だよね。人工知能仕込んであって、割と人格とかもあるやつ。ちょっと旧型っぽいけど、わー、マジで? 実物使ってる人初めて見た)
思わずテンションが上がってしまうタイロだ。
しかし、それも仕方がない。
実際、獄卒がこれだけいても、補助用のアシスタントを引き連れている獄卒は彼のほかにいない。
獄卒用索敵アシスタントは、対囚人の戦闘を効率よくこなすための助手だ。そして、何かと病みやすいという彼らに精神的にもよい影響があるというので推奨されている。
一方で、事務的な人工知能しか持たせていないことも多く、主流派音声とディスプレイなどでのガイドを行う個体が中心だという。タイロの知る限りでも、タブレットや簡易なウェアラブル端末で済ませてしまうことが多い印象だ。
今はあのタイプを使っているのはほとんどいないといわれていて、実際、タイロだって、勉強している時ですら、ああいう自立型のアシスタントロボットの現物はほとんど見ておらず、カタログでさらっと勉強したぐらいだった。
そもそも、コストのかかるアシスタントを連れ歩くのは、囚人征伐成績のいいエースの獄卒、なおかつアシスタントに対してそれだけ金を出せる獄卒だということ。総じて言えるのは、戦闘にそれだけ意味を見出せる者だということなので、獄卒管理課に勤めてからもまだ見たことがなかった。
(そういや、あの人、成績だけはエースだもんなあ。……連れてる可能性あるんだったら、もっとさっき聞きだしたらよかったか)
ゲンキンなことを考えつつ、タイロはついつい注目してしまう。
彼の使っているアシスタントは、浮遊することができるらしく、時折ふよふよと空中を浮かんでいた。たまにご主人の札をのぞいている。
(うーん、あの子のレーダーとかセンサーとかで、トランプの役とか透視できないんだろうか……)
タイロは素朴な疑問を浮かべたが、別に手放しで男が勝っている気配がないし、それならさすがにアシスタントの入場が禁止されてしまうだろう。意外とそのあたりはシビアなのだろう。
「おい、ユーレッド、ベールの旦那が話があるってさあ」
別の獄卒がふらっとやってきてそう声をかける。ユーレッドは、意外そうに首を傾げる。
「何、ここでも呼び出しか? 今日は随分と呼び出しに縁があるな」
ユーレッドはカードをテーブルに投げ出して立ち上がる。隣のチャラい感じの獄卒が絡む。
「おいおいユーレッド、勝ち逃げか?」
「逃げるほども勝ってねえよ。ようやく勝ちかけたところで呼び出しとは、出る芽すらなさそうだぜ」
ユーレッドが親しげに話しているので、どうやら知人といったところ。
(本当は賭博も減点対象なんだけどなあ)
とうっすらタイロは考えるものの、獄卒を賭博で訴えるような獄吏はいないし、タイロ自身も恨みを買ってまでそんなことをしようとも思わない。
「ありゃ、ユーレッドの旦那だ」
ラッキー・トムがふと慌てた表情になった。
ユーレッドは程なく部屋から出てきて、そこで立ち止まっている彼らに視線を走らせる。
先にトムの方がユーレッドに話しかけた。どうやら顔見知りみたいだ。
「おんや、ユーレッドの旦那じゃないですか。お久しぶりです」
「なんでえ。お前の方こそ見なかったな。てっきり、万引きあたりのせこい罪で捕まったのかと思ったぞ」
「人聞きが悪いなあ。旦那こそ見なかったじゃないですか」
「俺は仕事が忙しかったんだ。忙しいついでに、うっかり"殺って"しまって、呼び出しまでされたからな。どうも忙しいと、つい手がでちまっていけねえ」
「あー、相変わらずですね」
ラッキー・トムは、なれているらしく引きつった愛想笑いでごまかしている。
(というか、やっぱりワザとだったんだ……)
じわじわとユーレッドのことが怖くなってきたところで、彼の左目がぎらっとタイロを見た。
「お前、さっきの新米獄吏だな」
「ご、ご縁がありますね」
気づかなくてもよかったのにと思う一方、そこの肩のアシスタントのことはもうちょっと聞いてみたい。ヤバそうな彼と関わりたくない気持ちはあるが、正直興味もあるのだ。そんな複雑な感情を隠しつつ、タイロは素直に答えた。
「仕事でベール16さんに用事があるんです」
「ふふ、こんなところにお使いか。そりゃあ貧乏くじだな」
ところが、ユーレッドは意外ににんまりとする。
「ふーん、まあ獄吏とは仲良くしてた方が仕事がやりやすい。顔馴染みがいるのは悪くねえからな」
うっすら目をゆがめて笑うのが、なんだか不吉な感じがする。
「今後ともよろしくな」
「は、はは、ど、どうも」
なにもまだ言われていないけれど。減点などをもみ消すように頼まれたりしそうで、タイロは悪い想像で気持ちが重くなる。
が、ユーレッドは、あっさりと興味をなくしたように、すたすたと歩き出していた。その背中をぼんやりと眺めていると、へへへ、と笑いながらラッキー・トムが声をかけてきた。
「おや、お知り合いなんで? へえ、あの旦那と顔見知りとはお目が高い」
「い、いやぁ、さっき会ったばっかりで。覚えてくれてたとは思いませんでした」
「そうなんですか。あれはユーレッドっておっかねえ旦那なんですがね。できることなら、気に入られた方がいいですぜ。なんせ、獄卒相手でも、なんかと斬っちまうんでねえ」
「やっぱり」
どうも本当に縁があるらしく、向かう先も同じであるらしい。ユーレッドは、ベール16に呼び出されているということ。
目的地は同じなのだ。
*
「ユーレッド、久しぶりだな。何をしていた?」
ドアを開けるとベール16の恰幅のいい体が目に入る見かけは少し無理して良いブランド品などで固めているのだ。しかし、ユーレッドは彼の金回りが悪いことまでよく知っていた。
ずかずかと乗り込むとユーレッドは当然のようにソファに身を沈めて肩をすくめた。
「何を? 真面目に"仕事"していたに決まっているだろう? 獄卒の本分は狩りだからな」
「相変わらずだな。何やら問題を起こしてきたのは知っているぞ」
「その都度、リカバーしているだろう? お前に迷惑はかけてねえよ」
「それならいいが……」
とベールはふと笑う。
「そういえば、ウィステリアが珍しく立ち寄っていったな。あの女、歌手をしながら、近頃は調査員の末端の仕事を任されているらしいではないか。ずいぶん出世したものだ」
「ああそうらしいが、俺の知ったことじゃねえな」
ユーレッドはちょっと不機嫌になりつつ、カートリッジを変えた煙管をくわえて煙を吐く。
「なんだ。相変わらずもったいないことをしているな。あんな良い女、そうそういないぞ。ましてやお前みたいな男に……」
「ふん、そういう話を聞きにきたわけじゃねえぞ。その手の話をするなら帰るぜ」
ユーレッドは、ちょっとベールをにらむ。
「相変わらずだな、悪い悪い。それより、仕事の話があってだな。ぜひお前に乗ってほしいと思って……」
「仕事? お前が俺に依頼するような仕事か?」
ユーレッドはちょっと警戒したような表情になった。
「ハブやほかの連中にもするつもりなんだが、お前ぐらい腕が立たつやつが受けてくれたほうがありがたいからな」
「ベール、俺におべっか使うとは珍しいな。どこのどういった話だ」
「なに、条件はとてもいいんだ。まず、場所はマリナーブベイ」
そう指定されて、ユーレッドがふむとうなる。
「マリナーブベイ? そんな場所に行けるのか?」
ユーレッドが驚くのも無理はない。
マリナーブベイは、そもそも、このシャロゥグのあるE管区の外にあるのだ。
そもそも、一般の善良な住民ですら居住区から移動するだけでも許可制で、管区を股越えるような移動はなおさら制限される。獄卒なら特別な許可がなければまずもって無理だ。
特にマリナーブベイは、享楽的な都市をモデルにして作られた娯楽の街である。そんなところの移動に許可が出るとは。
「うむ、仕事の合間ならどんなに遊んでくれてもいいと言っていたぞ。マリナーブベイは、シャロゥグよりも栄えているからな。観光地もカジノもあるし、酒も女もいい場所だ。しかも、契約金も破格。ハブから聞いたが、お前はアシスタントの修理費用で金が要るのだろう。それぐらいの金なら十分に出るぞ」
「そりゃあありがたい話だが、で、仕事の内容は?」
「何、マリナーブベイ郊外の囚人の掃討作戦に参加してほしいということだけだ。いつものお前の”趣味と実益を兼ねた”仕事と同じだよ」
「へええ、そりゃあ、願ってもないいい話だなあ」
とユーレッドは嘆息をつく。
「確かに俺は金が欲しいし、囚人斬るのも楽しい。しかも、マリナーブベイには行ったことはねえから、そこに興味もないでもない」
「それなら、乗ってくれるか?」
ユーレッドは、煙管を手に取って首を軽く傾げた。
「しかし、その話、少し怪しいな」
「何がだ?」
「マリナーブベイは、管区が違う。俺みてえな不良獄卒ならまずもって渡航許可が出ねえ話」
「それはなんとかすると言っている」
「ふふ、それが余計怪しいって言ってるんだ」
ユーレッドは笑みをおさめた。
「マリナーブベイは管区の違いを超えてもてはやされる、複数の管区で管理された、いわば享楽的国際都市ってトコだぜ。俺は行ったことはねえが、そういう都会には悪いやつらも多いはず。俺達のような獄卒は掃いて捨てるほどいるだろう。何故、その獄卒に頼まない?」
「それは俺に聞かれてもわかる話ではないが、事情があるのだろうよ」
ユーレッドは苦笑する。
「その事情が怖いんじゃねえか。わざわざ俺やここの連中みてえな評価底辺の奴に苦労して渡航許可証発行してまで、呼び寄せるなんざ、怪しすぎて手放しでは乗れないな」
「そういうな。もう話はずいぶん進んで……」
といいかけて、ふとベールは入口にたたずんでいる青年に気が付いた。
「なんだ、お前は?」
とベールがたずねると、ユーレッドも首を回す。
そこにいるのは、例の獄卒管理課から派遣されてきたという若い獄吏だった。
「ってことでね、あの旦那方の話が終わるころに乗り込むといいんですよ」
廊下でラッキー・トムにそう教えられて、タイロは不安そうにそっと後ろの方で待っている。
部屋の中では、ソファに座っているユーレッドとベール16の間で話が進んでいた。
ベール16は恰幅の良い男で、実年齢よりやや老けて見える。あまり男前ではなかったが、確かに生まれ育ちは良さそうで、他の獄卒の連中とは少し雰囲気が違う。スーツの仕立てだってよく、ほかの獄卒はあまり着ないブランドのものを着こんでいた。
(おわらないなあ)
タイロは、素直に話が途切れるのを待っていた。
流石にユーレッドと彼の間に割り込む勇気はない。これが例のメガネの先輩なら、ズカズカ行くのかもしれないが、タイロはそこまで獄吏になりきれていないし、できたら穏便にすませたい。とりあえず、危険人物たちの機嫌を損ねたくない。
タイロはじっくりと待つことにして、存在感を消していたのだが、それでもユーレッドがドアを開けっぱなしにしていたせいで、ベールに見つかったらしい。
ちょっと見とがめるような言い方をされ、にらまれて、タイロは内心ぎくりとしたが、なるたけ平静を保つ。
「い、いえ、その……」
「見ない顔だな。獄卒でもなさそうだ」
ベールが不審そうにそういう。
「いったいどこから……」
「そうか、新米のことを忘れていたな」
と、彼が詰問に近い口調になり始めたところで、ユーレッドが間に入ってきた。
「俺とベールの話が終わるのを待っているのか? 呼べばよかったな」
「なんだ知り合いか?」
「獄卒管理課からの使者だ。お前に会いたいという話だった。おい新米、いいぞ、入っても」
主人のベールを差し置いて、ユーレッドが勝手に部屋に招き入れる。
「えっ、いいんですか?」
「俺が良いって言ったら良いんだよ。なあ?」
(いや、いいって顔してないけど)
ユーレッドはベールに目配せして笑っているが、どうもそれが強引でベールの方は苦い顔である。
この二人、実はそれほど仲良くないのかもしれない。
「獄卒管理課ということは獄吏か?」
「ええと、タイロと呼ばれていまして、まだ新米なんです。ベールさんですね」
というとベールは返事をしなかったが、まあ間違いないだろう。無視されるのは慣れているし、実際新人であるし。
タイロはカバンから封書を取り出した。
「いえ、これを本部から言付かっておりまして、手渡ししてくるようにと」
「おお、そうだったか」
そう聞くとベールは突然機嫌がよくなって、タイロから封書を受け取る。時代錯誤も甚だしい、しかし、一番使いやすい昔ながらの茶封筒。それをびりっと破って、ベールは中のものを取り出した。
中には人数分のカードのようなもの。タイロもその中身のものをみたのは初めてだ。
(なんだろ?)
「おお、ちょうど渡航許可証がきたな。いつでもマリナーブベイにいける」
「なんだァ、随分手回しが早えな」
ユーレッドは前のめりになりつつ、左手で頬杖をつく。
「いや、依頼主も急ぐということでな。あらかじめ、許可だけ申請していた。それが人数分届いたわけだな」
「ほほう、新米獄吏が一人で手渡しで持ってくる許可証か」
ユーレッドは嘲笑うように口元を歪める。
「つくづく怪しい話だな。ベール、てめえも大概悪党だからな。袖の下送るほどの金もねえだろうから。ま、獄卒と獄吏の癒着はよくあることか」
「ユーレッド、人聞きの悪いことを言うな」
嗜めるようにベールはいうと、さっとカードを一枚抜き取ってユーレッドに投げやった。
「ほら、貴様のだ」
「俺はまだ受けると言ってないが」
「そういうなよ。俺とお前の仲だろう。それに、ほら、命令書もあるのだぞ」
「命令書? 表向きはなんとしてある?」
「マリナーブベイでのE管区由来囚人の討伐に対する派遣命令だ」
「ほほう、表向きの理由にするなら、妥当なところだな。自前の管区の囚人が発生しているから、自分ところでカタをつけるということか。くくく、ますます胡散臭いはなしだ」
「ユーレッド、そう警戒するな。貴様らしくないな」
「俺は暴れられりゃ良いんだが、うるせえのがいるからな」
ユーレッドはちらりと右肩のアシスタントを見やる。
「スワロは俺と違ってマジメでな」
そういうと、スワロはきゅっと鳴いて、主人にカメラを向ける。
(あ、やっぱりこの子アシスタントだ。やっぱり、この反応自立型だよね。……ご主人とお話してる?)
とはいえ、声が聞き取れない。
最新式だと端末でも人の言葉を話してナビゲートするものも多いのだが、ユーレッドのアシスタントはあくまで短い電子音を放つだけだ。型をみても、旧型ではあるらしい。ただ、明らかに彼のアシスタントには人格があって、どうもいろいろと話をしているように思えた。
というのも、たまにユーレッドが、ふんふん相槌を打つ素振りをしているのが見えていたからだった。ベールの話に対してではないのは明らかで、先ほどから見て不自然だなと思っていたので、何らかの方法でアシスタントと話をしているようだ。
(イヤホンとか見えないけど、ピアスとかイヤカフとかしてるのかなあ。ピアス型スピーカーで通信してる獄卒の人って多いって資料に書いてあったんだよねえ)
タイロは昔の授業の資料を思い出しつつ、観察してしまう。
(でも、獄卒の人って結構用心深いから、アシスタントと何しゃべってるのか聞かれるのが嫌って人もいるし、敢えて他人にわかる形で話をさせないのかも)
タイロがまじまじとユーレッドの右肩のスワロを観察している間も、ユーレッドとベール16の間の話は進んでいた。
「もともとコイツの修繕費稼ぐためだからな、多少意見は尊重せざるを得ないわけだ」
「怪しい話ではないというに。命令書に、獄吏の随行有りとも書いてある。随行する獄卒は……、ああ、なるほど、なるほど」
資料をよんでベール16は唐突に、今まで全く興味を示していなかったタイロに視線を向けた。
「この獄吏の青年も同行してくれるということだ」
「えっ?」
もはやスワロにしか興味を抱いていなかったタイロは、唐突にそう言われてどきりとして聞き返す。
「はっ、あれ、ベールさん、今、何か言いましたか?」
「いや、君がマリナーブベイへの獄卒特別派遣の随行員になるのだろう」
「あ、あの、聞いてないんですが」
「聞いてないかもしれないが、この命令書に書いてある」
ベールがみせた命令書。慌ててタイロは受け取ってがっつり読み込んでみる。
「え、何? マジ?」
思わず語彙力が崩壊してしまうが、確かに随行員としてタイロの名前があった。
「ほう、新米もいくのか」
ユーレッドは片目を細める。
「い、いえ、行きたくはないんですが。えっ、僕、引率なんですか?」
「命令なら仕方ねえだろう? はは、新米に引率が務まるかな? 少なからず、曲者しか来ないぞ」
ユーレッドは面白そうに笑っていたが、不意にふんふんと相槌を打つ。急になんだろう、と思ったが、彼のそばにいるアシスタントのスワロが、ぴぴぱ、と音を立てていた。
「うーん、そうだな。それもそうか」
と一人納得した様子になったユーレッドは、居住まいをただした。
「まぁ、そういうことなら、いってやっても良いぞ、ベール」
「本当か!」
「獄吏が同行するなら、そんなに怪しい話でもなさそうだ……とスワロも言ってるし」
きゅっきゅ、とかすかに電子音がする。なるほど、アシスタントの同意が得られたようだ。
「そうだぞ、ユーレッド。新米獄吏が同行するぐらいの仕事だぞ、そんなにヤバイヤマではないのだから。ついでにマリナーブベイで遊んでくればいいではないか」
「はは、そのお前の言葉こそ信用ならねえけどな」
ベールとユーレッドの話を聞きつつ、タイロは青ざめていた。
(アレ、これ。もしかして、チーフとかメガネのやつ、もしかして最初から知っていたのでは?)
理不尽さに怒りが込み上げつつも、どうすることもできないタイロは、その後のベールとユーレッドの世間話の内容もろくろく聞こえなかったのだった。