コミュニエロー対策本部
コミュニエローの不穏な動向を察知したヒリア帝国は有事に備えて対策本部の設置をはじめる。
「こちら帝国軍軍令部のアイゼンフローラ中佐です」
「こちら諜報省対外諜報部ヴァルトヴェルト中佐です」
これは諜報省が発信したコミュニエローの動向を憂慮して開かれた対策会議。政府が本格的な対策本部を設置する前段協議である。
「遅くなりました、参謀本部のモロコフスキー大佐です」
諜報省と軍令部および参謀本部はグレイブルグの行政区では隣の建物である。しかし、基本的に会議はオンラインで行われ、お互いに外の建屋に出ることはない。
「まず、仮想敵の本気度合いを確認したい。諜報省の情報を頂けないだろうか」
モロコフスキーは参謀本部の首席補佐官である。基本的に軍事行動が開始されれば詳細な作戦案は彼らが作成することになる。モロコフスキー大佐は彼の冷静さや軍事理論を徹底して貫くスタイルからアイスマンなどとも呼ばれていた。
「はい、現在コミュニエロー政府が建造中としている第四カテゴリー艦艇は六隻ですが、更に大きな戦艦としてスター級十二隻を追加で建造する画策をしているようです」
対する諜報部のヴァルトヴェルト中佐はコミュニエロー対策室の情報収集メンバーである。もともとは外交省に所属した外交マンであった。
「隠すつもりのない軍拡だ。今コミュニエロー政府内の動向としてわかっていることは、コミュニエロー総帥府に新たな権力構造が生まれようとしているということです」
「新たな権力構造?」
「はい、総帥の娘に当たるエミリーが正統後継者として選出され、王女と名乗るようになったそうです」
そして、最後に軍令部所属のアイゼンフローラ中佐である。彼女はもともと指揮官候補生として軍に所属したが、現在ではより大局的な戦争意思決定を行うための補佐官を行っている。
「コミュニエロー総帥は一夫多妻制を敷いておりましたね、エミリー殿下は何番目の後継者かしら」
「エミリー王女はスター総帥にとって最後の娘です。歳は二十一とのことです」
「あら、ずいぶんな野心家ね」
「はい、これまでも娘はいたようですが、基本的に自己中心的な一族であるため、権力を運用してより強固な統治基盤を築こうとすることはありませんでした。しかし、どうやらエミリー王女は異なる様相です」
「ひとまず、状況は理解しました。敵に新たな指導者が誕生し権力の移譲が行われているために一時的に政治が混乱しているということですね」
「ご明察です。国威発動の一環だと思っております」
「本命はその方向で良いだろう。しかし、我々軍隊は最悪についても備えておかねばならない」
「大佐のおっしゃる通りですね。それで、海軍として気になることについて確認させてください。敵の新鋭艦隊は本当に第四カテゴリーでしょうか?」
「あちらの政府発表では第四カテゴリー艦艇を建造していると発表しております。しかし、諜報省の掴んだ情報においては、レーザーを主武装とした第三カテゴリー艦艇しか見つかっておりません。また、第四カテゴリー兵装を購入したという情報もありません」
この時代、艦艇は二つある。第三カテゴリーと第四カテゴリーである。残念ながら後に作ったから第四カテゴリーにカテゴライズされることも、まして強いということもない。第三カテゴリー艦は艦隊防衛任務。第四カテゴリー艦は惑星防衛任務用と言われる。それらを分ける最大の特徴は長距離艦艇阻止能力があるかどうかである。
まず、第三カテゴリー艦艇の代表兵装であるレーザーは確かに通射速度が速い兵器であるが誘導性がないため射程が二光秒程度(月と地球の距離よりちょっと長い距離)で命中が期待できなくなる。更にレーザー発振効率の低さも問題であった。威力の面からも装甲艦を撃沈することは難しく、敵艦艇のレーダーやカメラ、兵装へのダメージは与えられるが艦船を撃沈するほどの攻撃力は持っていない。より打撃力の大きい重イオン系のビームはイオンであるため飛翔中にクーロン力により拡散する性質を持つ。このため距離による威力の減衰が著しく大きく有効射程はレーザーより短いと言われる。
逆にミサイル(ヒリアでは魚雷)の攻撃力は絶大であり誘導能力もあるが、二光秒飛んでいくのに電磁カタパルトで秒速十キロ(地球上ではマッハ三十くらい)まで加速しても弾着までに十五から十七時間を要する。人類史上初の有人による月面着陸ミッションが出発から帰還まで九日間もの長期間ミッションであったことからも二光秒という距離の長さは想像ができるだろう。艦砲、ミサイル、電磁カタパルト等のキネティック弾頭を持つ兵器は使われているが、接近戦にしか使用できず惑星防御という意味では劣っていた。
一方、第四カテゴリー艦艇は二光秒の距離で敵艦艇の行動を著しく阻害する強力なストッピングパワーを有し、更に光速に近い通射速度を有している兵器を搭載している艦とされる。つまり艦艇というより搭載兵器を指して第四カテゴリーと呼称する。二光秒は先の通り地球と月の距離を超える範囲である。第四カテゴリー艦艇を惑星の軌道上に一隻でも配備することで、惑星軌道に降下しようとする数十の艦艇を行動不能にして阻止できる能力を獲得できる。正に、惑星の守護者であった。そうした意味で第四カテゴリー艦は特別であった。
第四カテゴリー兵装の具体的な例として、ゼルドシン共和国は中子切刃(中性子カッター)という核融合によって生じた大量の中性子を爆縮レンズのように圧縮し中性子星と同じ密度の弾丸を作り、直径わずか一ミリほどの細い超重質量のビームを生み出す兵器を運用している。ビームと呼んでいるが、要するに中性子の弾丸を叩きつける銃であり、艦に命中すれば「スパッ」という音が聞こえそうなほどきれいに切断してしまう。更に、二十秒に一回程度の連続発射能力を持ち、連射性能が良好である。ただし、ビームという性質上、遠くの敵を巨大な主砲で正確に照準する必要がある。照準射撃と組み合わせてフィードバックは行っているが、照準射撃を感知することで回避も可能である。基本的に有効射程は二光秒くらいとされている。砲の見た目は臼砲のように太く短く装填装置や点火レーザー装置に反射ミラーなどが大掛かりである。兵器重量は単体で三百トンもあり非常に重たい。重巡洋艦に一門、戦艦に二問を搭載していることが多い。
もう一つ、第四カテゴリー艦艇に区分される兵器として、クライソォワ連邦の誘導重イオン砲がある。誘導能力を持った重イオン砲であり、照準射撃としてまずは幅の広い陽電子ビームを宙域に照射。対消滅そのもの影響による電子消失と、発熱で生じる装甲材料のベータ崩壊によって敵艦が帯電していく。ちなみに、帯電した艦内にいると髪の毛がハリネズミのように逆立つと言われる。この帯電した艦艇に向けて陰イオンを含むイオンを放出する。イオンは先のとおりクーロン力により徐々に広がるが、帯電した敵艦隊に近づくにつれ今度は吸引力が働き収束する。そして、艦の広い範囲の表面装甲を面白いほどきれいにはぎ取り、艦骨までがむき出しになるほどのダメージを与えることができる。ある程度の誘導力があることで有効射程は最大で六光秒と長いが、反面イオンビームは互いに干渉するため一斉が射撃できない。これによって戦術的運用が難しい兵器でもある。重イオンビームの加速や生成は中性子ほど難しくないため主砲自体は大口径のレーザー砲と大差ないが、先の複数同時発射ができない仕様上、戦艦に大威力の主砲を一門搭載し、各惑星に二隻程度を置いて惑星防衛にあたる運用が多い。
第四カテゴリー兵器は多種多様であるが、現在ヒリア帝国の保有する第四カテゴリー艦艇はクライソォワ連邦の中古艦ロマノフ級のみである。同盟国の好で供給されているが、近年は惑星開拓速度が上昇したため、防衛に必要な艦艇数が増加している。防衛においては第四カテゴリー兵器の国産化が急務であった。しかし、現状、研究室レベルで成功していても、宇宙空間での装備開発ができるほどの技術力を獲得できずにいた。ドロイドの庇護下で国民に好きな仕事を好きなだけできるように配慮しても、わずか六百年ほどの歴史しかないヒリア帝国ではまだ列強となるだけの開発力は発揮されていないことが現状であった。
「ひとまず、諜報省の調査を信じるならば、コミュニエロー政府の軍拡にゼルドシンは関与していないと言える状況のようね」
「はい。諜報省側でもゼルドシン共和国による技術供与などは確認しておりません。搭載武装も標準的な遠近両用レーザーカノンと近距離攻撃用の電磁砲が確認できます」
「オーバードライブして遠路はるばる攻めてくるような武装ではないわ、当面は脅し。ゼルドシンが折れて第四カテゴリー艦艇を売りつけたりする場合に本格的な脅威が始まることになるわけね」
「まぁ、懸念があるとすれば、中継航路の遮断があり得ます」
「シーレーン攻撃はあり得るわ。彼らの取りうる最善策ともいえるわ」
ヒリア帝国は我々の住む地球と同じ天の川銀河にあるが、地球とは反対側の端に位置している。後背地に国家はない。他の銀河国家と交易や軍事支援を受けるにはコミュニエロー近郊の空域を通過するのが最も近道であった。クライソォワ連邦はゴールデンリング連星の南側(ここでの方位は磁極の向きではなく便宜的に割り当てられた銀河上の座標系であり地球が北方向とする)を、ゼルドシン共和国へ行くにはゴールデンリング連星の北側を通過する必要がある。
そして、この時代の恒星間航行技術であるオーバードライブの特徴的な性質もこの補給地点の重要度を高めている。オーバードライブは跳躍距離の約三乗に比例して消費エネルギー量が増加するという特徴がある。コミュニエローまで五光年、コミュニエローからクライソォワ連邦まで七光年。一気に十三光年の距離を跳ぶ場合と、一度コミュニエローを経由して跳ぶ場合では四倍近くエネルギー消費が異なってしまう。ただし、
「こういうデメリットはない方が良いくらいの損害と言えるわ」
宇宙は広く星と星の距離は非常に遠い。ヒリア帝国に限らず惑星間交易で得られる利益はあまり多くない。どんな国家も惑星内での自給自足が原則であり、生活必需品や生産資源などを惑星間交易に依存することはほとんどない。この時代、約一キログラムの荷物を十光年先に輸送するのに百万ジェブ(1ジェブ=1円)相当のコストがかかる。人一人がヒリア帝国領内を移動するにも数千万ジェブ単位の航空旅費が発生するため、たとえ生活費のかからないヒリア帝国でも惑星間旅行は人生のうちにそう頻繁に経験することはない。故に、惑星間航路は細く、旅費が高くなれば確かに観光客は減るが、惑星内観光に比べれば微々たるものである。結局のところ、買うのは軍艦か兵器くらいであり、それらもほとんどが自給できている現状では戦争してまで固執するようなことではなかった。内政および準軍事的な判断からすれば、リザの発言の通り、
「正直、防衛に徹して無視しても良いレベルね」
しかし、この地域の外交や兵力均衡の考え方からすれば同じ結論にはならなかった。これはヴァルトヴェルト中佐の言う通り、
「アイゼンフローラ中佐。準軍事的にはその判断に同意いたします。しかし、世界はもう少し複雑です。我々とコミュニーで交戦状態になると言うことは、その後背の同盟国であるクライソォワとゼルドシンの緊張も高まる。まして、コミュニエローの政府は賢明とは言えないためこの近隣空域の火種になりかねない存在です。ここが不安定だと我々が大戦争の火種となる可能性もあるのです」
リザは少し膨れながら渋い顔をする。
「そうなりますよね…。大佐、交戦シナリオは考える必要がありそうです」
「仕事だからな。そこに異論はない。ただ、早期終戦を目論むなら第四カテゴリー艦艇の不足だけは懸念させてもらう。後は、諜報部にも頭を捻ってもらう必要があるだろう」
リザ中佐もモロコフスキー大佐も軍人であるが、彼らは非常に戦争を嫌う。古今東西において軍の目的は一貫しており、武力とは使わないために存在するのであって、平和を脅かす存在に武力の行使を思いとどまらせるための抑止力以外で軍隊を使うのは良策ではないのである。一方で、諜報省のヴァルトヴェルトは少し違っている。
「もし、この三年内に戦争が起こるなら、あるいはゼルドシンの内密な協力も得られるかもしれない」
「どういうことだ」
「現ゼルドシン共和国極地方面のチャン総督は、コミュニエローの解体と分割統治を望んでいるからだ。彼の総督としての任期が五年。それまでに決着がつけば、ヒリア、クライソォワ、ゼルドシンの三か国で丸く収められる」
「それは、新しい情報だな」
リザの目つきは鋭くなる。
「三年後に開戦したとして、二年で終戦させるには、相当に強い打撃が必要ね」
「そうだ、アイゼンフローラ中佐の言う通りで、艦隊戦でのドンパチや、現地民のデモ行進程度では済まないぞ」
軍事的には難色を示されているが、ヴァルトヴェルトは冷静に答えた。
「はい、承知しております」
「なるほど、案があるなら聞こうか」
「ありがとうございます大佐。では、お言葉に甘えて外務省の要求を伝えさせていただきます。一つはこの地の超兵器であるPLDの破壊。もう一つは、伴星のシルバーリング星系の領有です」
しばらく無言が続くがリザは率直な回答を言う。
「軍事的に不可能な話ではないわ」
コミュニエロー共和国の存在するゴールデンリング(金環星)は連星系である。伴星の名前はシルバーリング(銀環星)。そして、その伴星にも一つだけ居住可能惑星が存在する。
「私も聞いている。ヒーサローに独立の動きがあるそうだな」
ヒーサローは現在、人口五千万人程度で開発が進んでいない惑星であるが、居住可能惑星の中では最大級のサイズであり表面重力も地球に比べ四割も強い。大きさと連星系特有の潮汐力により地殻活動が活発で惑星内部のマントルは常にかき回されている。加えて、地表面はほとんどが水に覆われている。惑星の各所には海底火山が存在し、強力な対流が自然発生している。この対流にタービンを設置して発電を行うことで優秀な補給拠点となる。彼らヒーサローはコミュニエロー本星のシャインレイからも遠く、ナノマシン汚染もない。
「要するにヴァルトヴェルト中佐の案は、戦争に乗じてヒーサローを独立させてヒリア帝国傘下に編入するという魂胆ね。ここに艦隊基地を設置してゼルドシンとの正面戦争の拠点にすると」
「ご明察です。ほとんど戦わずして拠点を得られるなら、ありえない話ではないでしょう」
「なるほど、ヒーサローがこちらに着くという前提ならば、我々の艦隊がオーバードライブして、なおかつコミュニエロー政府と戦うことができるだろう。だが、もしヒーサローがなびかない場合はどうする」
「ヒーサローの気分で我々の存亡が決まるのは確かにリスクの高い話です。諜報省も事前にヒーサロー地下政府と交渉はしており、詳細な条件をもらっています」
ヒーサロー地下政府とは、実はヒーサロー総督府のことである。国家に委託された統治機構がそもそも国民のために謀反を考えるほどにコミュニエローという国家は行き詰った国家なのである。そして、彼らの提示した詳細な条件は二つ。超兵器PLDの破壊。シャインレイ内にいるヒーサロー人の救助。
「さっきできると言ったけれど、難易度は高いわ」
「ヒーサロー人の救助は我々諜報省の方が得意だと考えておりますが、PLDについては知恵をお借りしたい所存です」
「PLDについての情報はあるか?」
PLDはゼルドシン共和国がコミュニエロー近隣惑星を威嚇するために建設した人工惑星である。直径は百二十七キロ(地球の百分の一)くらいの大きさを誇る惑星破壊砲である。惑星全体が核融合炉であり、高いエネルギー密度により惑星の比重が極めて高い。限定的ながら移動するための推進装置とリアクションホイールを有する。
「南極点にある砲エリアの直径は二千三百メートル。巨大な中性子カッターともいえる」
白いコンクリートの惑星に大きなほくろ状の部分がありこれが主砲と呼ばれるビームの絞りである。この主砲からは核融合反応を切り替えて生じる中性子ビームが惑星に向けて放たれ、この照射を受けた惑星はおよそ数日で崩壊すると言われている。
「いやいや、惑星崩壊は言い過ぎだろう」
「失礼しました。正確に言うなら惑星上の生物は数日で死滅します」
「そうよね、中性子だものね」
PLDから発射されるのはほぼ無色透明の放射線である。派手な光はないが、カメラで撮影すると白い斑点があちこちに映る。数シーベルト(直ちに影響あるとされる放射能)の貫通性の高い中性子ビームを数時間から数日にわたり惑星に向けて照射することで、惑星中の人間や動物を数日で半減させることができる。
「これ、嫌な死に方するやつよ」
このレベルの放射線を浴びても外傷はできない。しかし、放射線に敏感な腸管細胞が全滅し被爆からすぐに血便が出る。その後栄養の吸収が全くできなくなり点滴などで栄養を補給しない場合は食事をしていても数日で餓死する。
「これ、今も稼働しているの?」
「いえ、ライブの聖地として整備しているようですが基本的に無人です」
リザの眉間にしわがよる、言っていることの意味が理解できない。
「ここ、軍事拠点よね?」
「最初に聞いたときは私も信じられませんでしたが、PLDの秘匿呼称はパーティースターです。徹底的な検閲主義を貫き、事実を嘘で塗り固める彼らの政策の影響で、こういった機密情報がうまく後任に伝達されなかった可能性があります」
「現総帥の就任は百年以上も前よね?」
「アイゼンフローラ中佐、言いたいことはわかる。向こうの総帥は頭が悪いのは事実だが今はそういう議論の場ではない」
「失礼しました。すぐに使えないとは言っても改修すれば使えるならそれは脅威よね」
「そうですね」
「あぁ、アイゼンフローラ中佐の言うとおりだ」
「なら、本題の撃破方法だけれど」
リザは、現時点で想定できるいくつかのプランを説明する。そのうち、最も実効性の高い案を基本にして作戦を練ることになった。
「惑星周辺の航空優勢については機動部隊による掃討作戦が妥当だろうか。もっといい方法があれば探すことになるだろう。とにかく、第一波で軌道防空システムを破壊。第二波で敵の地上防空能力の四十パーセントの機能を奪う。そして、第二波攻撃にリアルバスター(重質量徹甲小惑星)をPLD衝突軌道に投入して中心を撃破する。これでどうかしら」
「なるほど、名付けてアイゼンフローラ計画だな。リアルバスター自体は事前準備が必要だが、今から行動すれば十分間に合うだろう。計画立案についても増員含め検討しよう」
「撃破の可能性について諜報省から異論はありません」
リアルバスターとは、近隣の直径五十メートル以下の小さな小惑星にタングステン弾芯と制御用のブースターを搭載した、簡易的な惑星破壊手段の一つである。主にテラフォーミングなどに利用され、氷河の融解や、活火山の意図的な爆破などに使用されている。人工惑星の構造上、リアルバスターの打撃によりPLDの外殻が破壊され核融合炉自体が機能を失うと想定される。強力なエネルギーを備蓄することにより地球の百分の一のサイズながら同等の重力を得ている。したがって、このエネルギーが放出されれば重力もなくなり分解してしまう可能性が高い。大気も霧散するため現在のコミュニエローがPLDを再建することは絶望的だろう。
「内容をまとめると、諜報部は今後とも外交努力による解決のサポートとより詳しい情報収集をお願いしたい。攻略作戦自体はアイゼンフローラ計画を私が練る方向で検討しよう、参謀本部内での手続きは私が行うので、アイゼンフローラ中佐はすぐに計画の承認を進めてくれ」
「了解です」
「相変わらず判断が早くて助かるね」
「これが私の仕事ですから」
このように、大きな戦争計画は実施の数年前には計画が始まっているものである。たとえ出番が来なくても対策を考えておく必要がある。これが、平時の軍務である。