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銀河のヒリア帝国 戦争編  作者: 遥海 策人(はるみ さくと)
第十章 パーティー・ウォーズ
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運の悪いやつ(二回目のタイムリープ)

潜入に際して、シュバルトシトラはナディアの協力を得ることにした。

 人のために犠牲になるのも悪くはない気がしてしまったが、気を取り直すことも重要である。特に、あなたが時間遡行能力を手に入れた場合は気を取り戻すことができるだろう。

 意識が帰ってきたシュバルトシトラはまたハチドリのコックピットに戻っていた。

「そ、壮絶な戦いだった」

「はっ、どうされたんですか? 汗だくですよ!」

 隣に座るのはナディア。

「どうやら戻ってきたみたいだ」

「そ、そうなんですね。私には何も実感がありませんが」

「そうだろうな、とにかく一回目は失敗だった。もう一度行ってくる」

「はい、了解です」

 さて、今回もエミリーに会うところまでは同じである。つまり、途中まではさっきと同じ行動をすればよい。

 ただ、シュバルトシトラは一つ知っておきたいことがあった。それはリアルバスターへの最適ルートの算出である。そのため、今回はナディアについてきてもらうことにした。

「あの、相談よろしいですか」

「はい」

 シュバルトシトラは敵地への潜入が必要だと説明することにした。今回の潜入を敵艦隊の位置を特定する足掛かりにしたいとしたのである。

「はい、わかりました。そのために我々は反政府組織を名乗れば良いんですね?」

「そうだ。名前は『ヒリア革命軍~真なる自由の追求者~』としよう」

「は、はい」

 ナディアは前に向き直り、ひと呼吸する。それから、やっぱり振り向いてシュバルトシトラに質問する。

「あの『真なる自由の追求者』の部分って必要ですか?」

「違う『~真なる自由の追求者~』だ! 必要に決まっているだろう!」


 飛行を開始して、しばらくすると。

 《チェック・シックス。チェック・シックス(真後ろに注意)》

 今回もこの警告が鳴る。

「ドクトルの言う通りですね。後方から追跡されているようですね。後方IRST起動」

 モニターにはエコーと共に、機種判別にタイプ・シックスと表示が出る。

(間違いない、この時の機体にエミリーが乗っている)

「予定通りこちらから呼びかけを行います。広域回線にアクセス」

 《後方の機体に通達、我々に敵意はない。我々は反ヒリア組織~真なる自由の追求者~である。ヒリア帝国打倒のための情報を共有したい。繰り返す…》

 《こちら、コミュニエロー共和国親衛隊所属機。コールサインはタイプ6。貴機は惑星着陸可能か?》

 《ポジティブ。千六百メートルの滑走路であれば着陸可能です》

 《了解した、TACAN(電波航法)座標、102X。指定座標に向かえ》

 《タイプ6。こちら、コールサインはデュラスベルト01、座標確認。大気圏突入の許可を願う》

 《デュラスベルト01。こちら、タイプ6。管制はパーティスターアプローチに移管する。周波数は…》

 今回の大気圏突入は緩やかである。軽く翼面積が広いハチドリの減速は簡単である。一方、タイプ・シックスは相変わらず鈍重で減速が難しいらしい、同時に大気圏突入を始めるとハチドリをグングンと追い越していく。


 ここからはコミュニエロー軍のパイロットがいなくなる。したがって、エリックとナディアのどちらかがタイプ・シックスの操縦をしなければならない。

「タイプ・シックスの操縦は初めてですが…、アビオニクスはクライソォワ製ですね。なら最適ランデヴー軌道を算出できます」

「なるほど、なかなか詳しいな」

 ナディアの説明に対して最初は食いついていたエリック王子だが、

「君はフライト何時間くらい?」

「私ですか? 一万四千時間くらいです」

 エリックはナディアのフライト時間を聞いてからマウントをとろうとするのを諦めたようだった。そして、最終的にはナディアが自ら操縦かんを握ったことで到着時間の劇的な短縮が可能となった。およそ十時間でリアルバスターへ到着する。この距離ではPLDを視認することは困難だった。

「さっそく自爆に取り掛かりましょう」

 先ほどと同じようにコンソールを起動するために鍵を回し、自爆を始める。そして、自爆の作業に入る。

「あの、ドクトル?」

 ナディアがこっそり耳打ちしてくる。ヘルメットがコツンとぶつかるほどに近い距離である。

「あぁ、なんだい?」

「本当に自爆するおつもりで?」

 忘れていたが、彼女は敬虔なヒリア帝国軍人である。さらに言えば、彼女はリアルバスターが破壊されたときの損害をよくわかっている。当然ながら自爆という選択に対しては体を張って止めに来るだろう。

「い、いやっ、自爆しないよ。いったんここで自爆するふりをして、彼らを安心させる算段だよ」

「ふーん」

 彼女の目つきはまさに、女が疑っているときの目つきである。

「ドクトルは任務の主目的をお忘れではありませんか?」

 このミッションの主目的はシュバルトシトラにとっては国外逃亡のチャンスでありそれが主眼となっている。しかし、ナディアにとっては隠れている敵艦隊の行方を探し出せばそれでよい。「たぶんここの空域に隠れている」という不確実な推測から、「確実にこの空域に駐留している」という確定情報に変わればそれだけで良い。しかし、ナディアからすればシュバルトシトラの行動はその艦隊の場所という情報に近づいているようには見えなかった。

「これは、何度か時間遡行を繰り返した結果ここでの活動の意味を知る必要が出たから今回の行動をしているに過ぎない。いわば、このフェーズは情報収集回に過ぎないんだ!」

「ふーん、でも、今二回目ですよね? もうそんなに調べたんですか?」

 ナディアは疑いながらも、

「仕方ないです。今回は信じましょう」

 と、疑念を呑み込む。

「二人とも、そろそろ自爆できそう?」

 このタイミングでエミリーが現れる。

「それが、一つ問題があって」

 そして、くじ引きするという流れがまた始まる。ここでエリックがはずれを引いて残るルートを引けばよい。更に今回は、ナディアもくじ引きに加わることになった。

「はいどうぞ」

 エミリーは最初にナディアにくじを引かせる。

「…」

「ナディア、残念だったわ。あなたは私たちに尽くしてくれたのに」

 くじには赤い印が付いていた。

「俺も、お前のことは一生忘れない」

 唖然とするナディア。しかし、シュバルトシトラは一つ問題に気づく。ナディアは手を背中に回して拳銃を握りしめていた。このまま自爆せずに全員を亡き者にでもする考えかもしれない。このままでは、エミリーまでもが殺されてしまう。

「まった! その役割は俺がやろう」

「えっ」

 予想外の展開に一番驚いたのはナディアだったようである。しかし、ドクトルが自爆のために手をかざしていると、ナディアが近づいてくる。

「ドクトル、いえ、シュバルトシトラ上級研究員。何をするつもりですか」

 ナディアは精悍な顔つきでドクトルに銃を向けた。

「ここは、俺に従って早く逃げるんだナディア」

「いえ、ヒリアの軍人としてそれはできません。このリアルバスターがなくなったらどうなるのかあなたはわかっているのですよね?」

 このリアルバスターが砕け散れば、上空の艦隊は突撃を中止、一度戻ってヒリアからもう一度リアルバスターを受け取る必要があるだろう。しかし、その間にPLDの防御は今よりずっと強固なものとなる。つまり、PLDの攻略そのものが困難となる。ナディアはヒリア帝国軍の代表としてそういう結末を止めようとしている。

「貴方のことは嫌いではありませんでした。しかし、これは看過できません」

 ヘルメットをかぶっていても彼女の涙が見えた。しかし、急にナディアは銃を落とし、跳ね飛ばされる。制御室の壁にはべったりと血が付き、重力の乏しい部屋に血の雫がプカプカと飛び散る。ナディアの体もバウンドし、天井のガラスに一度ぶつかるほど舞い上がった。彼女に向けて発砲したのはエリック王子だった。

「どうしてこの状況が?」

「返事がないからだ。あとは頼む。ちゃんと自爆しろよ」

 この男は平気な顔でナディアを殺した。そして、地に伏せる彼女の頭を踏みつける。血液が沸騰しているが、この状況でも彼女の苦悶の表情がわかる。ドクトルは何もできない自分を初めて無力だと感じる。

「うおぉぉーーーー」という感情がドクトルの心で響く。

(次こそは…)

 彼のタイムリープは三回目の失敗を迎える。

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