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国民の大反対

リザの提案に国民は大反対だった

「敵の愚策に救われたな」

 元老院とは、ヒリア帝国を形成する首脳たちの集まりである。「敵の愚策」と言ったのはネクランの首相であった。この、元老院での報告と調整は主にヴァルトヴェルトが行う。

「先の一斉出撃の件ですが、現時点では敵の愚策と思われます。しかし、こちらが油断する理由にはなりません。引き続き、全力を尽くして戦う所存であります」

「ヴァルトヴェルト総代表の言うとおりである。例え敵がウサギであろうとも全力を尽くすのが礼儀である。手加減などすればそれが弱みとなり、以降敵が押し寄せるようになるだろう。我が帝国は決して弱くないということを示すのだ」

「皇帝陛下。御意にございます」

 この戦争に関して元老院に直接の権限はない。戦争遂行に不備があるなら皇帝のみが更迭することができる。そして、皇帝はリザやヴァルトヴェルトの近くで状況報告を常に受けている。戦時に集中するため、当事者たちを保護するように初代ヒリア皇帝がこういうシステムを作った。制度設立から初めての対外戦争。ヒリア皇帝の先見性がうかがえる一幕であった。

「正式発表内容はこちらでお願いします」

 元老院室を出てすぐに秘書官が原稿を用意し待っている。

「さっそく国民に発表しよう」

「はい、準備はできております」

 放送室。マイクがこちらを睨み、古典的な赤いランプはまだ暗い。ガラスの向こう側で見守る人々の声は聞こえない。このマイクの向こう側、二百四十五億もの民が心配しながら発表を待っていると思っても、どうにもそういう雰囲気にならない。

「スタンバイお願いします。カウント、五秒前、三、二、…」

 リザは、わざと聞こえるように大きく息を吸い込んだ。しかし、最初に問いかけたのはどうやらヴァルトヴェルトに対してだった。

「私のこと好きかしら?」

 ヴァルトヴェルトは少し驚いたが、嘘をついても仕方ない。

「あぁ、好きだよ」

 何の話をしているのか? 国民は疑問に思っただろう。

「そう、じゃぁ私の案には反対してくれそうね」

 その言葉をきっかけに、リザは提案する。国民に向けてリザは、自身の身柄をもって敵の総帥に許しを請うことを国民に提案した。戦争など犠牲しか伴わない愚かな行為である。だから、私の体と引き換えに許しを請うてみるのはどうだろうか。ヒリアの国民は声を大にして言った。大きな声でそれはダメだと言った。普段はおとなしく無言を貫く国民たちが、帝国創始以来の大反対であった。不支持率九十六パーセントであった。今日この時、ヒリア帝国の徹底抗戦が決定されたのである。

「我々は国家の代表を失ってはならない。国民を守ろうと献身的な代表を見殺しにしてはならない。もう二度と、衆愚政治を繰り返してはならない」

 と、叫んだのである。

「さて、国民たちの不安は拭えたかしら」

 豪傑、と呼ばれる彼女は確かに魅力的な人だった。

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