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Rebelsー反逆者たちー  作者: MoCo
第1章
3/10

第2話 ――謎めいた笑い――

 足早に僕は青年の部屋からそう離れていない自室へと戻ってきた。

 見慣れた部屋の中は、少し散らかっており本棚がありそこにはたくさんの医学書が、綺麗にしまってある。

 木で出来た椅子に腰掛け、机の上で先ほどまとめたカルテを見直しながら綺麗に整える。


――時間がないな。


 ふと時計に目をやると、短髪の頭をかきむしりながら

「いつもいつも時間に追われてるな。この1年間ずっとそうだ。」と、ぶつぶつ言いながら準備を進め、姿見を見て身なりを整えた。さあ急がなければーー


 コンコンと鉄製の扉をノックする音が、廊下に響く。「桜井です。扉を開けてください。報告に参りました。」

 僕は、自室と青年の部屋以外のカードキーを渡されていないので、自由ではないのだ。

 扉の中から、中性的な声で「お前か、いま扉を開ける。」という声がした。


 中に入ると、大きな本棚に沢山の本が整えられており、鉄製の机と椅子がある。

 本棚の前で身なりは美しく、身長が165cmくらいで細身の研究員が、なにやら調べ物をしているようで、本を片手に立っていた。

 1年間ここに通っていても、青年の詳細はおろか、研究員の性別も情報機密情報ということで、知らされていない。

「研究員様、青年の様子をご報告に参りました。」と、いつものように丁寧に言った。

 研究員は本を本棚に戻すやいなや、鋭い目つきで僕を睨み、

「随分時間がかかっていたようだが、余計なことは言っていないな?」と、問い詰めてきたので「はい。目が覚めたばかりで混乱していたので、彼を落ち着かせていただけです。余計なことは一切言っていません。」と、落ち着いて答えた。

「そうかまぁいい。とにかくカルテを見せてくれ」と言い、まだ何か疑っている様子だったが、手を伸ばしカルテを催促してきた。

 僕がカルテを手渡すと、研究員はこちらに背中を向け、クククと肩が震わせながらカルテを読み始めた。


 (しばら)く時間が経過し、研究員はカルテを読み終え、本棚へ丁寧にしまいながら、

「ケケケケケッ。まだまだ不完全か、完全になれば……」と、怪しげな笑みを浮かべながら呟いた。

「研究員様ひとつお伺いしても、よろしいでしょうか?」と問いかけると、研究員はニヤリとした表情のまま首をかしげた。

「あの青年が、完全になればどうなさるおつもりで?」と尋ねると、ギロッと睨みつけられ、低い声で「余計なことは聞くな。お前は知らなくて良い。ただ、青年を監察するだけでよいのだ。わかったな。」

 それを聞き姿勢を正し「はっ、失礼致しました。以後気をつけます。」と答えたが、本の事を言い忘れていたことを思い出し、「あの、言い忘れていたのですが……」と発した途端、研究員は「なんだ?」と反応し、「本の持ち込み許可を出していただけないでしょうか?」と問いかけると、研究員は「ふん。あいつに本か……いいだろう、何冊か与えてやれ。」と、なにかもの言いたげだったが答えたので、「ありがとうございます。明日にでも渡します。」と言い失礼します。とその場を去ろうとしたが、去り際に研究員が「この闇医者が、ここの所長に拾ってもらった恩をわすれるな。」と、嫌みを言ってきたので、拳を握り締め、不満げな表情になる前に急いで施設をあとにした。

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