29、大阪旅行計画を立てます。
一旦部屋に戻ったイーリスと未央は、次回の『こちらの世界の人間も、日本に転送させる計画』題して『日本旅行計画』について、更に詰めて話し合うことにした。
「まずは、イリィが無事に日本、もとい大阪国に足を踏み入れられたことは、めでたいこっちゃ。」
「大阪…国、ですの?」
「せや、大阪は日本の大阪府やない、日本国の中央付近に位置する、大阪国や。日本の一部思たらあきまへんえ。大阪国は独立国や。大阪国民は皆そう思っとります。」
「なるほど。」
大阪が独立した自治国家だったなんて、今まで考えたこともなかったけれど、言われてみればどこかしっくりした。
大阪は確かに、中央政権の決定はそれとして、自分たちなりの文化と政治を貫いている気がする。
「では、計画名も大阪旅行計画にいたしましょうか。」
「うん、その方がええね。しっくりくる。」
なんだかゴールデンウィークの家族旅行計画みないになってきたけれど、これはこれで、分かりやすくて良かった。
「さて、では先ほどの実験の、成功部分て失敗部分を検討して、次回の計画を立てましょうか。」
「せやね。」
「今回私は未央に抱きついて移動したけれど、これはどの程度の接触、もとい距離で、同伴だと認めて貰えるのかしらね。」
「手を握る程度でええのか、それとも半径1メートル付近に近づいてるだけでええのかってことやね。」
「ええ、でもこれは、実際にやってみて確かめるしかないわね。」
「じゃあ次回は、ひとまず手ェ握るだけにしてみよか。」
「そうしましょう、それから重要なのは、一度に何人までの人数を同時に転送できるか、ですわね。」
「せやね、一度に三人いけるかどうか……。」
そこまで話して、未央は少し眉を寄せた。
「たぶん、いけないことはない気がすんねんけど、ちぃと気になっとることがあるねん。」
「なんですの?」
未央が気になることは何なのか、イーリスも気になった。
「今までの転送で、うちは必ず大阪の水辺近くに転送されてたんや、大阪城のお掘とか、淀川とか、大阪湾とか…。」
「そうなんですのね。」
確かにこちらの世界でも、未央は必ず噴水の近くから出現したため、ゲートと水は何らかの関係があると感じてはいた。
「せやけど、水の中に出てきてしもたんは、さっきが初めてだったんや……。」
「それって……。」
未央の言わんとしていることに、イーリスは遅ればせながら気がついた。
今まで未央は、常に水辺に出現はしていたけれど、水中ではなかった。
それが、前回は水中になってしまっていた。
今までと前回とで、一番の大きな違いは人数である。
「つまり、人数が増えるほど、水との接触率が上がる可能性があるのかもしれない、と思われるましたのね。」
「つまり、人数が増えたら、もしかしたら海の中に出てってしまうこともあるかもしれんっちゅーこっちゃ。」
「それは…、問題ですわ。」
もしもその推測が当たっていたとしたら、転送の際に皆で潜水服を着てから行かなくてはならないかもしれない。
「もしも人目のないところが出現地でしたら、私の翼で一気に水面上に上がることも可能ですが…。」
「水陸空対応可能て、どんだけカッコエエねん、ブルーインパルスがアムトラックの機能付けとるみたいやん。」
「松島のドルフィンに例えていただけるなんて光栄ですわ。でもあそこまでの高速飛行もできませんし、AAV7ほどの強度もありません。せめて虎に翼を付けたるごとし、程度ですわ。ていうか未央、自衛隊もお好きでしたのね?」
「自衛隊はロマンや。ていうか虎に翼言うたら、日本やったら天武帝即位の時が有名やろ、大海皇子も好きやけど、うちは水野忠邦がそう評された時のエピソードが好きやなー。」
「天保の改革の時ですわね。ていうか未央、あなたって本当に、全方位にオタクですのね。」
「褒めても何も出えへんで。そこまでやあらへん。ていうか通じるイリィも大概や。あ、アメちゃんいるか?」
「アメちゃんいただきますわ。私本当に、そんな未央が大好きですわ。」
「うちも、そんなイリィが大好きや。」
イーリスは未央が出してくれた。長崎堂の『虹のかけら』を口に入れた。
「美味しいですわ。」
飴と言うより、寒天菓子ではあるけれど、イーリスの属性に虹があることもあり、未央が大阪に行くたびによく買ってきてくれるのだ。
イーリスと未央は一緒に『虹のかけら』頬張りながら、フフ、と笑った。
未央とはこんなオタク話も、打てば響くように楽しくお喋りをすることができる。
まさか異世界に生まれて、こんな話題で盛り上がれる相手と出会えるなんて思ってもみなかった。
未央は聖女でありながら、イーリスにとってかけがえのない、唯一無二の親友でもあった。
「イリィ!異世界転送に成功したと言うのは本当か!?」
イーリスと未央が計画会議という名のお茶をしているところに、公務を切り上げてきた、ゼフィール皇太子が入ってきた。
「ゼフィール様、お早かったのですね。」
ゼフィール皇太子は、この国の皇太子であり、私の夫でもあるイケメンだった。
「まあ、まずは落ち着かれてください。」
イーリスはゼフィール皇太子の口にも『虹のかけら』を放り込むと、まずは皇太子の分のお茶も淹れたのだった。




