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暴食の粘魔  作者: お猫様
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39話

武器屋を見た後、商店街を冷やかしていたら暗くなってきたので、宿に入った。

1人部屋を2つとるのは無理だから2人部屋にしたけど、それでも残りの所持金は銅貨2枚しかない。


明日の依頼で銀貨3枚が手に入るけど、それでも明日の宿代で消える事になる。

食事代が必要ない僕達ですらこうなのだ、他の冒険者はどうやって生計を立てているんだろうか?


まあ、大方ダンジョンが飯の種だったのだろう。

この町、冒険者減るだろうな。

幸い、この町は近くはモンスター多発地帯というわけでもないし、武装都市だけあって兵力は結構なものだ。モンスターはどうとでもなるだろう。


ただ、兵力をモンスター退治に割かなければならなくなる以上、弱体化は必至だろうね。


僕も、グリア山のふもとの村、ケルド村の方に移住するのもアリかも知れないな。

向こうは最近もモンスターが多発しているらしいし、わざわざファブレ(こっち)に依頼が回ってくるって事は、向こうにはCランク以上の冒険者は少ない、もしくは居ないはず。


こっちよりも、いい依頼があるかもしれない。

まあ、向こうに行ってみて、実際に見てみないと分からないけどね。


そう考えながら部屋のベッドに座っていると、

「すみません...少し、いいですか?」

もう1つのベッドの方に居たネストが、意を決した様子で声をかけてくる。

「貴方は...どうして...どうして、私を助けてくれるんですか?」


どうして助かるか、か。

まあ、最初の理由は面白い物を見つけたから、という興味本位だったけど、今一番大きいのは、

「僕に似ていたから、かな」

そう、似ていたから、同じ種類の人間だと思ったから、同類なら僕を置いていかないと思ったから、助けたのだ。


「そうなん...ですか?」

僕の答えを聞いて、不思議そうに聞き返してくる。


「そうなんだよ。僕も少し前までは、ひどい扱いを受けていてね」

ネストにはおどける様に言ったけど、僕を虐めて、挙句僕を殺した奴等の顔が頭に浮かび、苛立ちがこみ上げてくる。


浮かんだ記憶を振り払うように頭を振って、自分に大丈夫だと言い聞かせる。

前世と違って、今の僕は強い。あんな事になるはずがない。

敵が居ない、なんて言うつもりは無いけど、一撃で殺されでもしない限り、死ぬことは無いだろう。


僕が自分を落ち着かせようとしていると、

「あの、どうしたん、です、か...?」

苛立ちが表に出ていたのか、ネストが怯えた様に話しかけてきた。


「何でもない。ちょっと、嫌なことを思い出しただけだよ」

僕の返しを聞いて、まだ多少怯えている様だが、それで納得したようで、それ以上訊いてくることはなく、会話が終了した。


一度会話が終了すると、それ以上会話が生まれない。

ネストは僕の言う事を聞いてくれるけど、この辺はまだ距離を感じるな。

まあ、僕はネストをできる限り大切に扱っているつもりだけど、そう簡単に信用は得られるモノではないだろう。


そんな事を考えている内に、ネストは寝てしまったらしい。

それじゃあ、武器を作ってみよう。


ネストには僕が人間じゃないのは知られているけど、ネストが僕の事を信頼していないように、僕もネストを完全に信頼してはいない。

奴隷だから守秘義務などは教え込まれているだろうけど、そもそも僕は正式な持ち主でもないしね。


もしネストに逃げられたりして、僕が人外なのがバレるだけなら、討伐されそうになっても撃退するなり、逃げるなりできる。

でも、僕の手札が割れていたら、それすら厳しいかも知れない。


僕に対する討伐隊が組まれた場合、体に物を収納できる能力がある、という事が知られているのと、不定形の体を持つ、という事が知られているのとでは、訳が違うだろう。


まあ、それは置いておいて、今回作るのは手甲だ。

誰も見ていないのを確認して、体を操作し始める。


-数時間後-

いやー、今回もなかなかいい物が出来たな。

完成したのは、禍々しくも美術品の様に美しい、一対の手甲だ。


肘程まである黒い細身の手甲にはルーン文字が並び、茨が絡みついている。

手のひらには薔薇を模した魔方陣が刻まれ、指先には鋭い爪があり、鋭利に輝く。


手甲のデザインは、大鎌に合わせたモノにしてみた。

大鎌同様、装飾過多にも見えるけど、これでも動きの邪魔にならないように考え作ったから邪魔にはならない。


それじゃあ、納得のいく物が出来たところで、魔化タイムだ。

手甲を並べて机の上に置き、闇魔法で魔方陣を描いて、魔力を流す。


魔化が終わると、やっぱり禍々しさが上がった。

大鎌同様、黒は黒曜石の様な漆黒になり、刻まれたルーン文字と魔方陣は淡く緑色に発光している。


そして肝心の能力は、まあ、便利そうかな。

1つ目は、爪から毒を発生させる効果。

2つ目は、茨を触手のように操る効果だ。


手甲を両腕に装着して魔力を流すと、爪から液体が滲む。

茨の方は、意識を向ければ、絡まっていた茨がほどけて、自由に動かせるようになる。長さは...3m程か。操作感は悪くないな。


新しい武器は完成したし、後は手甲の扱いでも練習しながら、朝まで時間を潰すとしよう。

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