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暴食の粘魔  作者: お猫様
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38話

ゴブリンの群れの討伐依頼を受けたわけだけど、グリア山、正確にはそのふもとの村まではそれなりに距離がある。

この世界では町や村を繋ぐ道なんて便利ものは無いから、余程土地勘がある人でもない限りは、馬車を使わずに移動するのは無理だろう。


それで、馬車を使って移動すると、大体半日かかる。

今が昼過ぎだから、今から移動を開始すると、着く頃には暗くなる。

それだと、余計な時間がかかってしまう。


この世界で携帯できる明かりと言えば、光源用の魔具と、ランタンくらいのものだ。

どっちも、精々自分の周りを照らす程度で、お世辞にも戦うのに十分な量の明かりとは言えない。


それに対して、モンスターのほとんどは夜目が利く。

かく言う僕も、月明かりだけで視界を確保できるぐらいには、夜目が利く。

夜はモンスターの時間な訳だ。


実際、一般人は勿論、冒険者の中でもCランク以下は、基本的に夜間に町などの外に出ることは無い。


まあ、Cランクでも暗闇で活動できる手段があるなら普通に外に出るし、Bランク以上になると、魔具なり魔術なりで、大抵は暗闇なんかでも活動できる手段があるけどね。


でもやっぱり、夜間に外に出るのは一部の例外だ。

さらに言えば、僕は冒険者としては新参者だ。わざわざ夜に外に出たりしたら、要らないことを勘繰られる可能性が高い。


だから、今から向こうに行っても、どうせ活動できるのは明日だ。


それだったら、向こうで宿を探すのに時間をかけるよりも、こっちで一泊して、明日の朝移動を開始するのが賢いやり方だろう。


そうすると今から少しの時間暇になるけど...まあ、店でも冷やかして時間を潰すか。


この町の構造は、大きな円形の城壁の中に町が形成される形になっていて、大きく3つに分けることができる。


1つは街の内側に位置する内区と呼ばれる場所だ。

ここは主に貴族や豪商なんかの金持ちが住んでる区画で、店もそれに応じて高級店ばかりだ。

警備の兵士も多いから、他の場所に比べて治安もいい。


ついでに言うなら、より中心に行くにつれて、住んでいる人間の身分が高くなっていく。

まあ、外国やモンスターが侵略してくるなりした場合、中心に行けば行くほど、敵の攻撃が届きにくいし、当然と言えば当然か。


もう1つは内区以外の場所を指して、外区と呼ばれる場所だ。

ここは一般人が住んでいる場所で、ある程度区分されているとはいえ、雑多な場所だ。

僕が居るのもここで、治安は、可もなく不可もなくといったところだろう。


そして最後の1つは、退廃地区、まあスラム街の事だ。

ここは社会からドロップアウトした連中が住んでいる場所で、犯罪や違法薬物が横行している。

それでも残っているのは、失業者や無法者の受け皿を兼ねているからだろう。


実際、領主が本腰を入れて実行するなら、この町に常駐している兵力だけで、スラム街を潰して更地にする事も可能だろうしね。


まあ、こうしてこの町の区画分けを挙げてみたけど、選択肢は実質、外区だけだろう。


内区はそもそも一定以上の身分の人間しか入らないようになっているし、退廃地区は面白い物があるとは思えない。


と、いう事でやってきたのは外区の商店街だ。

商店街は名前通り様々な店が並んでいる場所で、ここなら何か面白い物もあるだろう。


数ある店の中から最初に選んだのは、武器屋だ。

冒険者と言えば、やっぱりこういう場所だろう。


店の中に入ると、1番に目に入るのは、やっぱり所狭しと置かれた武器の類だ。

比較的高そうな物は壁に掛けられていて、安そうなものは纏めて木箱に入っている。

壁にかかってる物には、いくつか魔化されたものがあるな。まあ、見る限り強力な物ではなさそうだけど。


僕達の他には冒険者であろう人間が3人、武器を見ている。

とりあえずは、邪魔にならない程度に武器を見てみるか。買う予定はないけど、有用そうな武器があれば、自作してもいい。


僕が作れるのは剣や鎧と言った物だけで、魔術の発動を補助するワンドやロッドなんかは特殊な素材が使われているから、僕には作れない。

だから作る武具は僕のものになるだろう。


ただ、作るにしても僕のメイン武器は大鎌があるから剣なんかは必要ないし、単なる物理攻撃が効かない僕には、下手な防具は邪魔になるだろう。

だから、作るなら大鎌と併用ができて、動きを邪魔しないものだな。


そうだな、手甲なんていいんじゃないか?着けても大鎌を両手で振るえるし、動きの邪魔もしない。

後は、同じ理由から、角指と言う棘のついた指輪や、服の袖に仕込むタイプのクローも良いだろう。


こういう武器を仕込んでおけば、モンスターとしての能力が使えない状況、例えばギャラリーが居る状態での戦いとか、で役に立つだろう。

そうだな、後で何か作ってみる価値はあるだろう。


さて、武器は十分満たし、次は何処を見に行こうか。

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