37話
僕が稼ぐ方法を考え始めてから5分くらい経ったとき、僕の番号が呼ばれたので、受付に向かう。
「鑑定が終了いたしました」
「それで、いくらになりましたか?」
そう、大事なのは値段だ。
流石に安く買い叩かれる事は無いだろうけど、もし、魔鉱石の価値が低下してたりしたら、何か他に稼ぎ方を考える必要がある。
「はい、50が1つ、30が2つ、20が1つですので、合計で銀貨1枚と銅貨1枚になります。売却なさいますか?」
銀貨1枚と銅貨1枚か…まあ、だいたい予想通りの値段だな。
まあ、売っても問題ないだろう。
「はい、売ります」
僕の回答を聴くと、受付は魔鉱石をしまい、代わりに銀貨と銅貨をそれぞれ1枚づつカウンターに置く。
置かれた銀貨と銅貨を鞄にしまって、商業ギルドを後にする。
とりあえず、これで僕の所持金は銀貨2枚と銅貨5枚だ。
これで今日泊まる分の金は稼げたし、何をしようか。
そうだ、とりあえず一度冒険者ギルドに行って依頼を確認した後、ネストの戦闘能力を測りに行こう。
ネストの戦闘能力を測るのはどうせ近いうちにやらなきゃいけない事だし、せっかくなら依頼を受けて、金も稼ぎたい。
ネストの冒険者プレートの発行が終わっているかもしれないしね。
そういう事でやってきたのは冒険者ギルド。
今の時間は昼時だし、ネストには昼ご飯をあげたいところだけど、モンスターは最低限魔力さえあれば、餓死したりはしない。
所持金が少ない以上、必要の無い事に金をかけたくない。
食事は宿で出る朝食だけにして、それ以外は何か仕事をしたりした時にでいいだろう。
まあ、今は金が無いから、それも難しいけども。
そんな事を考えなが冒険者ギルドに入ると、受付の前を通った時に、受付嬢に話しかけられる。
何か問題でも起こしたっけかな?そう考えながら話を聴くと、僕じゃなくて、ネストの方に話があったようだ。
どうやら、ネストの冒険者プレートの発行が終わったらしい。
そして気になるランクの方は、Cランクみたいだ。
でも、ネストが試験で見せた魔術は、作ったスケルトンが瞬殺されたのを見たら分かる通り、そこまで強力なモノじゃない。
あのスケルトン1体の肉体能力は、精々一般人と同程度で、痛覚が無いなどの点を考慮しても、そこらの雑兵にも勝てない。
1体召喚するのにネストが消費した魔力は5程度だから、大量に作る事ができる事を加味しても、強いかと聞かれれば、微妙な部類だ。
なんなら、同じ消費魔力でも、ファイアアローなんかの方が強いまである。
しかも、負魔術は、習得にはかなりの才能が必要な上位属性なのに対して、ファイアアローは火属性、魔力持ちなら、努力次第だけど、誰でも習得できる。
そして、大概の魔術師は、1つしか属性を扱う事が出来ない。
だから、大抵の魔術師は、私生活から戦闘まで、様々な用途がある火属性を習得するのだ。
だから、正直言って、なんでギルドがネストをCランク判定したのか分からない。
まあ、どの属性も使いようと言ってしまえば、その通りだし、ネストは純粋に魔力量が多いから、そのおかげかも知れない。
というか、低いならともかく、ランクが高いに越したことはないし、深く考える必要も無いか。
という事でネストにプレートを受け取らせようと思ったら、何故かネストが怯えた様に、僕の後ろに隠れてしまっている。
たしか、あの不愉快な2人の男に対しては、怯えてはいなかった筈だ。
もしかしたら、昔女性にいじめられていて、苦手意識があるのかも知れない。
だとしたら、より親近感を感じる。
まあ、今はそんな事を言っている場合でもないし、代わりに僕がプレートを受け取って、ネストの首にかける。
それで、ここに来た目的の依頼だけど、やっぱり、近場だと旨い依頼はそうそうない。
ただ、今回はネストを連れていくことも可能だし、多少距離があっても問題ないだろう。
これなら多少条件は広がるし、これなら悪くない依頼もある。
そうだな、例えばこれだ。
依頼内容はゴブリンの群れの討伐、適正ランクはC以上、場所はグリア山周辺、報酬は銀貨3枚、移動費は依頼主持ちだ。
グリア山というのは、ファブレから見て南に位置している大きめの鉄鉱山なんだけど、少し前からモンスターが発生していて、採掘ができていないらしい。
ちなみに、ファブレで使われている鉄はここからとれたものが多いいらしいから、ダンジョンが無くなって、鉄鉱山を失った今、ファブレは没落するかもしれないね。
まあ、そんな事は正直今はどうでもいい。
問題はこの依頼の危険性だけど、まあ問題ないだろう。
わざわざ群れと表記しているあたり、数はそれなりに居るだろうけど、所詮ゴブリンだ。
それなりの規模の群れなら上位種もいるだろうけど、強くても精々ゴブリンキングだろう。
ゴブリンキングのランクはCランクで、ランク的には僕よりも上だけど、相性を加味すれば、僕はまず負けない。
最悪僕がカバーに入ればいいだけだし、ネストの戦闘能力を測るのには丁度いいかも知れないな。
よし、考えてみても大丈夫そうだし、この依頼を受けるとしますか。




