35話
魔鉱石を作ると、言っても、別段特別な事をするわけじゃない。
適当な石などに魔力を込めれば作れたはずだ。
そうだな...込める魔力はどんなものにしようか。
市販の魔鉱石の魔力量は、最安価の物は10ほどで、値段は銅貨1枚ほどで、火をつけるだけの、前世で言うライターの様な魔具なら、10回ほど使える。
少し高価な物だと、10倍の100ほどで、値段は多少上下するけど、だいたい銀貨1枚ほどだ。
さらに高価な物だと、200ほどの物もある。
まあ、これくらいにもなると、一般で使われる事は少ないけどね。
とりあえず、込める魔力の量は、これを参考に作ってみるか。
そうだな...先ずは30くらい込めたのを1つ作ってみるか。
そう思って、適当な石を拾って、魔力を込めてみるけど、10も込めないうちに、石が砕け散ってしまった。
偶々今の石が脆かっただけかと思って、別の石でもう一度試してみるけど、また砕け散ってしまう。
あれ?僕の記憶では、これで魔鉱石が作れるはずなんだけどな。どうしてだ?
僕が食った錬金術師の男は、確かにこの方法で魔鉱石を作る事ができていたはずだ。
じゃあ、僕と錬金術師の男の違いは何だ?
種族?あり得る。人間は魔法を使えないないみたいだし、同じ魔力という名称でも、使っている力は別の物なのかもしれない。
いや、よく考えたらネストは魔術を使ってたよな?でもネストは人間を素材に使ったキメラだしな...
まあ、コレが原因だとどうしようもないし、措いておこう。
魔力量?僕の魔力量は人間とはかけ離れてるし、コレもあり得るかもしれない。
でも、魔力量が多くて何か問題があるのか?
もしかしたら、魔力の流し方とかがあるのか?
いやでも、それだったら錬金術師の男の記憶に残っていないのはおかしいしな...
いや、感覚的な物だったら僕には分からない。
魔力量が圧倒的に違うから、何か違う感覚があるのかも知れない。
例えば、魔力量によって、魔力を流す勢いが違ったりするのかもしれない。
とりあえず、試しに少しずつ魔力を流してみるか。
おお!コレはいけそ...あ、砕けた...どうしてだ?
さっきよりは多めに魔力を込める事はできたけど、20くらい込めたあたりでやっぱり砕け散ってしまった。
魔力を流す勢いを調節してもダメなら...そうだ、石に魔力の許容量みたいなものがあって、それ以上の魔力は込められないのかもしれない。
試しにもっとデカい石で試してみるか。
元々魔鉱石は、岩に魔力が蓄積して出来る物だしね。
ちょっと場所を移動して、岩でも探して試してみるかな。
移動を開始してから少しして、運よく岩がいくつかある場所を発見することができた。
岩の大きさは僕の腰ほどの高さまであるし、これならそこら辺の石よりは耐えてくれるかも知れない。
これだけ有れば多少失敗しても問題ないだろうし、先ずは1つ試してみようと思って、一番近くにあった岩に手を置いて、魔力を流し込んでみる。
おお!これはいけそうだ!
とりあえず、限界まで魔力を流し込んでみるかな。
魔力を流し続けていると、100ほど入れたあたりでひびが入り、200に差し掛かろうという辺りで砕け散ってしまう。
ただ、石と違ってただ砕け散っただけじゃなく、砕け散った破片のいくつかに、魔力が宿っている。
石の時と何が違うんだ?
もしかしたら、純粋な大きさの問題じゃないのかもしれないな。例えば、特定の成分が込められる魔力量が多いのかもしれない。
試しに魔力が宿っている破片の1つに、追加で魔力を流してみると、これは30まで流し込む事ができたけど、それ以上入れようとしたら砕けてしまった。
これは、特定の成分が込められる魔力量が多いという線が濃厚かもしれないな。
残りの魔力が宿っている破片は...4個か。
それぞれに魔力を流してみると、入った量はそれぞれ、50が1つ、30が2つ、20が1つだ。
値段にして、合計で銀貨1枚と銅貨3枚ってとこか。
いや、この値段は売値だから、買値はもう少し下かも知れないな。
それはともかく、今の所持金、モンスターの討伐報酬を合わせて、大体銀貨2枚と銅貨7枚か。
これでも1日の宿泊が限界か...ないはずの胃が痛い。なんで異世界に来てまで胃を痛めなきゃいけないんだろうか...
やっぱりネストの服に金をかけすぎたな...もう少し節約するべきだったのかもしれない。
でも、反省はしているが後悔はしていない。
というか、そんな事を言っている場合じゃないな。
割と真面目に金銭的にヤバイ。
とりあえず、今日はもうモンスターはこれ以上狩れそうにないし、魔鉱石もこれ以上の量は怪しまれる可能性が高い。
これ以上ここに居てもメリットは無さそうだし、砕け散った岩の破片をかたずけて、さっさと帰って、魔鉱石を換金しに行きますかね。




