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暴食の粘魔  作者: お猫様
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27話

とりあえずオークの子を孕んでいる女達と、オークに犯されていた女は、処分するしかないだろう。

どうせ意識はない様だし、ここまで育っているなら母体は助からない。

犯されていた女も、オークの種子を取り除く方法なんて、僕には無い。


意識こそない様だけど、こいつ等も人間だ。

オークは低能すぎたせいか暴食の効果を持ってしても記憶を手に入れる事は出来なかったが、こいつ等なら記憶を手に入れる事ができるだろう。


記憶を見てみれば、やっぱりこいつ等は聖王国から運ばれてきた奴隷だったらしい。

それも聖王国からって事は、違法奴隷だ。


まあ、そんな事より面白い物だ。


僕が見つけた面白い物とは、部屋の隅で壁にもたれかかる様にした倒れている、右腕のない少女だ。


身長や顔立ちを見るに、14歳くらいだろうか?

長い白髪は身長程もあり、伸ばしているというよりは、伸びっぱなしといった感じだ。

体は細く、血の気がない。腕や脚も、折ろうと思えば簡単に折れそうだ。

一応服も着ているが、服とも呼べない様なボロ布だ。


これだけ聞けばただのボロボロの少女だが、それよりも目を引くものが他にある。


顔は人形の様な無機質さを感じさせるが、この世界基準でも非常に整っている。

しかし、全身には痛々しい痣があり、眼球が潰れて、中の硝子体が流れ出し、奥の神経などが見えている。

体は所々穴が空いており、筋肉や骨が見え、穴には虫が蠢いている。


おそらくは、体が虫の巣兼餌になっているのだろう。


そして、こんな状態になってなお、彼女は生きている。

いや、虫が少女の体を巣だと認識しているために、虫に生かされている、と言った方が正確か。


更に、彼女は意識もある様だ。

僕が近寄った時に頭を上げたので、間違いないだろう。


そして僕の魔力を持った生き物としての第六感の様な物で、この少女は魔力持ちだとわかる。

それも結構な量の。


実はこの世界では魔力持ちの人間は少なくて、大体

100人に1人くらいなのだとか。

この魔力持ちってのは、大規模な魔術を使える者から、魔術がろくに使えない程度の者も含まれる。


なので、このレベルの魔力量の人間は、かなり珍しいと言っていい。

こんな状態になってなお生きているのも、無意識に魔力で体を強化しているからだろう。


オークが持って行ったって事は人型生物の雌か、高い魔力を持つ物のどっちかだと思っていたけど、まさか両方だったとはね。


僕としては、せっかく見つけたんだし、いい素材になるだろうし、実験ついでに助けてやってもいいと思っている。

まあそれだけでなく、奴隷として連れてこられていた者達の記憶を見たから、同じ奴隷である彼女を哀れに思って、というのもなくは無いが。

ただ、本人にも確認を取るべきだろう。


「僕は多分、君を助ける事ができる。君は、助かりたいかい?」

僕の問いかけに対して、少女は頷く。


「人間をやめてでも?」

次の問いかけに対しても、一瞬戸惑った様な素振りを見せたが、頷く。


それじゃあ、キメラ作りを始めようじゃないか。


先ずは、指を細く変形させて穴に入れ、中の虫を捕食する。

もし虫を残した所為で失敗したら嫌だし、彼女も嫌だろう。


次に、穴は僕の体の一部を詰めて塞ぎ、右肩には無くなった腕の代わりに、僕の右腕をくっつけておこう。

潰れている眼球も捕食してしまい、代わりに僕の目を入れておこう。


どうせ僕の腕や目は形だけだし、ちぎってもすぐに元に戻る。


本来ならキメラとして完成させるためには、パーツどうしの骨や筋肉は勿論のこと、神経や血管を繋げる必要があり、医学的な専門知識を要求される。


しかし、これは僕の体のパーツを使う事で解決する。僕の体は僕の思うように変形するのだから、形が合うように骨や筋肉などを形成すれば、後は繋げるだけでいい。


最後に闇魔法で魔法陣を描いて、そこに魔力を込める。

そうだな、2割くらいでいいだろう。


すると魔法陣が発光し、キメラ化が完了する。


痣は流石に治せないけど、右腕や眼球もしっかり繋がっているみたいだし、体に空いた穴も塞がっている。

目は眠そうで、僕の物を使ったからか瞳は黒色だ。

肌はかなり白く、髪や瞳の色とも相まって、まるで色を失った様な印象を抱かせる。


上手くいった様で良かったよ。

こんなに珍しい素材はそうそう見つからないだろうからね。


少女は自分の体をペタペタと触ったり、右手を動かして、自分の体を確認している。

そして確認が終わると、泣き出してしまう。その鳴き声には、呪詛も混じっている。

命の危機がない状態まで回復したからこそ、命を助けられたからこそ、今までの、誰に向けたらいいのかも分からなかった恨みが、溢れ出しているのだろう。

実際に体験したわけでも、見たわけでもない僕には、言っている事はわからない。


助けたのは興味本位だったし、実験動物程度にしか考えていなかった。

しかし、その自分の運命を呪う姿が、前世の僕に重なって見えた。

だから僕は彼女に感情移入して、哀れに思ったし、不憫に思ったし、何より助けたいと思った。


僕は、「大丈夫」と繰り返しながら優しく背中をさする。泣いている子供を慰める様に。

僕が泣いている時に、母がやってくれた様に。


少女は今までの経験からか、触れたときに一度体を硬直させるが、何かを感じ取ったのか硬直が解ける。


硬直が解けると、僕の方へ体を預け、更に泣き出す。

僕は人の慰め方なんてわからないし、そんな経験もないから僕の行動がどう作用したかは分からない。

それでも、その鳴き声は、さっきまでとは違っているように思えた。

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