26話
依頼を受注した後、少し調べ物をした後、やって来ましたメニル平野。
依頼主の行商人の話だと、メニル平野の中でもこっち寄りで小さな山になっている場所があるんだが、その山の近くを通った時に襲われたらしい。
そこまで地図で説明してもらったから、ある程度襲われた場所は分かる。
だから地図で説明された場所まで来たんだけど、オークはまったくいない。
それどころか、ここに来るまでゴブリンやスライムもほとんど見かけなかった。
まあそれもそうか。いくら最下級のDランクモンスターとはいえ、一般人には十分脅威になり得る。
それはともかく、実際にその場所まで来てみれば、馬車の残骸と、男の死体を二つ発見した。
ここで間違いないだろう。
近くには馬車の荷台に積んでいたであろう大きめの木箱、中身が入っている物は、全体のほんの少ししかなかった。
木箱の中身は野菜の類なんだが、そんな物をオークが持って行くとも思えない。
と言うのも、魔力の塊であるモンスターや魔人は、食料を必要としない。
ただまあ、種族によっては食べるのだが、それでも食べないと死ぬ、という訳でもない。
例えば僕の種族であるスライム系の種族は、無機物や有機物を問わず捕食することで、体の体積を増やすことができる。
しかし、オークは食事によるメリットは無い種族のはずだ。
それじゃあ、最初から木箱は空だった?
それは無いだろう。空の木箱を馬車に積む意味が無い。
オークが欲しがる様な物を積んでいた?
いやいや、それこそおかしい。
そもそも本能だけで動いているオークが欲しがるものなんて、高い魔力を持つ物かそれとも、人間などの人型生物の雌だ。
しかし、前者ならもっと厳重に管理されているはずだし、後者なら、箱に押し込めるくらいなのだから奴隷だろう。
もし奴隷だとしたら、聖王国からそれが流れてくるのはおかしい。何故か日本人的な考えが多い聖王国は、奴隷制度が禁止されているからだ。
まあ、それを考えるのは僕の仕事じゃあないか。
たとえ何を運んでいようとも、僕の知ったことではない。こういうのは関わらないのが一番だ。
僕の仕事は、この近くに居るはずのオークを殺すだけなのだから。
それと、オークは見つからなかったけど、痕跡は見つけた。
痕跡、それは足跡だ。比較的人に近い形だが、人間の物というには大きすぎるそれは、ここでオークに襲われたという事を考えれば、オークの物だろう。
見れば足跡は、すぐ近くの山にある洞窟まで続いている。
あそこがオークの巣穴で間違いないだろう。
洞窟に入ってみれば、鼻が曲がりそうな酷い臭いがする。
それと同時に、二匹のオークを発見した。
オークも僕を発見したらしく、こっちまで走って接近してくると、拳を振りかぶり、僕に向けて振り下ろす。
それに対して僕は迫る二つの拳を難なく避け、お返しに腕を切り飛ばしてやる。
腕を切り飛ばされたオークは、激痛に醜い豚顔をさらに醜く歪めて、奇声を上げる。
そしてその隙に二匹の首を切り落とす。
腕のなくなった肩と、頭を失った首から大量の血が噴き出し、辺りに血の匂いが立ち込める。
これがDランクとCランクの差だ。
まあ、オークはDランクの中では弱い部類だし、魔法や特別なスキルを持たないからこそ、ここまで余裕で居られるのだけれど。
それはともかく、今はそんな事よりオークだ。
入り口から少し進むと、少し広くなっている場所に出る。
そこに居たのは3匹のオークで、やはりこちらを見つけると殴りかかってくる。
結果はさっきと同じで、簡単に始末する事ができた。まあ所詮は1匹増えただけだし、当然なのだが。
まだ道が続いてきたので進んでみると小部屋の様な場所に出たのだが、そこで吐き気を催す様な光景を見る事になった。
先ず目に入るのは1匹のオーク、そしてそのオークに犯されている人間の女。
次に目に入るのは、床に転がっている3人の女、内2人は、まだ少女と言っていい年齢だ。
皆腹が大きく膨らんでおり、オークの子を孕んでいるのだろう。
最後に、部屋の隅に転がる少女。腹は膨らんでいないが、右腕が無く、生きているかも怪しい。
オークは僕を見ると犯していた女を放り捨てて、僕に向かってくる。
先手を取って首に向けて大鎌を振るうと、驚く事に右腕で首を守ってみせた。
それによって右腕は半ばまで切り裂かれるが、それも両断には届かない。
体の強度、反応速度、どちらも他のオークより高い。
より高レベルの個体だろう。
とりあえずオークの腕に刺さっている大鎌を捻り、傷口を広げながら引き抜く。
そしてオークが痛みに怯んでいる隙に、もう一度大鎌を振るう。
激痛によって動けなくなっていたオークは、なす術なく首を失い、絶命する。
《経験値が一定に達しました。Lv2⊳Lv3に上昇しました。》
お、久しぶりのレベルアップだな。
さてさてオークは片付けた訳だからこれで帰ってもいいが、少し面白い物を見つけた。




