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暴食の粘魔  作者: お猫様
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25話

テストからちょうど一日、もう一度冒険者ギルドまで行くと、受付で銅のプレートをもらった。

なんでも、あのテストは新しく冒険者登録する人物の実力を測って適切なランクを与えるための物らしく、僕はCランク相当の実力はあると認められたので、最初からCランクでスタートできるらしい。

ちなみに実力だけで上がれるのはCランクまでで、Bランク以降は実力以外にも様々な条件があるらしい。


まあそんな訳で、はれて冒険者となった僕は、街の中でも武器の所持ができるようになったわけだ。

しかし僕は今、新たな別の問題と直面していた。


そう、金がないのだ。

元々銀貨8枚と銅貨11枚あった所持金は、通行料や宿代で銀貨2枚と銅貨11枚まで減ってしまった。


宿は、実入りの少ない低ランク冒険者がよく使用するという安宿を使うことでできるだけ出費を抑えたが、それでも銀貨1枚を消費した。


銅貨は10枚で銀貨1枚と同じ価値だから、僕の所持金だと、安宿でもあと3日しか宿泊できないことになる。

これは不味い。


この世界の冒険者は、前世の異世界モノと違って、かなり夢のない仕事の様だ。

EやDランクの冒険者はその日生活するだけでも厳しく、Cランクでやっと一般的な仕事と同じ程度稼ぐ事ができる、といった程度だ。


それに、様々なルールに縛られる事になる。

例えば、モンスターや野生動物の乱獲の禁止だ。

野生動物は勿論の事、いくら自然発生するモンスターとはいっても、乱獲すれば生態系が崩れる事になる。

生態系が崩れれば、近隣の町や村に被害が及ぶ可能性がある。

同じ理由で、その辺り一帯を支配している強力なモンスターの討伐も、人間の町や村に危害を加えた時を除いて、禁止されている。


他にも、慈善活動はしてはいけないとされている。

例えば、冒険者が偶々立ち寄った村で、傷を負って苦しんでいる子供がいるとする。

正魔術の中に傷を治す物があるが、これを使える冒険者が無償で治癒を行ったり、治癒のポーションを渡したりすれば、規定違反だ。


これは冒険者ギルドと教会の協定によるものだ。

街やある程度の大きさの村には、大きさこそ違えど、教会が設置されていて、金を払うことで治癒を受けられる仕組みになっている。

なので、冒険者が無償で治癒を行っては、教会の儲けがなくなってしまう。


これだけ聞くと教会ががめついように思えるが、そうではない。

協会は孤児院を兼ねているので、儲けはほとんどが養育費として消えていくらしい。

そもそも聖職者は儲からないので、聖職者に金儲けを考える様な者は居ないらしい。


これは余談だが、

Cランクまでは、努力こそ必要だが、大概の者は到達できる。

ただし、CランクとBランクの間には、大きな差がある。Bランクは、才能ある者が並々ならぬ努力をして辿り着ける領域。

そして、BランクとAランクの差はさらに大きい。Aランクは、天才と言われる人間が、血の滲むような努力をして、やっと辿り着く領域だ。


そして、どこの世界にも才能がない人間というのは居るもので、戦闘の才は無い、しかし、他の職に就くことのできなかった者、それがEやDランクの者だ。


ちなみに同ランクのモンスターと冒険者だと、相性にもよるが、モンスターの方がやや有利といったぐあいだそうだ。

これはモンスターには、人間にはない特殊な能力(スキル)があるためだ。


ただ、Bランク以上はそういう訳にもいかない様で、Bランクモンスター1匹に対してBランク冒険者1人をぶつけても、冒険者側の勝算は低いようだ。


いくらレベルアップで強くなるといっても、人間じゃ限界があるんだろうね。

まあ、その限界は人によって違うみたいだけど。


ちなみに僕の種族、ヴェノムブロブはCランク下位に属するらしい。


まあそれは置いておいて、金がないから冒険者ギルドに依頼を受注しに来たのだが...お、これなんかいいんじゃないか?


依頼内容はオークの討伐、適正ランクはC以上、場所はメニル平野、報酬は銀貨5枚だ。


メニル平野というのは、ファブレから東に行くとカーク聖王国という国があるんだけど、その間に位置する巨大な平野、それがメニル平野だ。


メニル平野は本来、そこまでモンスターが発生する場所ではない。

発生しても、せいぜいスライムやゴブリン、ウルフといったEランク、最下級のモンスターしか発生しない。

この程度なら、一般人でも多少腕が立てば追い払える。


しかし今回は、向こうからこっちに来る行商人が、オークに襲われたらしい。

オークはDランクのモンスター、多少腕が立つ程度の一般人では相手にならない。恐らく依頼料をケチって護衛の依頼を出さなかったのだろう。


オークはよくイメージされるような直立する豚の様なモンスターで、贅肉だらけの体にそぐわず高い筋力を持ち、人間の腕ぐらいなら素手でへし折る。

更に厄介な点として、異様なほどの繁殖力を持つ。

オークは雄しか居ないためオーク単体で増殖する事はないが、異種族の女を犯し、子供を産ませる事ができる。

これによって、放置すると加速的に増えていくわけだ。


これだけ聞くと強そうに思えるけど、勿論弱点もある。

上位個体にもなれば違うだろうけど、知性がない。武器や鎧を身に着ける事もなければ、武術なんかを使う事もない。

魔法も、余程上位の個体でもなければ使う事は出来ないらしい。


オークはいくら数が多かろうが、殴る蹴るしかしない。僕がダメージを受ける事はまずないだろう。

そこまで大きな収入ではないが、この依頼は僕にとって、ほとんどノーリスクで受けられる依頼だ。これを受けない手はないだろう。


ボードからこの依頼が書かれている羊皮紙を剥がして、カウンターまで持っていくと、簡単な説明をされ、依頼の受注が完了した。

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