24話
とりあえずは、試験とやらのために武装を整えなきゃいけないのだけど、とりあえず僕の持っている物の中で、戦闘に使えそうな物を再確認してみるか。
先ずは自作した大鎌。後は男が持っていたネックレスとナイフ、後はワンドか、これも戦闘用に使えるだろう。
男の持っていたネックレスとナイフ、ワンドは、少々高額らしいけど、市販品らしいから持っていてもおかしなことは無いだろう。
大鎌の方はどうごまかしたものか...ダンジョンで発見したといえば何とかなるか?
この世界ではダンジョンという、他と比べ、異常な速度でモンスターが発生する場所があるらしく、ダンジョンでは稀に、通常より強力な魔化が行われた武具や道具が産出されることがあるらしい。
この世界のモンスターは空気中の魔力が集まり固まることで発生するのだが、それと同じように、膨大な時間をかけて武器に魔力が浸透していくことで、自然に魔化が行われることがあるらしい。
そして、他より圧倒的に魔力濃度が高いダンジョンでは、この現象が起こりやすいのだとか。まあ、それでも自然に魔化が行われた道具はかなり珍しいらしいけど。
とりあえず人目につかない路地裏に入って、大鎌とネックレスを取り出して、装備しておく。
ナイフとワンドは取り出しても差しておくベルトなどがないから邪魔になるし、取り出さなくてもいいだろう。
この世界には見た目からは考えられないような容量を持った袋があったりするらしいけど、流石に体から大鎌を取り出したら、怪しいどころか人間じゃないのが一発でバレる。
まあ、別にこれ以上の準備は必要ないだろう。
というか、どうせ僕の所持金は銀貨3枚と銅貨11枚だけだ。何が買えるという訳でもない。
それじゃあ、試験に行きますかね。
ギルドに入って受付に書類を渡すと、ギルドの裏手に通される。
地面は砂だがしっかりと固められていてそれなりの硬さがあり、広さもそれなりの広さがある。
何人か武器を振っている者も居るので、訓練場と言ったところか?
僕が周りを観察していると、不意に声をかけられる。
「お前が今回新しく冒険者登録するっていう奴か。俺は今回のテストの試験官をやることになった、クシフォスだ」
僕に話しかけてきたのは、長剣を持ち皮鎧を着た男だった。
大剣と皮鎧はどちらも魔具の様だ。
年齢は30代前半と言ったところで、この世界ではあまり見ない濃いめの茶髪で、どこか気だるげな顔をしている。
身長は180cm程で、顔は前世ならアイドルもかくやというレベルだ。
というかこの世界の人間は、全体的に顔面偏差値が高い。
今の僕は前世ならそこそこイケメンの部類のはずだが、この世界なら平均レベルだし、この目の前の男も、この世界では平均の少し上位と言ったところらしい。
とりあえず、向こうが話しかけてきた以上、何か返さないとまずいだろう。
「僕はグラ、今回はよろしくお願いします」
お互いに挨拶を交わしたところで、テスト開始の合図が告げられる。
クシフォスの武器はバスタードソードと言われる片手半剣の一種で、長さは約100cm程だ。
対して僕の持つ大鎌は長さ170cm、間合いでは僕の方が優利のはずだ。
まあ僕には相手の実力を測る観察眼なんてものはないし、とにかくこっちから攻撃してみようじゃないか。
どうせただのテスト、最悪負けても問題はない。
先ずは様子見だ。大鎌の間合いまで踏み込んで、相手の首に向けて、大鎌を横なぎに振るう。
それに対して相手は姿勢を低くして回避する。
そりゃ避けるよね。まあ避けられるのは分かってたし、続けて二撃目、大上段からの振り下ろしだ。
少々力を籠めすぎたのか、大鎌の先端が地面を砕いて、大きな砂埃を巻き上げる。
また外したか...しっかし全然当たらないな。
そう思って砂埃の中を見回していると、横から強い衝撃を受け、大きく弾き飛ばされる。
ネックレスの魔力防壁を展開していたおかげで防げたけど、どんな馬鹿力だよあのおっさん。
しかもあの剣は魔具、あれで殴られたら痛いじゃ済まない。
僕が吹き飛ばされた先で体勢を立て直していると、制止が入る。
しかし、こうも一方的に負けるとはな。
武装、肉体能力、まあ肉体能力に関しては若干だけど、どちらも僕の方が優れているはず。
戦士としての技術の有無でこうも差が出るものなのか?
正直、人間として戦ったら勝てる気がしない。勝つには人外、魔人として戦う必要があるだろう。
冒険者はランクごとに違うプレートを下げていて、
Aランクが金、Bランクが銀、Cランクが銅、Dランク以下は鉄のプレートを下げている。
そしてクシフォスのプレートは銀、つまりこれよりまだ強い奴が居るという事だ。
Bランクでこれなら、Aランクにもなれば、魔人として戦っても勝てるかどうかわからない。
そんな事を考えていると、無事かどうか確認された後、軽い説明を聞かされ、普通に帰された。
なんでも、冒険者として登録するにはそれなりに時間がかかるので、後日また来てくれとの事らしい。
それじゃあ今日のところは適当に時間を潰して、また明日来るとしますか。




