23話
今更ながら、この体は便利なことに睡眠も休憩も必要がない。
なのでしばらく大鎌を振り回したりして暇をつぶしていると、だんだんと周りが明るくなってきた。
体感だけで言うなら、この世界での一日は前世とそこまで変わらないと思う。
まあそれは置いておくとして、明るくなったわけだし街へ移動しますかね。
とりあえず街の前まで移動してきたが、やっぱり実際に目の前まで来てみると迫力が違う。
先ず目に入るのは街を囲むように建てられている石造りの壁だろう。
高さは3mはあるだろうか?壁の側面には返しが付いていて、壁の上には槍を持った兵士が警邏している。
ここまでの警備体制を置いているのは、恐らくこの世界独自の生命体、モンスターの存在故だろう。
男の知識によれば、モンスターは極一部を除いて人間のを脅かす存在らしいし、この警備体制も納得がいく。それでもここらへんで見たモンスターの強さを考えれば、過剰戦力な感じが否めないが。
まあずっと止まっているわけにはいかない。入口であろう門の横にある検問所らしき場所に行って、そこに居る兵士に話しかける。
「失礼、街に入れてもらってもいいですか?」
「許可書は有るか?」
「ありません」
「それじゃあ、こっちに来てくれ」
そう言って通されたのは、机と椅子が置いてあるだけの簡素な部屋だ。
「そこに座ってくれ。それで先ず、お前の名前と出身は?」
「はい、名前はグラ。出身は東にあるウイユという村です」
「ウイユ村?そこの村人なら許可書が発行されているはずだが?」
「いえ、出身というだけで、村人ではなく旅人です」
兵士が訝し気に顔をしかめる。あれ?何か不味い事言ったか?
「旅人という割には荷物が少ないが?」
そういう事か...確かに僕の持ち物は男の持っていた小さめの鞄だけだ。これで旅人というのは少し無理があったのかもしれない。しかし言ってしまったものは戻らない、何とかするしかないか。
「ここに来るまでにモンスターに襲われまして、命からがら逃げてきたのですよ。この街には失った物資の調達のために」
「と言うにはやけに身綺麗じゃないか」
「この服には自動修復の効果が付いていましてね」
「なるほど、納得した。それでは通行料、銀貨五枚だ」
兵士はまだ多少怪しんでいたようだが、一応は納得したらしい。銀貨は男の鞄の中に8枚入っていたので、そこから出せばいいだろう。
兵士は僕が渡した銀貨を確認すると、机にしまってこっちに向き直る。
「それじゃあ、ようこそ武装都市ファブレへ」
そう言って兵士は門を通してくれた。
門をくぐった先は、正にファンタジーの街といった雰囲気だった。
道はレンガでしっかりと舗装されており、建物は南ドイツで見るような木組みの建物。
道行く人は白人系の人種に見え、服装は二分出来る。
片方は男の着ていた服と同じ様な、ファンタジーの町人然とした服を着ている人。改めて見てみると、デザインは建物と同じ様な、南ドイツの物に近い気がする。
もう片方はいかにも冒険者といった、多種多様な武装をした人。こっちは人によって剣を腰から下げていたり、ローブを着ていたりと本当にバリエーションが多い。
とりあえずファンタジーといったら冒険者、冒険者になろう。
冒険者になれば街中で武器を持ち歩いても許されるらしいし、身分の証明にもなるらしい。これはもうなるしかないでしょ。
と、いう事でやって来ました冒険者ギルド。
外装だけで他の建物よりも頑丈にできているという事が分かるつくりをしている二階建ての建物で、剣と杖を交差させたような看板が下げられている。
中に入ってみても、大方イメージ通りだった。
見る限り、室内は二分割されている。
片方にはカウンターが三つと羊皮紙がいくつも張り出されたボードが設置されている。そしてカウンターにはお決まり通り美人の受付嬢もいる。
もう片方は酒場のようになっていて、設置されているテーブルで冒険者が酒を飲んでいたり、食事をしていたりする。
しっかし冒険者登録をするにはどうしたものか...
とりあえずこういうのは職員の人にでも聞いてみるのが手っ取り早いし、空いているカウンターにでも行ってみようか。
「冒険者登録がしたいんですけど、どうすれば?」
「冒険者登録ですか?でしたらこちらの紙にある項目を埋めて、提出してください」
そう言って受付嬢が書類とペンを渡してきた。
渡された書類に記載されていた項目は、名前、役割、使用武器、技能(記載無しでも可)の四つだ。
まあ、この項目の中には隠す必要があるような項目は無いし、
名前はグラ、役割は前衛戦士、使用武器は大鎌、技能は空欄、コレでいいだろう。
取り敢えず、これで提出しよう。
「はい、確認しました。それでは、試験を行いますので、武装を整えた後、こちらを持ってもう一度おこし下さい」
書類を提出すると、さっきとは別の書類を渡され、そんな事を言われた。
しっかし、試験か...どうしたものか。




