22話
街に行くにあたってメインで使う武器を作るわけだけど、さてさて、どんなものを作ろうかな?
さすがに戦うたびに体から剣やら槍やらを生成するわけにはいかないからね。
武器を作るといっても、僕は鍛冶なんてできるわけも無い。
と、いうことで、作るのは即席剣と同じ様に作るわけだけど、そのあとが違う。
服を僕の体の一部を使って魔化した時、素材にした部分は僕から完全に独立した。だから、即席剣と同じ様に作ってそれを魔化すれば、ちゃんとした武器の完成というわけだ。
それで問題はどんな武器を作るかだ。
まあ別にこれは無難に剣や槍を作ってもいいけど、それじゃあ面白くない。せっかく作るなら、もっと面白いものを作りたいじゃないか。
ただまあ、武器と一括りに言っても選択肢が多すぎて選べない。そこで、だ。
素材を使わない方の魔化では、付与される効果はもとになった武具の形状に影響されるらしい。例えば、切れ味を上げる効果なら斬撃武器以外には付く事は無い、という事だ。
だから、付いてほしい効果を考えて、その効果にあった武器を考えてみるか。
先ず付与されてほしい効果だけど、僕の持っている不浄の霧というスキルだ。
このスキルは体に黒い霧を纏い、霧に触れた相手に様々な効果を与える物で、僕が着目したのはその効果のうちの一つの“呪い”だ。
この呪いの効果は、呪いの効果を持った攻撃は回復系の効果が阻害される、という効果だ。
僕は高速再生というスキルを持っているから、回復系能力の強力さは身をもって知っている。
僕の場合は物理無効や種族としての体のつくりなどもあるけど、それでも傷を与えたそばから回復されては埒が明かない。
次にそれが付与されやすそうな武器だ。
ちなみに前世でも再生しにくいような傷を与える武器は存在していた。フランベルジュという波打つ様な刃を持つ剣がそうだ。
イメージだけで言うなら、ファンタジー作品とかだと大鎌とかもそんな力を持つことが多い。これは大鎌が、死神の武器というイメージの影響だろう。
神話の武器だと、魔剣の代表格のダーインスレイブや、不死の怪物を殺した剣であるハルパーなどがある。
そうだな...この中だったら大鎌が一番見栄えするな。
大鎌なんて扱いが難しい武器を使えるのかって?いやいや、使えるわけないじゃないか。こちとら元はただの学生だぞ?大鎌どころか剣や槍だって満足に使えないっての。
どうせ全部素人なんだし、自分の使いたい武器を使った方がモチベも上がるってもんだ。
それじゃあ、今後僕のメイン武器になるわけだし、最高の大鎌を作ってやろうじゃないか。
-数時間後-
よしよし、やっと納得する出来の物ができた。構造に凝り過ぎて、作り始めたときはまだ明るかったのに、もう辺りが真っ暗になっている。
ただ時間をかけただけあって、かなりいい出来になった。
それはともかくとして、大鎌のデザインだ。
先ずは長柄だが、長さは170cm程の黒い長柄に、どす黒い緑の茨が絡みついているデザインとなっている。
次に刀身だが、これは長柄と一体化する様に付いており、柄と同じく黒い刀身にはルーンが彫られ、茨と同じ色で皆焼という独特な波紋を付けてある。
まあ一言で言うなら、物凄く禍々しい。
それじゃあ、これから魔化を行うわけだけど、素材に使う方に込められる全ての魔力をすべて込めて行う予定だ。
魔力は使っても時間で回復することが分かっているし、込められた魔力が多い素材ほど付与される効果が強くなるらしいしね。
効果が有るかは分からないけど、大鎌と素材の両方で不浄の霧を発動させて魔化を発動させる。これで不浄の霧の効果が付与される可能性が少しでも上がれば万々歳だ。
魔化が終了すると、大鎌の禍々しさがさらにアップした。
元々黒かった柄や刀身はただの黒色から黒曜石の様な漆黒へ変わり、刀身に彫られたルーンからは淡く緑色に発光している。
正直言って、コレを死神が待ってても何の違和感もない。いや、むしろその方がしっくりくる。
それで肝心な性能の方だけども...なかなか、いや、かなり凄い物が出来たと思う。
先ずは大鎌としての基本性能から。
切れ味は抜群で、近くの木に横薙ぎに払ってみると、結構太い木が一撃で両断された。
強度もかなり高く、岩に叩きつけても刃こぼれ一つしない。
次に特殊能力だ。コレは二つの能力がある。
一つ目は望んだ通り、この大鎌で与えた傷の回復を阻害する効果。
二つ目は、魔力を流す事で、刀身を非実態化するという効果だ。
あと大鎌の効果かはわからないけど、何故かこの大鎌は自分の腕の延長の様に使いこなす事が出来る。
まあこの大鎌、100%僕の体から出来てる訳だしわからなくもない...のか?
取り敢えずこの大鎌は体の中にでも収納しておこう。
暴食の効果で体の中にいくらでも物を入れられるようになっているから、自分よりデカイ大鎌も入れておく事が出来てる。
せっかくだし、男の持っていた魔術の付与された物も一緒に収納しておこう。
何処かで使う事があるかもしれないしね。
それじゃあ準備も終わった事だし、明るくなり次第街に向かうとしますかね。




