14話
とりあえず、倒した冒険者の持ち物でも物色しますかね。そう思って冒険者の死体に近寄ると、狼が襲い掛かってきた。そういや狼もいたっけな。
まあチャチャっと触手でからめとってそのまま捕食。
それじゃあ改めて冒険者の持ち物物色といきますか。
戦士の持ち物は、チェインメイルにブレストプレート先夫だけど、戦斧で頭を叩き潰したときに勢い余って一緒に潰しちゃったから損傷が大きくて使えたものじゃない。まあどうせ損傷がなくても、物理攻撃が効かない僕には必要がなかっただろうけど。
後は片手剣と盾だけど...武器だったら僕の体の一部を使った疑似武器のほうが使い勝手がいいし、盾は戦斧で叩き潰したから使い物にならない。
盗賊の持ち物は、バンデッドメイルと短剣は必要ない。短弓は...ちょっと悩んだけど、よく考えたら矢の調達ができないから使えないな。
魔法使いの持ち物は、ローブと木の杖、後は指輪が一つ。ローブは全身を覆い隠せるし、これがあればぱっと見モンスターだとは思われないんじゃないかな?これなら動くときにも鎧ほど動きの邪魔にもならないだろうし、ローブはもらっておこう。
あと木の杖と指輪は、何か不思議な力を感じる。多分魔力ってやつじゃないかな?これと似たような力が僕の中にも有るのが感じ取れるし、もしかしたら僕も魔法が使えるんじゃないかな?まあ使い方なんてわかんないけど。杖はよくわかんないけど、指輪は付けたら僕の魔力がちょっと増えたのが感じ取れたし、杖はかさばるし指輪だけもらっておこう。
最後に神官。メイスにサーコートとネックレス。メイスとサーコートは要らないとして、問題はネックレスだ。このネックレスからも不思議な力が感じ取れるんだけど、この力が問題なんだよね。なんか本能的に近寄りたくないっていうか、この力に対する不快感がすごい。じゃけんこんな物は壊しちゃいましょうねー。
とりあえずローブを羽織って指輪もつけて、後は全部捕食しときますかね。
今まで殺してきた冒険者にも言えることだけど、死体や遺品を全部捕食するのには体積を増やす以外の理由がある。
死体も遺品も全部捕食しちゃえばここで死んだってのはそうそう分からないだろうし、ここで死んだってことがわからなければ外の人間はこのダンジョンを脅威じゃないって判断するはずだ。
もしこのダンジョンが脅威だと判断されれば、このダンジョンを潰す為に今までよりも格段に強い冒険者が来る可能性もある。そんなことになったら僕の命が危ない。
ならそもそも冒険者殺すなよって?いやー冒険者は経験値が美味いからどうしてもね。
まあそんな話は置いておいて、そろそろ第三層を目指して移動を再開するとしますか。
移動しながらでも新しい戦い方でも考えてみますかね。
ローブを着てみると、袖は丁度手首から先出るくらいの長さがあるから、鎧ほど動きを邪魔しないとはいえ、剣を振り回したりするのにはむかないだろうし、だからと言って袖を取ったらせっかくのローブの意味が無くなるしね。
て事で僕が考えた新しい戦法は、右手を腕から触手に変えて触手の先端を刃にして、ついでにそれで敵を攻撃する方法だ。触手は人間だったころの腕とおんなじ感覚で動かせるし伸縮自在、更には同時に複数本操作可能、正直言って手で剣持って戦うよりこっちのほうが強いと思う。
冒険者に見られそうなときは触手を引っ込めてれば即座に敵対されるようなことは無いだろうしね。
とと、丁度よく狼が三匹現れたし、こいつ等を実験台にしてみようじゃないか。
右手を三本の触手剣に変えて、狼に向かって鞭みたいにふるって、狼の首を切り飛ばす。
うん、やっぱり強い。触手だから鞭みたいに振るえるし、腕の延長として途中で軌道を変えたりもできる上に、それを同時に何本も操れる。これを避けるのは至難の業なんじゃないかな?
とまあ、そんなことは置いておいて、しばらく進むと大狼一匹とそれに付き従うように狼五匹がいて、その奥に階段が見えてきた。
この妙に大きくて人工的なデザインは次の層に進むための階段だな。ただそれを守るように大狼達が立ちふさがっている。さながら階段の守り手といったところか。
しかも僕が通ってきた道とは別の道から、追加で狼が三匹。これで計九匹か。
ただまあ今更狼なんて敵じゃない。先ずは僕が同時に使える最大本数の十本の触手剣を、大狼に二本、狼のはそれぞれに一本ずつ伸ばして、狼の頭に向かって振るう。
《経験値が一定に達しました。Lv7⊳Lv8に上昇しました。》
狼はすぐに頭を貫いたり切り落としたりして倒せたけど、大狼は意外に粘る。それでも大狼も触手二本を避けるのが限界みたいだし、ほかの八本も大狼に向けて振るえば簡単に倒せる。
実際大狼も十本の触手剣を避けきれずに、貫かれて絶命した。
よし、階段の守り手も撃破したし、次の階層に行くとしますかね。というかなんで狼達は階段を守ってたんだ?もしかしてダンジョンってのは管理してるやつがいたりするのかな?