13話
道に転がっている狼の肉を食いながら狼肉をたどって移動していると、カッチャカッチャと金属がぶつかり合うような硬質な音が聞こえてくる。狼は勿論の事、ゴブリンが金属の武具を持ってるのは見たことが無いし、多分冒険者が近いのかな?この辺から注意して移動しますかね。
気配を消しながら、と言ってもホントに消せているか分からないけど、金属音がする方向に進んでいると、四人の冒険者を発見した。
一人はチェインメイルとブレストプレートを身にまとい無骨な片手剣と大盾を持った、いかにもな戦士といった見た目の...フルプレートのせいで分かりにくいがたぶん男。コイツはどう考えても魔法は使えそうにないし、敵じゃない。
一人はバンデットアーマーを身に着け短弓と短剣を持った、盗賊風の男。コイツも魔法は使えそうにないし、多分問題ない。
一人は黒いローブで全身を覆い隠してフードを深くかぶった...男?女?線は細そうだけど、後ろから見るだけじゃよくわかんなんな。身長ほどもあるねじれた木の杖を持ってるし、魔法使いかな?要注意だ。
一人はよくわからない紋章の入ったサーコートを着て、メイスを構えた神官風のガタイの良い男。メイスを持っているあたり殴りかかってくるかもしれないけど、ゲームを基準に考えるなら回復役かな?
そんな四人が、戦士が一番前で狼三匹を抑えて、その少し後ろに盗賊と神官がいて盗賊は狼を一匹相手にしつつ全体のカバー、神官はメイスで自衛しつつ戦士に拳大の光の玉みたいのを戦士に飛ばしている。その更に後ろに魔法使いがいて、何かをブツブツ唱えている。多分魔法の詠唱か何かかな?
とまあこんな配置で五匹の狼と戦闘しているしている。今は若干狼が押してるけど、魔法使いが詠唱を終わらせたら戦況は冒険者側に傾くんじゃないかな?
とりあえず人数差的に正面から戦うのはめんどくさそうだし、距離が開いてるから魔法で攻撃されてもキツイ。普通に後ろから近寄ったら発見されるだろうし、何とか奇襲できればいいんだけど...いい方法を思い付いた。
先ずは身体を液体状に戻す、コレで足音が立つ事はまず無いだろう。次に体を薄ーく、薄ーく伸ばす、コレで発見はかなり困難だろう。まあ目を凝らせばそこだけ色が違う事に気が付くかもしれないけど、
この状態で地面を張って移動して、魔法使いの後ろまで移動したら、薄く延ばしていた分を集めて飲み込み、ローブの中の人間だけうまいこと溶かす。取り込むときに胸が無かったから男だなコイツ。
《人間を殺害したため、カルマが-20⊳-25に変化しました。》
この時点で他の冒険者にもバレたけど、一番の脅威だった魔法使いを倒した以上何の問題も無い。
瞬時に人型になって、剣を神官に向かって振り下ろすが、手に持っていたメイスで防がれる。ただまあ僕はスライム、手も武器も一つじゃない。反対の手にも剣を作って心臓に突き刺す。
《経験値が一定に達しました。Lv6⊳Lv7に上昇しました。》
《人間を殺害したため、カルマが-25⊳-30に変化しました。》
そこに矢が飛んでくると同時に僕の左側に回り込んだ重戦士が切りつけてくるの。それに対して右手の剣で矢を払いつつ、左手にも剣を作って戦士の攻撃を受け止める。そのまま右手の剣で切り返すけど、それは盾で防がれた。まあそんな簡単に殺らせてはくれないよね。
戦士の盾を蹴って一回距離を取って、右手の剣を盗賊の足に向かって投擲。これで戦闘には参加できないだろうし、逃げることも出来ないだろう。
後は戦士だけど、剣はどうせ盾か鎧で防がれるだろうし、そうだ!この剣は僕の体の一部なんだし、剣の形である必要はないじゃん。盾や鎧を破壊できるような武器...戦斧なんてどうだろう?剣を巨大な斧に代えて、全力で叩きつける。
戦士は盾でガードするけどそれによって体制を大きく崩して、さらに盾が大きくひしゃげて使い物にならなくなる。
続けて二撃目を叩き込んで、重戦士の頭を叩き潰す。
《人間を殺害したため、カルマが-30⊳-35に変化しました。》
最後に動けなくなってる盗賊の首をササッと落として戦闘終了だ。
《人間を殺害したため、カルマが-35⊳-40に変化しました。》
案外簡単に全員倒せたな。やっぱり、飛んでくる矢を切り払ったり、あんな巨大な斧を振り回したり出来るあたり、人間だったころより圧倒的に運動能力が高くなってるな。
それと武器の形を自由に変えたりできるのが強いな。人型になるときに余った質量を内側で圧縮してるから、それを使えばさっきの斧みたいな巨大な武器も作れるし。
あと今回は攻撃喰らわなかったから出番はなかったけど、物理攻撃効かないから...あれ?よく考えたら僕って近距離戦において強くね?
いや、慢心は危険だ。ラノベとかでよく見る魔法剣士みたいな奴が居るかもしれないし、近接用の魔法なんかもあるかもしれない。まあまだ死にたくないし、油断しないようにしておきますかね。