11話
大狼の死体を捕食しながら考える。
逃げてきた男の強さや血痕、負っていた傷の形状や大狼の強さを考えれば、男は大狼から逃げてきたんだと思うけど、運動能力的に逃げ切れるとは思えない。
それにあの程度の実力でここまで潜ってきたのも謎だ。正直あれならゴブリンウォーリアの方が強かった。
いや、そもそもあの男が一人で来たって保証はないじゃないか。前の冒険者も三人組だったし、馬鹿じゃない限りあの男も複数人で来ていたはずだ。
そういや大狼の口には血がついてけど、あれはあの男の仲間の血だったんじゃないか?
多分、あの男とその仲間たちは大狼とエンカウントしてそのまま交戦交戦、そしてあの男以外に何人いたかは知らないけど、大狼との距離が結構空いてたし、そいつ等が戦っている間に逃げたのかな?もしくは他の奴が食われてる間に逃げたか。ともかくこの可能性が一番高いと思う。
どっちにしろ、仲間見捨てて逃げるとかあいつ最低だな。
まあいいや、どうせ死んだ相手の事だ。狼達の弱点でも見つかればと思ったけど、考えてみれば、そんなものがあるならあの男は逃げていなかっただろう。
《熟練度が一定に達しました。捕食がLv4⊳Lv5に上昇しました。》
それじゃあ、大狼も溶かし終わったし、移動しますかね。
というか前回は五レベルで進化だったけど、次の進化はもっと先なのか、それとも何か条件が有るのか、はたまたその両方か...
確かヒュージスライムの説明文は、通常よりも大きく成長したスライムって書いてあったし、もしかしたらレベル以外の条件として、ヒュージスライムは体積が一定以上増えたらっていう条件があったのかもしれない。
ポイズンスライムの説明文は、毒を体に取り込み続け、体に毒を帯びる様に変異したスライムだったはず。
て事はこっちはたぶん、一定以上の毒物の捕食か、それとも悪食の称号の取得か...
まあどちらにせよ、改めて考えてみれば、レベル以外にも何かしらの条件があるのかもしれない。
これからは何か進化の条件になりそうな何かを実行していくべきかも知れない。
そんな事を考えながらしばらく歩いていると、また三匹の狼が襲い掛かってくる。今度は大狼狼は居ないらしいし、ササッと倒して捕食する。
やっぱりただの狼なら敵じゃないな。いやまあ、大狼も僕に傷を負わせる事は出来ない訳だし、敵じゃないといえば敵じゃないけど。
というかやっぱ第二層は狼主体なのかな?ゴブリンはさっきの二匹しか見てないし。
お、噂をすればゴブリン四匹組を発見した。まああっちは僕に気が付いて無いみたいだし、放置でいいか。
ゴブリンの他に狼も遠目に見えるけど、大狼や仲間がやられたのを見ていたのか野生の勘か、僕から距離を取っているように見える。
相手を見極められる当たり、頭もゴブリンより良いらしい。しっかしまあ、敵がいないとレベルが上がらない訳で、僕としてはさっさと強くなりたいわけだしさっさとレベルを上げたい。でも、狼が全力で逃げの一手だけ打つと僕は追いつけないんだよね。
仕方ない、サッサともっと離れた別の場所に移動しますかね。
しばらく移動すると、僕を発見したゴブリン三匹組が襲い掛かってくる。まあ所詮はゴブリンだし、チャチャッと首を落として終了だ。さてさてこの死体何かに使えないかな?人型を取っている以上、体積はそこまで必要無い、っていうかむしろ体積が増えると、その分圧縮しなきゃいけないから人型を維持するのが大変なんだよな。何かいい使い道...
そうだ!良いこと考えた。
ここの狼ってゴブリン追いかけてたし、多分ゴブリンを食べるんだろう。そんでもって狼ってことは鼻が利くはずだ。
てことで今殺したゴブリンの死体三つをしばらくここに放置して、しばらく隠れながら狼がかかるのを待ってみようじゃないか。
放置し始めてから数分後、二匹の狼がかかっていた。
狼は僕を視認すると、低く唸り声をあげて威嚇するけど、まあ別に気にせずササッと首を落として...まあこいつ等は捕食でいいか。いくら獣といえど、流石に同族の肉は食わないだろうしね。
多少食われたけど、まだゴブリン肉も残ってるし、もう一回放置してみるか。
もう一度ゴブリンの死体を仕掛けなおしてしばらくすると、今度は三匹かかっていた。
今度はゴブリン肉を持ったまま逃げようとしたみたいだけど、肉を銜えている分遅くなっているから追いつける。ハッハッハッ、その程度で僕から逃げ切れると思っているのか?
逃げる狼に向かって右手を突き出し、そこから計三本の触手が伸びる。本来は触手より狼の疾走の方が早いが、触手を鞭の様に振るう事で先端速度は本来の何倍にもなる。
振るった勢いのまま触手を狼の体に絡みつかせて、そのまま捕食する。
《経験値が一定に達しました。Lv5⊳Lv6に上昇しました。》
おお!レベルアップ!やっぱりこのやり方は効率がいい。この調子でどんどんレベルを上げていければいいんだけどな。